五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・6 / 49頁

第二辨體性・陰陽の精氣

第1冊 第14画像を開く(新しいタブ)
GT-100044・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

淮南子云天地之襲精爲陰陽陰陽之專精爲四時四時之散精爲萬物積陰之寒氣反者爲水積陽之熱氣反者爲火

句読本文校了

淮南子云、天地之襲精爲陰陽、陰陽之專精爲四時、四時之散精爲萬物。積陰之寒氣反者爲水、積陽之熱氣反者爲火。

訓読校了

『淮南子』に云ふ、天地の襲精は陰陽と爲り、陰陽の專精は四時と爲り、四時の散精は萬物と爲る。積陰の寒氣、反する者は水と爲り、積陽の熱氣、反する者は火と爲る。

現代語訳校了

『淮南子』は、天地の凝集した精気が陰陽となり、陰陽の精気が四季となり、四季から散じた精気が万物になると説く。陰の寒気が極まって反転したものが水、陽の熱気が極まって反転したものが火である。

GT-100045・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

水雖陰物陽在其内故水體内明火雖陽物陰在其内故火體内暗木爲少陽其體亦含陰氣故内空虚外有花葉敷榮可觀金爲少陰其體剛利殺性在外内亦光明可照土苞四德故其體能兼虚實

句読本文校了

水雖陰物、陽在其内、故水體内明。火雖陽物、陰在其内、故火體内暗。木爲少陽、其體亦含陰氣、故内空虚、外有花葉、敷榮可觀。金爲少陰、其體剛利、殺性在外、内亦光明可照。土苞四德、故其體能兼虚實。

訓読校了

水は陰物と雖も、陽其の内に在り。故に水の體は内明らかなり。火は陽物と雖も、陰其の内に在り。故に火の體は内暗し。木は少陽爲り、其の體亦た陰氣を含む。故に内空虚にして、外に花葉有り、敷榮して觀る可し。金は少陰爲り、其の體剛利にして、殺性外に在り、内も亦た光明にして照らす可し。土は四德を苞ぬ。故に其の體、能く虚實を兼ぬ。

現代語訳校了

水は陰の物だが内部に陽を含むため、体の内は明るい。火は陽の物だが内部に陰を含むため、体の内は暗い。木は少陽で、その体に陰気も含むので、内部は空虚である一方、外には花や葉が広がり栄えて観賞できる。金は少陰で、その体は剛く鋭く、殺の性質が外にあり、内部には照らし得る光明もある。土は四行の徳を包むので、その体は虚と実を兼ねる。

第二辨體性・木の曲直

第1冊 第15画像を開く(新しいタブ)
GT-100046・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

洪範傳曰木曰曲直者東方易云地上之木爲觀言春時出地之木無不曲直花葉可觀如人威儀容貌也許愼云地上之可觀者莫過於木故相字目傍木也

句読本文校了

洪範傳曰、木曰曲直者、東方。易云、地上之木爲觀。言春時出地之木、無不曲直、花葉可觀、如人威儀容貌也。許愼云、地上之可觀者莫過於木。故相字、目傍木也。

訓読校了

『洪範傳』に曰く、木を曲直と曰ふは東方なり。『易』に云ふ、地上の木を觀と爲す。春時、地より出づる木、曲直ならざる無く、花葉觀るべきこと、人の威儀容貌の如きを言ふなり。許愼云ふ、地上の觀るべき者は木に過ぐる莫し。故に相の字は目、木に傍ふなり。

現代語訳校了

『洪範伝』は木の曲直を東方に配する。『易』は地上の木を観るべきものとし、春に地から出る木は曲がり伸びないものがなく、その花葉が人の威儀や容貌のように観賞できることを示す。許慎は、地上で木ほど見るべきものはないので、「相」は目を木に添えた字だと説く。

第二辨體性・王者と木氣

第1冊 第15画像を開く(新しいタブ)
GT-100047・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

