五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・38 / 49頁

GT-400207・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

故令失則風爲災也鄭以木爲雨服以木爲風服以金爲雨鄭以金爲陽鄭以土爲風服以土爲陰兩說相反各有其意今就五行而辨服近之矣所以然者水生於金金體非陽木爲少陽不應爲雨土爲地地本是陰風自是陰陽之氣不獨生於土

句読本文校了

故令失則風爲災也。鄭以木爲雨服以木爲風服以金爲雨鄭以金爲陽鄭以土爲風服以土爲陰兩說相反各有其意今就五行而辨服近之矣。所以然者水生於金金體非陽木爲少陽不應爲雨土爲地地本是陰風自是陰陽之氣不獨生於土。

訓読校了

故に令失すれば風災と爲る。鄭は木を雨とし、服は木を風とす。服は金を雨とし、鄭は金を陽とす。鄭は土を風とし、服は土を陰とす。兩說相反すれど、各々其の意有り。今五行に就きて辨ずれば、服の說之に近し。所以は、水は金より生じ、金の體は陽に非ず。木は少陽と爲り、雨と爲すべからず。土は地と爲り、地は本より是れ陰なり。風は自ら是れ陰陽の氣にして、獨り土より生ぜず。

現代語訳校了

ゆえに君命を誤ると風の災害が起こる。鄭玄は木を雨、服虔は木を風とし、服虔は金を雨、鄭玄は金を陽とする。また鄭玄は土を風、服虔は土を陰とする。両説は反対だが各々に意図がある。五行から論じれば服虔説が近い。水は金から生じるので金自体は陽ではなく、木は少陽なので雨とはしにくい。土は地であり本来陰で、風は陰陽双方の気であって土だけから生じるものではないからである。

GT-400208・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

服以木爲風者取巽木故爲當也六氣通於六情者好爲陽惡爲陰怒爲風喜爲雨哀爲晦樂爲明好爲陽者陽氣好生是以爲好惡爲陰者陰氣好殺是以爲惡怒爲風者楊泉云風者陰陽孔氣激發而起猶人之內氣因喜怒哀樂激發起也曾子曰

句読本文校了

服以木爲風者取巽木故爲當也。六氣通於六情者好爲陽惡爲陰怒爲風喜爲雨哀爲晦樂爲明好爲陽者陽氣好生是以爲好惡爲陰者陰氣好殺是以爲惡怒爲風者楊泉云、風者陰陽孔氣激發而起猶人之內氣因喜怒哀樂激發起也。曾子曰、。

訓読校了

服が木を風と爲すは、巽木を取りて故に當となす。六氣の六情に通ずるは、好を陽、惡を陰、怒を風、喜を雨、哀を晦、樂を明と爲す。好を陽と爲すは、陽氣生を好む故に好と爲す。惡を陰と爲すは、陰氣殺を好む故に惡と爲す。怒を風と爲すは、楊泉云はく、風は陰陽の氣が孔より激發して起る。猶ほ人の內氣が喜怒哀樂に因り激發して起るがごとしと。曾子に曰はく、

現代語訳校了

服虔が木を風とするのは巽木を取るため妥当である。六気と六情の対応は、好=陽、悪=陰、怒=風、喜=雨、哀=晦、楽=明である。陽気は生を好むため「好」、陰気は殺を好むため「悪」とする。怒を風とする理由について楊泉は、風は陰陽の気が孔隙から激しく発して起こり、人の内なる気が喜怒哀楽によって激発するのと同じだと述べる。続いて曾子の説を引く。

GT-400209・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

陰陽怒而爲風喜而爲雨者曾子曰陰陽和而爲雨和潤故爲喜也哀爲晦者晦闇也愁則閉塞故暗所以爲晦樂爲明者樂則情舒散故明也漢書禮樂志云人含天地陰陽之氣有喜怒哀樂之情論衡曰人五藏以心爲主心發智慧而四藏從之肝爲之喜

句読本文校了

陰陽怒而爲風喜而爲雨者曾子曰、陰陽和而爲雨和潤故爲喜也。哀爲晦者晦闇也。愁則閉塞故暗所以爲晦樂爲明者樂則情舒散故明也。漢書禮樂志云、人含天地陰陽之氣有喜怒哀樂之情論衡曰、人五藏以心爲主心發智慧而四藏從之肝爲之喜。

訓読校了

陰陽怒りて風と爲る。喜びて雨と爲るは、曾子曰はく、陰陽和して雨と爲る。和潤なる故に喜と爲す。哀を晦と爲すは、晦は闇なり。愁へば閉塞して暗き故に晦と爲す。樂を明と爲すは、樂しめば情舒散する故に明なり。漢書禮樂志に云はく、人は天地陰陽の氣を含み、喜怒哀樂の情有りと。論衡に曰はく、人の五藏は心を以て主と爲し、心智慧を發して四藏之に從ふ。肝は之が喜と爲る。

現代語訳校了

陰陽が怒ると風になる。喜を雨とするのは、曾子が陰陽の調和によって雨となり、その和潤さが喜だからだという。哀を晦とするのは、悲しむと心が閉じて暗くなるためである。楽を明とするのは、楽しめば心が伸び広がって明るくなるためである。『漢書』礼楽志は、人は天地陰陽の気を含み喜怒哀楽の情をもつとする。『論衡』は、五臓では心が主で、心が知恵を発すると四臓が従い、肝が喜を担うと説く。

GT-400210・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

肺爲之怒腎爲之哀脾爲之樂故聖人節之恐傷性也翼奉云好則膀胱受之水好前故曰好怒則膽受之少陽始盛萬物前萌也惡則小腸受之夏長養萬物惡偽故曰惡喜則大腸受之金爲珍物故皆喜樂則胃受之土生養萬物上下皆樂哀則三焦受之

句読本文校了

肺爲之怒腎爲之哀脾爲之樂故聖人節之恐傷性也。翼奉云、好則膀胱受之水好前故曰、好怒則膽受之少陽始盛萬物前萌也。惡則小腸受之夏長養萬物惡偽故曰、惡喜則大腸受之金爲珍物故皆喜樂則胃受之土生養萬物上下皆樂哀則三焦受之。

訓読校了

肺は怒、腎は哀、脾は樂と爲る。故に聖人は之を節し、性を傷ふを恐る。翼奉云はく、好は膀胱之を受く。水は前むを好む故に好と曰ふ。怒は膽之を受く。少陽始めて盛んにして萬物前に萌す。惡は小腸之を受く。夏は萬物を長養し、偽を惡む故に惡と曰ふ。喜は大腸之を受く。金は珍物なる故に皆喜ぶ。樂は胃之を受く。土は萬物を生養し、上下皆樂しむ。哀は三焦之を受く。

現代語訳校了

『論衡』では肺が怒、腎が哀、脾が楽を担い、聖人は性が傷つかぬよう感情を節制する。翼奉は、好を膀胱に配し、水が前へ進むことを好むから「好」とする。怒は胆に配し、少陽が盛り始め万物が芽吹くことによる。悪は小腸に配し、夏が万物を育て虚偽を憎むことによる。喜は大腸に配し、金が珍宝で人が喜ぶことによる。楽は胃に配し、土が万物を養って上下を楽しませることによる。哀は三焦に配する。

GT-400211・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

陰陽之府陽昇陰終其宮室竭故曰三焦故哀悽也論衡以四時論藏翼奉以風通六情論府脾腎二種藏府是同肝肺二藏及府不同者藏以肺有殺罰之性故怒府以合肺金珍之用故喜肝則以春氣生故喜膽則以合火能焚燎故怒二理竝通又云

句読本文校了

陰陽之府陽昇陰終其宮室竭故曰、三焦故哀悽也。論衡以四時論藏翼奉以風通六情論府脾腎二種藏府是同肝肺二藏及府不同者藏以肺有殺罰之性故怒府以合肺金珍之用故喜肝則以春氣生故喜膽則以合火能焚燎故怒二理竝通又云、。

訓読校了

三焦は陰陽の府、陽昇り陰終りて其の宮室竭く。故に三焦と曰ひ、故に哀悽なり。論衡は四時を以て藏を論じ、翼奉は風を以て六情に通じ府を論ず。脾・腎の二種は藏府同じ。肝・肺の二藏と府との異なるは、藏では肺に殺罰の性有る故に怒、府では肺に合する金珍の用を以て喜とす。肝は春氣生ずるを以て喜、膽は火に合して能く焚燎するを以て怒とす。二理竝びに通ず。又云はく、

現代語訳校了

三焦は陰陽の集まる府で、陽が昇り陰が終わるとその宮室が尽きるため、三焦に哀しみを配する。『論衡』は四季から臓を論じ、翼奉は風と六情の関係から腑を論じる。脾と腎は臓・腑の配当が同じだが、肝と肺は異なる。臓では肺の殺罰性を怒、腑では肺に合する金の珍宝としての働きを喜とする。肝は春気が生じるので喜、胆は火に合して焼くので怒とする。両方の理はともに成り立つ。さらに翼奉はいう。