古之王者登輿有鸞和之節降車有佩玉之度田狩有三驅之制飲餞有獻酢之禮無事不巡幸無奪民時以春農之始也無貪欲姦謀所以順木氣

句読本文校了

古之王者、登輿有鸞和之節、降車有佩玉之度、田狩有三驅之制、飲餞有獻酢之禮。無事不巡幸、無奪民時、以春農之始也。無貪欲姦謀、所以順木氣。

訓読校了

古の王者、輿に登るに鸞和の節有り、車を降るに佩玉の度有り、田狩に三驅の制有り、飲餞に獻酢の禮有り。事無ければ巡幸せず、民の時を奪ふこと無し。春は農の始めなるを以てなり。貪欲姦謀無きは、木氣に順ふ所以なり。

現代語訳校了

古代の王は、輿に乗るときには鸞和の鈴音にかなう節度、車を降りるときには佩玉の鳴る規律、狩猟には三方から追って一方を開ける三駆の制度、酒宴には献酢、すなわち主人と賓客が杯を献じ返す礼があった。用事もないのに巡幸せず、民の農時を奪わなかったのは、春が農事の始まりだからである。また、貪欲やよこしまな企てを持たなかった。これらが木気に順うあり方である。

第二辨體性・木氣の順逆

第1冊 第15画像を開く(新しいタブ)
GT-100048・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

木氣順則如其性茂盛敷實以爲民用直者中繩曲者中鉤若人君失威儀酖酒淫緃重徭厚稅田獵無度則木失其性春不滋長不爲民用橋梁不從其繩墨故曰木不曲直也

句読本文校了

木氣順則如其性、茂盛敷實、以爲民用。直者中繩、曲者中鉤。若人君失威儀、酖酒淫緃、重徭厚稅、田獵無度、則木失其性。春不滋長、不爲民用、橋梁不從其繩墨。故曰、木不曲直也。

訓読校了

木氣順えば則ち其の性の如く、茂盛して實を敷き、以て民用を爲す。直なる者は繩に中たり、曲なる者は鉤に中たる。若し人君、威儀を失い、酒に酖り淫緃し、徭を重くし稅を厚くし、田獵度無ければ、則ち木、其の性を失う。春滋長せず、民用を爲さず、橋梁其の繩墨に從わず。故に木は曲直ならずと曰うなり。

現代語訳校了

木気が順調なら、木は本性どおり繁茂して実を結び、民の用に供される。直材は墨縄に合い、曲材は鉤の形に合う。君主が威儀を失い、酒色にふけり、労役を重くし、税を厚くし、限度なく狩猟すれば、木は本性を失う。春にも成長せず、民の用に供されず、橋や梁に用いても墨縄の基準に従わない。これを「木が曲直しない」という。

第二辨體性・火の炎上

第1冊 第15画像を開く(新しいタブ)
GT-100049・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

火曰炎上炎上者南方揚光輝在盛夏氣極上故曰炎上王者向明而治蓋取其象古者明王南面聽政攬海内雄俊積之於朝以助明也

句読本文校了

火曰炎上。炎上者、南方。揚光輝在盛夏、氣極上、故曰炎上。王者向明而治、蓋取其象。古者明王南面聽政、攬海内雄俊、積之於朝、以助明也。

訓読校了

火を炎上と曰う。炎上は南方なり。光輝を揚ぐること盛夏に在り、氣極まりて上る。故に炎上と曰う。王者明に向かいて治むるは、蓋し其の象を取る。古の明王、南面して政を聽き、海内の雄俊を攬り、之を朝に積み、以て明を助くるなり。

現代語訳校了

火を炎上という。南方に配され、盛夏に光を放ち、気が極まって上昇するためである。王が明るい方を向いて政治を行うのもこの象を採ったもので、古の明王は南面して政務を執り、天下の優れた人材を朝廷に集めて明徳を助けた。

第二辨體性・明君と火氣

第1冊 第15画像を開く(新しいタブ)
GT-100050・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

退邪佞之人臣投之於野以通壅塞任得其人則天下大治垂拱無爲易以離爲火爲明重離重明則君臣俱明也

句読本文校了

退邪佞之人臣、投之於野、以通壅塞。任得其人、則天下大治、垂拱無爲。易以離爲火、爲明。重離重明、則君臣俱明也。

訓読校了

邪佞の人臣を退け、之を野に投じ、以て壅塞を通ず。任じて其の人を得れば、則ち天下大いに治まり、垂拱して無爲なり。『易』は離を以て火と爲し、明と爲す。重離は重明、則ち君臣俱に明らかなり。

現代語訳校了

邪悪でへつらう臣下を退けて野に放逐し、滞り塞がった政道を通じさせる。適任者を任用すれば天下は大いに治まり、君主は衣を垂れ手をこまねいて無為のまま治められる。『易』は離を火とし、明とする。離が重なる重離・重明は、君主と臣下がともに明察であることを表す。

GT-100051・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

明則順火氣火氣順則如其性如其性則能成熟順人士之用用之則起捨之則止若人君不明遠賢良進讒佞棄法律疎骨肉殺忠諫赦罪人廢適立庶以妾爲妻則火失其性不用則起隨風斜行焚宗廟宮室燎于民居故曰火不炎上

句読本文校了

明則順火氣。火氣順則如其性、如其性則能成熟、順人士之用、用之則起、捨之則止。若人君不明、遠賢良、進讒佞、棄法律、疎骨肉、殺忠諫、赦罪人。廢適立庶。以妾爲妻。則火失其性。不用則起。隨風斜行。焚宗廟宮室。燎于民居。故曰火不炎上。

訓読校了

明らかなれば則ち火氣に順ふ。火氣順へば則ち其の性の如く、其の性の如ければ則ち能く成熟し、人士の用に順ひ、之を用ふれば則ち起こり、之を捨つれば則ち止む。若し人君明らかならず、賢良を遠ざけ、讒佞を進め、法律を棄て、骨肉を疎んじ、忠諫を殺し、罪人を赦し、適を廢して庶を立て、妾を以て妻と爲さば、則ち火、其の性を失ふ。用ゐざるに則ち起こり、風に隨ひて斜めに行き、宗廟・宮室を焚き、民居を燎く。故に火は炎上せずと曰ふ。

現代語訳校了

君主が明察であれば火気に順い、火気も本性どおりに働いて物を成熟させ、人の利用に応じて必要な時だけ燃える。反対に君主が暗愚で、賢者を遠ざけ、讒言する者を進め、法を捨て、親族を疎んじ、忠告する臣を殺し、罪人を許し、嫡子を廃して庶子を立て、妾を正妻とするなら、火は本来の性質を失う。用いないのに火が起こり、風に従って斜めに燃え広がり、宗廟や宮殿を焼き、民家を焼く。これが「火が炎上しない」という異常である。

第二辨體性・土の稼穡と中央

第1冊 第16画像を開く(新しいタブ)
GT-100052・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

土爰稼穡稼穡者種曰稼斂曰穡土爲地道萬物貫穿而生故曰稼穡土居中以主四季成四時中央爲内事宮室夫婦親屬之象古者天子至於士人宮室寢處

句読本文校了

土爰稼穡。稼穡者。種曰稼。斂曰穡。土爲地道。萬物貫穿而生。故曰稼穡。土居中。以主四季。成四時。中央。爲内事宮室夫婦親屬之象。古者天子至於士人。宮室寢處。

訓読校了

土は爰に稼穡す。種うるを稼と曰ひ、斂むるを穡と曰ふ。土は地道たり、萬物これを貫穿して生ず。故に稼穡と曰ふ。土は中に居りて四季を主り、四時を成す。中央は内事・宮室・夫婦・親屬の象たり。古は天子より士人に至るまで、宮室寢處には、

現代語訳校了

土の性質は稼穡である。種をまくことを稼、収穫することを穡という。土は大地の道であり、万物は土を貫いて生じるため稼穡という。土は中央に位置して四季、すなわち各季の末月を司り、四時を完成させる。中央は家内の事・宮室・夫婦・親族の象である。古代には天子から士人に至るまで、宮室や寝所には、

GT-100053・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

皆有高卑節度與其過也寧儉禹卑宮室孔子善之后夫人左右妾媵有差九族有序骨肉有恩爲百姓之所軌則也如此順中和之氣則土得其性得其性則百穀實而稼穡成如人君縱意廣宮室臺榭鏤雕五色罷盡人力親疎無別妻妾過度則土失其性土失其性