GT-400212・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

喜氣爲暖當春怒氣爲晴當秋樂氣爲陽當夏哀氣爲陰當冬此與論衡意合翼奉云東方性仁情怒怒行陰賊主之南方性禮情惡惡行廉貞主之下方性信情哀哀行公正主之西方性義情喜喜行寬大主之北方性智情好好行貪狼主之上方性惡情樂

句読本文校了

喜氣爲暖當春怒氣爲晴當秋樂氣爲陽當夏哀氣爲陰當冬此與論衡意合翼奉云、東方性仁情怒怒行陰賊主之南方性禮情惡惡行廉貞主之下方性信情哀哀行公正主之西方性義情喜喜行寬大主之北方性智情好好行貪狼主之上方性惡情樂。

訓読校了

喜氣は暖にして春に當り、怒氣は晴にして秋に當り、樂氣は陽にして夏に當り、哀氣は陰にして冬に當る。此れ論衡の意と合ふ。翼奉云はく、東方は性仁・情怒、怒の行は陰賊之を主る。南方は性禮・情惡、惡の行は廉貞之を主る。下方は性信・情哀、哀の行は公正之を主る。西方は性義・情喜、喜の行は寬大之を主る。北方は性智・情好、好の行は貪狼之を主る。上方は性惡・情樂なり。

現代語訳校了

喜の気は暖かく春に、怒の気は晴れて秋に、楽の気は陽で夏に、哀の気は陰で冬に当たり、『論衡』の考えと合う。翼奉は、東方を仁の性・怒の情として陰賊が支配し、南方を礼・悪として廉貞が支配し、下方を信・哀として公正が支配し、西方を義・喜として寛大が支配し、北方を智・好として貪狼が支配し、上方を悪の性・楽の情とする。

GT-400213・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

樂行奸邪主之貪狼主求索財物既云貪狼理然來須陰賊主之劫盜此亦不疑廉貞主上客遷召寅爲陽始午爲陽盛故稱上客既有廉貞之性理自召任高遷寬大主酒食慶善寬大多所容納故有善慶善慶必置酒食奸邪主疾病淫淫欺欺故因邪惡而生

句読本文校了

樂行奸邪主之貪狼主求索財物既云、貪狼理然來須陰賊主之劫盜此亦不疑廉貞主上客遷召寅爲陽始午爲陽盛故稱上客既有廉貞之性理自召任高遷寬大主酒食慶善寬大多所容納故有善慶善慶必置酒食奸邪主疾病淫淫欺欺故因邪惡而生。

訓読校了

樂の行は奸邪之を主る。貪狼は財物を求索するを主る。既に貪狼と云へば、理として然り。來るには須らく陰賊之を主るべし。劫盜は、此れ亦疑はず。廉貞は上客の遷召を主る。寅は陽の始め、午は陽の盛んなる故に上客と稱す。既に廉貞の性有れば、理として自ら高遷を召任す。寬大は酒食慶善を主る。寬大は容納する所多き故に善慶有り、善慶あれば必ず酒食を置く。奸邪は疾病を主り、淫淫欺欺なる故に邪惡に因りて生ず。

現代語訳校了

上方の楽の働きは奸邪が支配する。貪狼は財物の追求をつかさどり、貪狼という以上、その理は当然である。その働きが現れるには陰賊がこれを主る必要があり、陰賊が強盗を主ることにも疑いはない。廉貞は高位の客の昇進・招請をつかさどる。寅は陽の始め、午は陽の盛りなので上客と呼び、廉貞の性が高位への任命を招く。寛大は酒食と慶事・善事をつかさどり、多くを受け入れる性質から善い慶びが生じ、酒食が設けられる。奸邪は淫らで欺く邪悪から生じる疾病をつかさどる。

GT-400214・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

邪惡必生疾病公正主執仇諍諫正故能爭公故能執仇讎也情好者水生申盛子水性觸地而行觸物而潤多所好故爲好多所好則貪無厭故爲貪狼申子主之情怒者木生亥盛卯性受水氣而生貫地而出故爲怒卯木生於子水與卯還自相刑亥又自刑