句読本文校了

皆有高卑節度。與其過也。寧儉。禹卑宮室。孔子善之。后夫人左右妾媵有差。九族有序。骨肉有恩。爲百姓之所軌則也。如此順中和之氣。則土得其性。得其性。則百穀實而稼穡成。如人君縱意廣宮室臺榭。鏤雕五色。罷盡人力。親疎無別。妻妾過度。則土失其性。土失其性。

訓読校了

皆、高卑の節度有り。其の過ぎんよりは、寧ろ儉なれ。禹は宮室を卑くし、孔子これを善しとす。后・夫人・左右の妾媵には差有り、九族には序有り、骨肉には恩有り、百姓の軌則と爲る。此の如く中和の氣に順へば、土は其の性を得る。其の性を得れば、百穀實りて稼穡成る。人君、意を縱にして宮室臺榭を廣め、五色を鏤雕し、人力を罷れ盡くし、親疎の別無く、妻妾度を過ぐれば、土は其の性を失ふ。土、其の性を失へば、

現代語訳校了

宮室や寝所にはすべて身分に応じた高低の節度があり、過度に立派にするくらいなら質素な方がよい。禹は宮室を低く造り、孔子はこれを善しとした。后・夫人と、その左右に侍る妾・媵にはそれぞれ身分の差があり、九族には序列があり、肉親には恩愛があり、それが民の規範となった。このように中和の気に順えば、土は本性を得て百穀が実り、稼穡が成る。君主が欲望のまま宮室や高殿を広げ、五色に彫刻して人力を使い尽くし、親疎の区別を失い、妻妾について節度を越えるなら、土は本性を失う。土が本性を失えば、

GT-100054・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

則氣亂稼穡不成故五穀不登風霧爲害故曰土不稼穡金曰從革從革者革更也從範而更形革成器也西方物既成殺氣之盛故秋氣起而鷹隼擊春氣動而鷹隼化此殺生之二端是以白露爲霜霜者殺伐之表王者教兵集戎事以誅不義禁暴亂以安百姓古之人君

句読本文校了

則氣亂。稼穡不成。故五穀不登。風霧爲害。故曰土不稼穡。金曰從革。從革者。革。更也。從範而更。形革成器也。西方物既成。殺氣之盛。故秋氣起而鷹隼擊。春氣動而鷹隼化。此殺生之二端。是以白露爲霜。霜者。殺伐之表。王者教兵。集戎事以誅不義。禁暴亂以安百姓。古之人君。

訓読校了

則ち氣亂れ、稼穡成らず。故に五穀登らず、風霧害を爲す。故に土は稼穡せずと曰ふ。金を從革と曰ふ。革は更むるなり。範に從ひて更まり、形を革めて器と成る。西方は物既に成り、殺氣盛んなる所なり。故に秋氣起こりて鷹隼擊ち、春氣動きて鷹隼化す。此れ殺生の二端なり。是を以て白露は霜と爲る。霜は殺伐の表なり。王者は兵を教へ、戎事を集めて不義を誅し、暴亂を禁じて百姓を安んず。古の人君は、

現代語訳校了

気が乱れると稼穡は成らず、五穀は実らず、風や霧が害をなす。これを「土が稼穡しない」という。金の性は従革である。「革」とは改めることで、鋳型に従って形を変え、器物となる。西方は物がすでに完成し、殺気が盛んな所である。このため秋気が起これば鷹や隼が獲物を撃ち、春気が動けば鷹や隼が姿を変える。これは殺と生の二つの端である。白露は霜となり、霜は殺伐の表れである。王者は兵を訓練し、軍事を整えて不義を討ち、暴乱を禁じて民を安んじる。古代の君主は、

GT-100055・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

安不忘危以戒不虞故曰天下雖安忘戰者危國邑雖強好戰必亡殺伐必應義應義則金氣順金氣順則如其性如其性者工冶鑄作革形成器如人君樂侵凌好攻戰貪色賂輕百姓之命人民騷動則金失其性冶鑄不化凝滯渠堅不成者衆秋時萬物皆熟百穀已熟

句読本文校了

安不忘危。以戒不虞。故曰。天下雖安。忘戰者危。國邑雖強。好戰必亡。殺伐必應義。應義則金氣順。金氣順則如其性。如其性者。工冶鑄作。革形成器。如人君樂侵凌。好攻戰。貪色賂。輕百姓之命。人民騷動。則金失其性。冶鑄不化。凝滯渠堅。不成者衆。秋時萬物皆熟。百穀已熟。

訓読校了

安きにも危きを忘れず、以て不虞を戒む。故に曰はく、天下安しと雖も戰を忘るる者は危く、國邑強しと雖も戰を好めば必ず亡ぶ、と。殺伐は必ず義に應ずべし。義に應ずれば金氣順ひ、金氣順へば其の性の如し。其の性の如くなれば、工冶鑄作して形を革め器と成す。人君、侵凌を樂しみ、攻戰を好み、色賂を貪り、百姓の命を輕んじ、人民騷動すれば、金は其の性を失ひ、冶鑄化せず、凝滯して渠堅く、成らざる者衆し。秋時、萬物皆熟し、百穀已に熟す。

現代語訳校了

平安な時にも危機を忘れず、不測の事態を戒めた。天下が安泰でも戦を忘れる者は危うく、国邑が強くても戦を好めば必ず滅ぶという。殺伐は必ず義にかなうべきで、義にかなえば金気は順い、鋳造によって形を改め器となる。君主が侵略を楽しみ、戦を好み、女色と賄賂を貪り、民の命を軽んじて人民を騒がせれば、金は本性を失う。金属は溶けず、凝り滞って非常に固く、器にならないものが多くなる。秋は万物と百穀がすでに熟す時だが、

GT-100056・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

若逆金氣則萬物不成故曰金不從革水曰潤下潤下者水流濕就汙下也北方至陰宗廟祭祀之象冬陽之所始陰之所終終始者綱紀時也死者魂氣上天爲神魄氣下降爲鬼精氣散在於外而不反故爲之宗廟以收散也易曰渙亨王假有廟此之謂也夫聖人之德

句読本文校了

若逆金氣。則萬物不成。故曰金不從革。水曰潤下。潤下者。水流濕。就汙下也。北方至陰。宗廟祭祀之象。冬。陽之所始。陰之所終。終始者。綱紀時也。死者魂氣上天爲神。魄氣下降爲鬼。精氣散在於外而不反。故爲之宗廟。以收散也。易曰。渙。亨。王假有廟。此之謂也。夫聖人之德。

訓読校了

若し金氣に逆らへば、萬物成らず。故に金は從革せずと曰ふ。水を潤下と曰ふ。潤下とは、水、濕に流れ、汙下に就くなり。北方は至陰にして、宗廟祭祀の象なり。冬は陽の始まる所、陰の終る所なり。終始は時を綱紀するものなり。死者の魂氣は天に上りて神と爲り、魄氣は下降して鬼と爲る。精氣、外に散じて反らず。故に宗廟を爲りて以て散を收む。『易』に曰はく、「渙は亨る。王、廟に假ること有り」と。此れを謂ふなり。夫れ聖人の德は、

現代語訳校了

金気に逆らえば万物は完成しない。これが「金が從革しない」という異常である。水の性質は潤下、すなわち湿った所へ流れ、低い所へ向かうことである。北方は陰が極まる方位で、宗廟祭祀の象徴である。冬は陽が始まり陰が終わる時であり、この終始が時の秩序を立てる。死者の魂気は天へ上って神となり、魄気は下って鬼となるが、精気は外へ散って戻らない。そのため宗廟を設けて散った気を集める。『易』の「渙は通る。王が宗廟に至る」とはこのことである。聖人の徳において、

水氣の順逆・第三明數

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GT-100057・巻1
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又何以加於孝乎故天子親耕以供粢盛王后親蠶以供祭服敬之至也敬之至則鬼神報之以介福此順水氣水氣順則如其性如其性則源泉通流以利民用若人君廢祭祀慢鬼神逆天時則水失其性水暴出漂溢沒溺壞城邑爲人之害故曰水不潤下也第三明數