句読本文校了

邪惡必生疾病公正主執仇諍諫正故能爭公故能執仇讎也。情好者水生申盛子水性觸地而行觸物而潤多所好故爲好多所好則貪無厭故爲貪狼申子主之情怒者木生亥盛卯性受水氣而生貫地而出故爲怒卯木生於子水與卯還自相刑亥又自刑。

訓読校了

邪惡は必ず疾病を生ず。公正は仇を執り諫を諍ふを主る。正なる故に能く爭ひ、公なる故に能く仇讎を執る。情の好は、水が申に生じ子に盛んなるに因る。水の性は地に觸れて行き、物に觸れて潤し、好む所多き故に好と爲す。好む所多ければ貪り厭くこと無き故に貪狼と爲し、申・子之を主る。情の怒は、木が亥に生じ卯に盛んなるに因る。性は水氣を受けて生じ、地を貫きて出づる故に怒と爲す。卯木は子水に生じ、卯と還りて自ら相刑し、亥も又自刑す。

現代語訳校了

邪悪は必ず病を生む。公正は敵を捕らえ諫争することを担い、正だから争え、公平だから仇敵を捕らえられる。好の情は、水が申に生まれ子で盛んになることに由来する。水は地に触れて流れ、物を潤して多くを好むため「好」とし、好みが多いと貪欲で満足しないため貪狼とし、申・子が支配する。怒の情は、木が亥に生まれ卯で盛んになることに由来する。木は水気を受け、地を貫いて出るので「怒」とする。卯木は子水から生じながら卯と子が相刑し、亥も自刑する。

GT-400215・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

是以陰氣相賊故爲陰賊亥卯主之貪狼必得陰賊而後動陰賊必得貪狼而後用二陰竝行是以王者忌於子卯相刑之日也情惡者火生寅盛午火性炎猛無所容受故爲惡其氣清明精耀以禮自整故爲廉貞寅午主之情喜者金生巳盛酉金爲寶物

句読本文校了

是以陰氣相賊故爲陰賊亥卯主之貪狼必得陰賊而後動陰賊必得貪狼而後用二陰竝行是以王者忌於子卯相刑之日也。情惡者火生寅盛午火性炎猛無所容受故爲惡其氣清明精耀以禮自整故爲廉貞寅午主之情喜者金生巳盛酉金爲寶物。

訓読校了

是を以て陰氣相賊する故に陰賊と爲し、亥・卯之を主る。貪狼は必ず陰賊を得て後に動き、陰賊は必ず貪狼を得て後に用をなす。二陰竝び行はるるを以て、王者は子卯相刑の日を忌む。情の惡は、火が寅に生じ午に盛んなるに因る。火性炎猛にして容受する所無き故に惡と爲す。其の氣清明精耀にして禮を以て自ら整ふ故に廉貞と爲し、寅・午之を主る。情の喜は、金が巳に生じ酉に盛んなるに因り、金は寶物なり。

現代語訳校了

陰気が互いに害するので陰賊とし、亥・卯が支配する。貪狼は陰賊を得て動き、陰賊も貪狼を得て働く。二つの陰が並んで働くため王者は子と卯が相刑する日を忌む。悪の情は、火が寅に生じ午で盛んとなり、炎の激しさが何も受け入れないため「悪」とする。一方、その気は清明で輝き、礼によって整うため廉貞とし、寅・午が支配する。喜の情は、金が巳に生まれ酉に盛んとなり、金が宝物であることに由来する。

GT-400216・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

見之者喜又喜以利刃加於萬物故喜利刃所加無不寬廣爲器則多容受故爲寬大巳酉主之二陽竝行是以王者吉於午酉之日情樂者謂北與東陽氣所萌生故爲上亦主中央辰爲水窮也木落歸本水流歸末故木刑在未水刑在辰盛衰各得其所故樂

句読本文校了

見之者喜又喜以利刃加於萬物故喜利刃所加無不寬廣爲器則多容受故爲寬大巳酉主之二陽竝行是以王者吉於午酉之日情樂者謂北與東陽氣所萌生故爲上亦主中央辰爲水窮也。木落歸本水流歸末故木刑在未水刑在辰盛衰各得其所故樂。

訓読校了

之を見る者喜び、又喜びて利刃を萬物に加ふる故に喜とす。利刃の加ふる所は寬廣ならざる無く、器と爲れば則ち多く容受す。故に寬大と爲し、巳・酉之を主る。二陽竝び行はるるを以て、王者は午酉の日を吉とす。情の樂は北と東を謂ひ、陽氣の萌生する所なる故に上と爲し、亦中央を主る。辰は水の窮まる所なり。木落ちて本に歸り、水流れて末に歸る。故に木の刑は未に在り、水の刑は辰に在り、盛衰各々其の所を得る故に樂しむ。