句読本文校了

又何以加於孝乎。故天子親耕。以供粢盛。王后親蠶。以供祭服。敬之至也。敬之至。則鬼神報之以介福。此順水氣。水氣順。則如其性。如其性。則源泉通流。以利民用。若人君廢祭祀。慢鬼神。逆天時。則水失其性。水暴出。漂溢沒溺。壞城邑。爲人之害。故曰水不潤下也。第三明數。

訓読校了

又た何を以て孝に加へんや。故に天子は親ら耕して粢盛に供し、王后は親ら蠶して祭服に供す。敬の至りなり。敬至れば、鬼神これに介福を報ず。此れ水氣に順ふなり。水氣順へば其の性の如く、源泉通流して民用を利す。若し人君、祭祀を廢し、鬼神を慢り、天時に逆らへば、水は其の性を失ひ、暴れ出でて漂溢沒溺し、城邑を壞り、人の害と爲る。故に水は潤下せずと曰ふ。第三、數を明らかにす。

現代語訳校了

孝にこれ以上何を加えられようか。そこで天子は自ら耕して祭祀用の穀物を供え、王后は自ら蚕を飼って祭服を供える。これは敬の極みであり、敬が極まれば鬼神は大きな福で報いる。これが水気に順うことである。水気が順えば本性どおり、源泉は通じて流れ、民の用を利する。反対に君主が祭祀を廃し、鬼神を侮り、天の時に逆らえば、水は本性を失い、激しく湧き出て氾濫し、人や物を押し流して水没させ、城邑を壊して人々を害する。これを「水が潤下しない」という。ここから第三章「数を明らかにする」に入る。

第三明數の構成・大衍

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GT-100058・巻1
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就此分爲五段一者起大衍論易動靜數二者論五行及生成數三者論支干數四者論納音數五者論九宮數第一起大衍論易動靜數凡萬物之始莫不始於無而後有是故易有大極是生兩儀兩儀生四序四序生之所生也有萬物滋繁然後萬物生成也

句読本文校了

就此分爲五段。一者、起大衍、論易動靜數。二者、論五行及生成數。三者、論支干數。四者、論納音數。五者、論九宮數。第一、起大衍、論易動靜數。凡萬物之始、莫不始於無而後有。是故易有大極、是生兩儀、兩儀生四序。四序、生之所生也。有、萬物滋繁、然後萬物生成也。

訓読校了

此を分けて五段と爲す。一は大衍を起こして『易』の動靜の數を論じ、二は五行及び生成の數を論じ、三は支干の數を論じ、四は納音の數を論じ、五は九宮の數を論ず。第一、大衍を起こして『易』の動靜の數を論ず。凡そ萬物の始めは、無より始まりて後に有るに始まらざるは莫し。是の故に『易』に大極有り、是れ兩儀を生じ、兩儀は四序を生ず。四序は、生ずる所のものを生ずるなり。有に至りて萬物滋繁し、然る後に萬物生成するなり。

現代語訳校了

第三章は五段から成る。第一は大衍を起こして『易』の動数・静数、第二は五行の数および生成数、第三は支干の数、第四は納音数、第五は九宮数を論じる。第一段は大衍と『易』の動静数である。万物は無から始まり、その後に有となる。『易』の太極が両儀を生み、両儀が四季を生む。四季は、それぞれの時に生じるものを生み出す。無から有の段階へ至ると万物は繁殖し、その後に万物の生成が完成する。

GT-100059・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

皆由陰陽二氣鼓舞陶鑄互相交感故孤陽不能獨生單陰不能獨成必須配合以鑪冶爾乃萬物化通是則天有其象精氣下流地道含化以資形始陰陽消長生殺用成明其道難明非數不可究故因數以辨之數之顯理猶筌蹄之取魚兔陽順唱始陰佐其終

句読本文校了

皆由陰陽二氣。鼓舞陶鑄。互相交感。故孤陽不能獨生。單陰不能獨成。必須配合以鑪冶。爾乃萬物化通。是則天有其象。精氣下流。地道含化。以資形始。陰陽消長。生殺用成。明其道難明。非數不可究。故因數以辨之。數之顯理。猶筌蹄之取魚兔。陽順唱始。陰佐其終。