現代語訳校了

宝である金を見れば人は喜び、鋭い刃を万物に用いることも喜ぶ。刃が加わると物は広く開かれ、器になれば多くを容れるため寛大とし、巳・酉が支配する。二陽が並んで働くので王者には午・酉の日が吉である。楽の情は北と東、すなわち陽気が芽生える所なので上方とし、中央も支配する。辰は水が窮まる所で、木は落ちて根へ、水は流れて末へ帰るため、木の刑は未、水の刑は辰にあり、盛衰が所を得るので楽となる。

GT-400217・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

水窮則無隟不入木上出窮則旁行爲斜故爲奸邪辰未主之情哀者謂南與西陰氣所萌生故爲下戌窮火也丑爲金窮也金剛火強各歸其鄕故火刑在午金刑在酉金火之盛而被自刑至窮無所歸故曰哀

句読本文校了

水窮則無隟不入木上出窮則旁行爲斜故爲奸邪辰未主之情哀者謂南與西陰氣所萌生故爲下戌窮火也。丑爲金窮也。金剛火強各歸其鄕故火刑在午金刑在酉金火之盛而被自刑至窮無所歸故曰、哀。

訓読校了

水窮まれば隟として入らざる無く、木上に出で、窮まれば旁行して斜と爲る。故に奸邪と爲し、辰・未之を主る。情の哀は南と西を謂ひ、陰氣の萌生する所なる故に下と爲す。戌は火の窮まる所、丑は金の窮まる所なり。金剛く火強くして各々其の鄕に歸る。故に火の刑は午に在り、金の刑は酉に在る。金火の盛んなるに自刑を被り、窮まりに至りて歸る所無き故に哀と曰ふ。

現代語訳校了

水は窮まると入らない隙間がなく、木は上へ伸びて窮まれば横へ斜めに進むので奸邪とし、辰・未が支配する。哀の情は南と西、すなわち陰気が芽生える所なので下方とする。戌は火、丑は金が窮まる所である。剛い金と強い火は各々の方へ帰り、火の刑は午、金の刑は酉にある。金火が盛んな時に自刑を受け、窮まって帰る所がないので哀という。

GT-400218・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

火性無私金性剛斷故曰公正戌丑主之故曰五性居本六情在末情因性有性而由情情性相因故以備釋

句読本文校了

火性無私金性剛斷故曰、公正戌丑主之故曰、五性居本六情在末情因性有性而由情情性相因故以備釋。

訓読校了

火の性は私無く、金の性は剛斷なる故に公正と曰ひ、戌・丑之を主る。故に曰はく、五性は本に居り、六情は末に在り。情は性に因りて有り、性は情に由る。情性相因る故に以て備さに釋す。

現代語訳校了

火は私心がなく、金は剛毅で決断する性質なので公正といい、戌・丑が支配する。ゆえに五性は根本にあり六情は末端にある。情は性によって生じ、性も情を通して現れ、両者が互いに依存するため詳しく解説した。

GT-400219・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

第十九論治政治政者治者治也治立爲名政者正也不邪爲稱百姓不能自治樹君以治之萬民不能自正立長以正之正使不邪治令不亂不亂故安不邪故善善則盜賊不興安則各保其業

句読本文校了

第十九論治政治政者治者治也。治立爲名政者正也。不邪爲稱百姓不能自治樹君以治之萬民不能自正立長以正之正使不邪治令不亂不亂故安不邪故善善則盜賊不興安則各保其業。

訓読校了

第十九、治政を論ず。治政とは、治は治なり。治を立てて名と爲す。政は正なり。邪ならざるを稱と爲す。百姓自ら治むる能はず、君を樹てて以て之を治む。萬民自ら正す能はず、長を立てて以て之を正す。正は邪ならざらしめ、治は亂れざらしむ。亂れざる故に安く、邪ならざる故に善し。善ければ盜賊興らず、安ければ各々其の業を保つ。

現代語訳校了

第十九「治政を論ず」。「治」は治めること、「政」は正しく邪でないことである。民衆は自ら治められないので君主を立て、万民は自ら正せないので長を立てる。正は邪を除き、治は乱れを除く。乱れがなければ安定し、邪がなければ善となる。善なら盗賊は起こらず、安定すれば人々は各々の生業を守る。

GT-400220・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

所以能勝殘去殺道路鴈行蚖蛇可蹠驎龍可駕如此名政治也孔子曰爲政以德譬如北辰居其所而衆星共之大戴禮云君者治之本無君焉治能法五行謂之合道所以寬猛喻之水火仁義取于金木順四序以教民資五材而爲用任人任力理歸一揆

句読本文校了

所以能勝殘去殺道路鴈行蚖蛇可蹠驎龍可駕如此名政治也。孔子曰、爲政以德譬如北辰居其所而衆星共之大戴禮云、君者治之本無君焉。治能法五行謂之合道所以寬猛喻之水火仁義取于金木順四序以教民資五材而爲用任人任力理歸一揆。

訓読校了

所以に能く殘に勝ち殺を去り、道路に鴈行し、蚖蛇蹠むべく、驎龍駕すべし。此の如きを政治と名づく。孔子曰はく、政を爲すに德を以てするは、譬へば北辰其の所に居りて衆星之を共するが如し。大戴禮に云はく、君は治の本なり、君無くんば焉んぞ治まらん。能く五行に法る、之を合道と謂ふ。所以に寬猛を水火に喩へ、仁義を金木に取り、四序に順ひて民を教へ、五材に資りて用を爲し、人に任せ力に任せ、理は一揆に歸す。

現代語訳校了

このため残虐に打ち勝ち殺戮を除き、人々は雁の列のように道を行き、毒蛇を踏め、麒麟や龍にも乗れる。この状態を政治という。孔子は、徳による政治は北極星がその位置にあって諸星が従うようなものだという。『大戴礼』は君主を統治の根本とし、君主なくして統治はないとする。五行を規範とすることが道に合うことで、寛容と厳格を水火、仁義を金木に取り、四季に従って民を教え、五材を用い、人と力を適任に配し、原理を一つに帰する。

GT-400221・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

春秋繁露治順五行篇云木用事其氣𤍜濁而青七十二日火用事其氣𤍜陽而赤七十二日土用事其氣溫濁而黃七十二日金用事其氣堅凝而白七十二日水用事其氣清寒而黑七十二日復木之用事則行柔惠進經術之士至于立春出輕繫去稽留

句読本文校了

春秋繁露治順五行篇云、木用事其氣𤍜濁而青七十二日火用事其氣𤍜陽而赤七十二日土用事其氣溫濁而黃七十二日金用事其氣堅凝而白七十二日水用事其氣清寒而黑七十二日復木之用事則行柔惠進經術之士至于立春出輕繫去稽留。

訓読校了

春秋繁露治順五行篇に云はく、木事を用ゐれば其の氣𤍜濁にして青く七十二日。火事を用ゐれば其の氣𤍜陽にして赤く七十二日。土事を用ゐれば其の氣溫濁にして黃く七十二日。金事を用ゐれば其の氣堅凝にして白く七十二日。水事を用ゐれば其の氣清寒にして黑く七十二日。復た木の事を用ゐるに、則ち柔惠を行ひ、經術の士を進む。立春に至り、輕繫を出し、稽留を去る。

現代語訳校了

『春秋繁露』治順五行篇によれば、木が働く七十二日は気が乾いて濁り青く、火が働く七十二日は気が熱く陽盛で赤く、土が働く七十二日は気が温かく濁って黄、金が働く七十二日は気が堅く凝って白、水が働く七十二日は気が清く寒く黒い。再び木が働く時は柔和な恵みを施し経術の士を登用する。立春には軽罪の拘禁者を釈放し、滞留する案件をなくす。

GT-400222・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

除桎梏開閉闔通障塞存幼孤矜寡獨此竝順春之施也無伐木恩及草木則朱草生詩人所歌恩及行葦者也不伐木者不可違天陽生長之氣也若夫人君馳騁無度沈湎縱恣重徭役奪民時厚稅斂則民疾疢瘮患足疾傷春氣故皆木病也木傷敗

句読本文校了

除桎梏開閉闔通障塞存幼孤矜寡獨此竝順春之施也。無伐木恩及草木則朱草生詩人所歌恩及行葦者也。不伐木者不可違天陽生長之氣也。若夫人君馳騁無度沈湎縱恣重徭役奪民時厚稅斂則民疾疢瘮患足疾傷春氣故皆木病也。木傷敗。