訓読校了

皆、陰陽二氣の鼓舞陶鑄し、互ひに交感するに由る。故に孤陽は獨り生ずる能はず、單陰は獨り成る能はず。必ず配合して以て鑪冶するを須ち、爾して乃ち萬物化通す。是れ則ち天に其の象有り、精氣下流し、地道は化を含みて形の始めを資ける。陰陽消長し、生殺の用成る。其の道の明らめ難きを明らかにするには、數に非ざれば究むべからず。故に數に因りて之を辨ず。數の理を顯すことは、猶ほ筌蹄の魚兔を取るがごとし。陽は順ひて始めを唱へ、陰は其の終りを佐く。

現代語訳校了

万物の生成はすべて、陰陽二気が働いて形づくり、互いに感応することによる。陽だけでも陰だけでも生成はできず、両者が結合して炉で鋳るように働いてこそ万物は変化し通じる。天は象を示し、精気は下へ流れ、大地は変化の力を含んで形の始まりを助ける。陰陽が消長して生殺の働きが成立する。この分かりにくい道理は数によらなければ究明できない。数が理を明らかにすることは、魚を捕る筌や兎を捕る罠に似る。陽は先頭に立ち、陰はその完成を助ける。

GT-100060・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

窮奇偶之數備相成之道極變化之源者詳於蓍策之數也七八爲靜九六爲動陽動而進變七之九象氣息也明陽道之舒以象君德唱始不休無所屈後去極一等而猶進之故九動也陰動而退變八之六象氣消也以明臣法有所屈後唱和而已事理近君

句読本文校了

窮奇偶之數。備相成之道。極變化之源者。詳於蓍策之數也。七八爲靜。九六爲動。陽動而進。變七之九。象氣息也。明陽道之舒。以象君德。唱始不休。無所屈後。去極一等。而猶進之。故九動也。陰動而退。變八之六。象氣消也。以明臣法有所屈後。唱和而已。事理近君。

訓読校了

奇偶の數を窮め、相成の道を備へ、變化の源を極むることは、蓍策の數に詳らかなり。七・八を靜と爲し、九・六を動と爲す。陽は動きて進み、七より九に變ずるは、氣の息するを象る。陽道の舒ぶるを明らかにし、君德を象り、始めを唱へて休まず、後に屈する所無く、極を去ること一等にして猶ほ進む。故に九は動なり。陰は動きて退き、八より六に變ずるは、氣の消するを象る。臣法の後に屈する所有るを明らかにし、唱和するのみ。事理、君に近づけば、

現代語訳校了

奇偶の数、相互に完成させる道、変化の根源は蓍策の数に詳しい。七・八を静、九・六を動とする。陽は動けば進み、七から九へ変わる。これは気の伸長、陽道が伸びること、始めを主導して休まず後に屈しない君徳を表す。極から一段離れてもなお進むため九を動とする。陰は動けば退き、八から六へ変わる。これは気の衰退と、後に屈して主唱に唱和する臣下の法を表す。事理が君主に近づけば、

GT-100061・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

則靖息以聽命必須退讓以明其義故八靜也易曰分二以象兩掛一以象三揲之以四以象四時者餘手有四七故名七也有四八故名八也有此則靜爻之數夏殷尚質以用靜爻占之餘有四九故名九也有四六故名六也此則動爻之數周備質文故兼用動爻

句読本文校了

則靖息以聽命。必須退讓。以明其義。故八靜也。易曰。分二以象兩。掛一以象三。揲之以四。以象四時者。餘手有四七。故名七也。有四八。故名八也。有此。則靜爻之數。夏殷尚質。以用靜爻占之。餘有四九。故名九也。有四六。故名六也。此則動爻之數。周備質文。故兼用動爻。

訓読校了

則ち靖息して命を聽き、必ず退讓して其の義を明らかにすべし。故に八は靜なり。『易』に曰はく、「二に分けて兩を象り、一を掛けて三を象り、これを四に揲へて四時を象る」と。餘手に四を七つ有るが故に七と名づけ、四を八つ有るが故に八と名づく。此れすなはち靜爻の數なり。夏・殷は質を尚び、靜爻を用ゐてこれを占ふ。餘りに四を九つ有るが故に九と名づけ、四を六つ有るが故に六と名づく。此れすなはち動爻の數なり。周は質文を備ふ。故に動爻を兼ね用ふ。