訓読校了

桎梏を除き、閉闔を開き、障塞を通じ、幼孤を存し、寡獨を矜れむ。此れ竝びに春の施しに順ふ。木を伐る無かれ。恩草木に及べば朱草生ず。詩人の歌ふ所、恩行葦に及ぶ者なり。木を伐らざるは、天陽生長の氣に違ふべからざればなり。若し夫れ人君馳騁度無く、沈湎縱恣し、徭役を重くし、民の時を奪ひ、稅斂を厚くすれば、民は疢瘮を疾み、足疾を患ふ。春氣を傷ふ故に皆木の病なり。木傷敗すれば、

現代語訳校了

足かせを外し、閉じた門を開き、塞がれた道を通し、幼い孤児を養い、寡婦や身寄りのない者を憐れむ。これは春の施しに従う。木を伐らず恩恵を草木まで及ぼせば朱草が生え、『詩経』に葦にまで慈愛が及ぶと歌われる。伐木を禁じるのは天の陽気が成長させる働きに逆らわないためである。君主が節度なく遊興し、酒色に溺れ、労役と徴税を重くして農時を奪えば、民は熱病や足の病になり、春気を傷つける木の病となる。木が傷つき敗れると、

GT-400223・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

則龍深藏木禽懼而不見也鯨鯢出而爲禍鱗甲之蟲有金氣所以傷木也火用事則正封疆脩田疇至于立夏舉賢良封有德賞有功出使四方此順火之化長養萬物也無縱火則火順人用甘露降鳳凰來黃鵠見鳳凰卽朱雀之類喜故出見甘露黃鵠

句読本文校了

則龍深藏木禽懼而不見也。鯨鯢出而爲禍鱗甲之蟲有金氣所以傷木也。火用事則正封疆脩田疇至于立夏舉賢良封有德賞有功出使四方此順火之化長養萬物也。無縱火則火順人用甘露降鳳凰來黃鵠見鳳凰卽朱雀之類喜故出見甘露黃鵠。

訓読校了

龍深く藏れ、木の禽懼れて見えず。鯨鯢出でて禍を爲す。鱗甲の蟲は金氣有り、木を傷ふ所以なり。火事を用ゐれば、則ち封疆を正し、田疇を脩む。立夏に至り、賢良を舉げ、有德を封じ、有功を賞し、使を四方に出す。此れ火の化に順ひ、萬物を長養するなり。火を縱つ無ければ火は人の用に順ひ、甘露降り、鳳凰來り、黃鵠見はる。鳳凰は卽ち朱雀の類、喜ぶ故に出で見はる。甘露・黃鵠は、

現代語訳校了

龍は深く隠れ、木に属する鳥は恐れて姿を消す。鯨や鯢が現れて災いをなす。これら鱗甲の生物は金気を帯びており、それによって木を傷つけるのである。火の季節には国境を正し田畑を整え、立夏には賢者を挙げ、徳ある者を封じ、功ある者を賞し、使者を四方へ遣わす。これは火の成長作用に従う。放火を許さなければ火は人の利用に従い、甘露が降り、鳳凰と黄鵠が現れる。鳳凰は朱雀の類で、喜んで姿を現す。甘露と黄鵠については、

GT-400224・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

竝子慶其母也若人君用讒佞離骨肉踈忠臣棄法令婦人爲政則民病血腫國因不明火爲災冬鴈不來鳥爲怪火不善故鳥有變怪憂懼故不來也土用事養長老矜寡獨賜孝悌施恩澤順土寬和含養之德也無興土功宮室制度有差親戚之恩有序

句読本文校了

竝子慶其母也。若人君用讒佞離骨肉踈忠臣棄法令婦人爲政則民病血腫國因不明火爲災冬鴈不來鳥爲怪火不善故鳥有變怪憂懼故不來也。土用事養長老矜寡獨賜孝悌施恩澤順土寬和含養之德也。無興土功宮室制度有差親戚之恩有序。

訓読校了

竝びに子が其の母を慶ぶなり。若し人君讒佞を用ゐ、骨肉を離し、忠臣を踈んじ、法令を棄て、婦人政を爲せば、民は血腫を病み、國因りて明らかならず。火、災を爲し、冬鴈來らず、鳥怪を爲す。火善からざる故に鳥に變怪有り、憂懼する故に來らず。土事を用ゐれば、長老を養ひ、寡獨を矜れみ、孝悌に賜ひ、恩澤を施す。土の寬和含養の德に順ふなり。土功を興す無く、宮室の制度差有り、親戚の恩序有らしむ。

現代語訳校了

いずれも子が母を祝う象徴である。君主が讒言する者を用い、親族を離間し、忠臣を遠ざけ、法令を捨て、婦人に政治を任せると、民は血の腫れを病み国は暗くなり、火災が起こり、冬の雁が来ず鳥の怪異が生じる。火の徳が損なわれ鳥が恐れるためである。土の季節には老人を養い、寡婦や孤独な者を憐れみ、孝行・友愛を賞し恩沢を施して、土の寛大で養う徳に従う。土木工事を起こさず、宮殿の制度に等級を設け、親族への恩に秩序をもたせる。

GT-400225・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

則五穀成嘉禾出賢聖來土氣順故嘉禾和熟其德景大故聖賢悅之而來若人君淫樂無度侮親老困百姓則民病腹心之疾心腹主土氣不和故病賢人隱藏百穀不登裸蟲爲災土性傷故稼穡不成賢人惡之所以不見裸蟲土氣也傷故爲變金用事

句読本文校了

則五穀成嘉禾出賢聖來土氣順故嘉禾和熟其德景大故聖賢悅之而來若人君淫樂無度侮親老困百姓則民病腹心之疾心腹主土氣不和故病賢人隱藏百穀不登裸蟲爲災土性傷故稼穡不成賢人惡之所以不見裸蟲土氣也。傷故爲變金用事。

訓読校了

則ち五穀成り、嘉禾出で、賢聖來る。土氣順ふ故に嘉禾和熟し、其の德景大なる故に聖賢之を悅びて來る。若し人君淫樂度無く、親老を侮り、百姓を困しめば、民は腹心の疾を病む。心腹は土を主り、氣和せざる故に病む。賢人隱藏し、百穀登らず、裸蟲災を爲す。土性傷つく故に稼穡成らず、賢人之を惡む所以に見えず。裸蟲は土氣なり。傷つく故に變を爲す。金事を用ゐれば、

現代語訳校了

その結果、五穀が実り、嘉禾が現れ、賢者・聖人が来る。土気が順調なので穀物が熟し、徳が大きいため賢聖が喜んで来る。反対に君主が度を越して遊び、親や老人を侮り、民を苦しめれば、土に属する腹や心臓の病が生じる。賢人は隠れ、穀物は実らず、裸虫が災いをなす。土性が傷ついて農作が成らず、賢者は嫌って現れず、土気に属する裸虫が異変を示す。金の季節には、

GT-400226・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

脩城郭繕牆垣審辟禁飭甲兵警百官誅不法此竝順金以威嚴肅殺之氣也無焚金石則白虎見虎是金獸喜故出也若人君貪賂好用兵則民人病咳嗽筋牽鼻塞鼻主肺肺病故咳嗽而鼻塞此并金爲疾也毛蟲金石爲怪金氣傷故爲變怪也水用事

句読本文校了

脩城郭繕牆垣審辟禁飭甲兵警百官誅不法此竝順金以威嚴肅殺之氣也。無焚金石則白虎見虎是金獸喜故出也。若人君貪賂好用兵則民人病咳嗽筋牽鼻塞鼻主肺肺病故咳嗽而鼻塞此并金爲疾也。毛蟲金石爲怪金氣傷故爲變怪也。水用事。

訓読校了

城郭を脩め、牆垣を繕ひ、辟禁を審らかにし、甲兵を飭へ、百官を警め、不法を誅す。此れ竝びに金の威嚴肅殺の氣に順ふ。金石を焚く無ければ白虎見はる。虎は是れ金獸、喜ぶ故に出づ。若し人君賂を貪り兵を用ゐるを好めば、民人咳嗽・筋牽・鼻塞を病む。鼻は肺を主り、肺病む故に咳嗽して鼻塞がる。此れ并びに金の疾なり。毛蟲・金石怪を爲し、金氣傷つく故に變怪を爲す。水事を用ゐれば、

現代語訳校了

城郭と塀を修理し、刑罰・禁令を明らかにし、武具を整え、百官を戒め、不法を処罰する。これは金の威厳と粛殺の気に従う。金石を焼かなければ金獣である白虎が喜んで現れる。君主が賄賂を貪り戦争を好めば、民は咳、筋の引きつり、鼻詰まりを患う。鼻と肺が金に属し肺が病むためである。毛のある獣や金石も怪異を示す。水の季節には、

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