現代語訳校了

静かに息んで命を聴き、退き譲ることによってその義を明らかにしなければならない。それゆえ八は静である。『易』では、蓍策を二つに分けて両儀をかたどり、一策を指に掛けて三才をかたどり、四策ずつ数えて四時をかたどるという。手元に四策を七組、すなわち二十八策が残る場合を七、四策を八組、すなわち三十二策が残る場合を八といい、これらが静爻の数である。質朴を尊んだ夏・殷は静爻を用いて占った。四策を九組、すなわち三十六策が残る場合を九、四策を六組、すなわち二十四策が残る場合を六といい、これらが動爻の数である。周は質と文の双方を備えるため、動爻も併せて用いた。

GT-100062・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

凡大衍極天地之數五十有五也京房以十日十二辰二十八宿合應五十其一不用者天之生氣將欲以虚求實故用四十九焉馬融以易之大極爲北辰也生兩儀兩儀生日月日月生四時四時生五行五行生十二月十二月生二十四氣北辰居位不動其餘四十九

句読本文校了

凡大衍極天地之數。五十有五也。京房以十日。十二辰。二十八宿。合應五十。其一不用者。天之生氣。將欲以虚求實。故用四十九焉。馬融以易之大極。爲北辰也。生兩儀。兩儀生日月。日月生四時。四時生五行。五行生十二月。十二月生二十四氣。北辰居位不動。其餘四十九。

訓読校了

凡そ大衍は天地の數を極め、五十有五なり。京房は十日・十二辰・二十八宿を以て、合して五十に應ずとす。其の一を用ゐざるは天の生氣にして、將に虛を以て實を求めんと欲する故、四十九を用ふ。馬融は『易』の大極を北辰と爲す。兩儀を生じ、兩儀は日月を生じ、日月は四時を生じ、四時は五行を生じ、五行は十二月を生じ、十二月は二十四氣を生ず。北辰は位に居りて動かず、其の餘の四十九は、

現代語訳校了

大衍は天地の数を尽くす五十五である。京房は十干、十二支、二十八宿の合計五十に対応させ、用いない一策を天の生気とみて、虚から実を求めるため四十九策を用いるとした。馬融は『易』の太極を北極星とし、そこから両儀、日月、四時、五行、十二月、二十四節気が順に生じるとした。北極星は動かず、そのほかの四十九が、

GT-100063・巻1
本文 校了
原文翻刻校了

轉運而用也鄭玄曰貞悔六爻本有五十定所用者四十有九天地之數本五十五天五與地十通天一與地六通數之者氣則有并并則宜減焉大衍減五故有五十其用減一故四十有九不并者不可減也今總其數五十者天一至地十凡五十五也此合生成之數

句読本文校了

轉運而用也。鄭玄曰。貞悔六爻。本有五十。定所用者。四十有九。天地之數。本五十五。天五與地十通。天一與地六通。數之者氣則有并。并則宜減焉。大衍減五。故有五十。其用減一。故四十有九。不并者。不可減也。今總其數五十者。天一至地十。凡五十五也。此合生成之數。

訓読校了

轉運して用を爲す。鄭玄曰はく、貞悔六爻は本より五十有り、定めて用ふる所は四十有九なり。天地の數は本と五十五なり。天五と地十は通じ、天一と地六は通ず。これを數ふるに、氣には并すること有り、并すれば則ち減ずべし。大衍は五を減ずる故に五十有り、其の用は一を減ずる故に四十有九なり。并せざる者は減ずべからず。今其の數を總じて五十とするも、天一より地十に至れば凡そ五十五なり。此れ生成の數を合するなり。

現代語訳校了

巡り動いて働くという。鄭玄によれば、貞卦と悔卦の六爻には本来五十があり、実際に用いるのは四十九である。天地の数は五十五だが、天五と地十、天一と地六のように気が併合される組合せは減らすべきなので、大衍は五を減らして五十となり、使用時にはさらに一を減らして四十九となる。併合されない数は減らせない。五十と総称しても、天一から地十までの総計は五十五であり、これは生成の数を合わせたものだという。

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