五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・37 / 49頁

GT-400187・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

今分八卦以配方位者坎離震兌各在當方之辰四維四卦則丑寅屬艮辰巳屬巽未申屬坤戌亥屬乾八卦既通八風八方以調八節之氣

句読本文校了

今分八卦以配方位者、坎離震兌各在當方之辰。四維四卦、則丑寅屬艮、辰巳屬巽、未申屬坤、戌亥屬乾。八卦既通八風八方、以調八節之氣。

訓読校了

今、八卦を分けて以て方位に配するは、坎・離・震・兌、各々當方の辰に在り。四維の四卦は、則ち丑寅は艮に屬し、辰巳は巽に屬し、未申は坤に屬し、戌亥は乾に屬す。八卦既に八風・八方に通じ、以て八節の氣を調ふ。

現代語訳校了

八卦の方位配当では、坎は北方、離は南方、震は東方、兌は西方の辰にある。四隅の四卦では、丑・寅が艮、辰・巳が巽、未・申が坤、戌・亥が乾に属する。八卦は八風と八方に通じ、八節の気を調える。

GT-400188・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

故坎生廣莫風四十五日至艮生條風四十五日至震生明庶風四十五日至巽生清明風四十五日至離生景風四十五日至坤生涼風四十五日至兌生閶闔風四十五日至乾生不周風四十五日又至坎

句読本文校了

故坎生廣莫風、四十五日至艮、生條風、四十五日至震、生明庶風、四十五日至巽、生清明風、四十五日至離、生景風、四十五日至坤、生涼風、四十五日至兌、生閶闔風、四十五日至乾、生不周風、四十五日又至坎。

訓読校了

故に坎は廣莫風を生じ、四十五日にして艮に至り、條風を生じ、四十五日にして震に至り、明庶風を生じ、四十五日にして巽に至り、清明風を生じ、四十五日にして離に至り、景風を生じ、四十五日にして坤に至り、涼風を生じ、四十五日にして兌に至り、閶闔風を生じ、四十五日にして乾に至り、不周風を生じ、四十五日にして又た坎に至る。

現代語訳校了

坎から広莫風が生じ、四十五日で艮に至って条風が生じる。そこから四十五日で震に至って明庶風が生じ、四十五日で巽に至って清明風が生じ、四十五日で離に至って景風が生じ、四十五日で坤に至って涼風が生じ、四十五日で兌に至って閶闔風が生じ、四十五日で乾に至って不周風が生じ、さらに四十五日で再び坎に至る。

GT-400189・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

陽氣生五極九五九四十五故左行四十五日而一變也廣莫風者廣大也莫沙漠也寒氣廣遠自沙漠而來也亦云此時陽氣在下陰莫之廣大也

句読本文校了

陽氣生五、極九、五九四十五、故左行四十五日而一變也。廣莫風者、廣大也、莫沙漠也。寒氣廣遠、自沙漠而來也。亦云、此時陽氣在下、陰莫之廣大也。

訓読校了

陽氣は五に生じ、九に極まる。五九、四十五。故に左行すること四十五日にして一變するなり。廣莫風とは、廣は大なり。莫は沙漠なり。寒氣廣遠にして、沙漠より來るなり。亦た云ふ、此の時、陽氣下に在り、陰之を莫して廣大なり、と。

現代語訳校了

陽気は五で生じ九で極まるので、五九四十五となり、左回りに四十五日ごとに一変する。広莫風の「広」は大、「莫」は砂漠の意で、寒気が遠く広がり砂漠から来る。またこの時は陽気が下にあり、陰がこれを覆って広大になるともいう。

GT-400190・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

條風者條達也此時達生萬物也明庶風者庶衆也此時陽以施惠之德衆物皆明出也清明風者天氣明淨清涼也此時清風吹萬物使盛大明淨可觀也

句読本文校了

條風者、條達也、此時達生萬物也。明庶風者、庶衆也、此時陽以施惠之德、衆物皆明出也。清明風者、天氣明淨清涼也、此時清風吹萬物、使盛大明淨可觀也。

訓読校了

條風とは、條は達なり。此の時、萬物を達生す。明庶風とは、庶は衆なり。此の時、陽、惠を施すの德を以て、衆物皆明らかに出づるなり。清明風とは、天氣明淨清涼なり。此の時、清風萬物を吹き、盛大明淨にして觀る可からしむるなり。

現代語訳校了

条風の条は達する意で、この時万物を伸び生じさせる。明庶風の庶は衆の意で、陽気が恵みの徳を施し万物が明らかに現れる。清明風は天気が明浄で清涼な風で、万物を吹いて盛大かつ明浄にし、見事な姿にする。

GT-400191・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

景風者景高也萬物至此太高也亦言景竟也陽道至此終竟也涼風者秋風涼也此時陰氣淒涼收成萬物也

句読本文校了

景風者、景高也、萬物至此太高也。亦言景竟也、陽道至此終竟也。涼風者、秋風涼也、此時陰氣淒涼、收成萬物也。

訓読校了

景風とは、景は高なり。萬物此に至りて太だ高きなり。亦た景は竟なりと言ふ。陽道、此に至りて終竟するなり。涼風とは、秋風涼しきなり。此の時、陰氣淒涼にして、萬物を收成するなり。

現代語訳校了

景風の景は高の意で、万物がここで大いに高く成長する。また竟、すなわち陽の道がここで終わる意ともいう。涼風は涼しい秋風で、この時は陰気がもの寂しく涼しくなり、万物を収め実らせる。

GT-400192・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

閶闔風者昌盛也此時萬物盛而收藏之也不周風者周遍也萬物備成不周者閉不通也言此時純陰無陽閉塞不通也

句読本文校了

閶闔風者、昌盛也、此時萬物盛而收藏之也。不周風者、周遍也、萬物備成。不周者、閉不通也、言此時純陰無陽、閉塞不通也。

訓読校了

閶闔風とは、昌盛なり。此の時、萬物盛んにして之を收藏するなり。不周風とは、周は遍なり。萬物備はり成る。不周とは、閉ぢて通ぜざるなり。此の時、純陰にして陽無く、閉塞して通ぜざるを言ふなり。

現代語訳校了

閶闔風は昌盛の意で、この時万物が盛んになって収蔵される。不周風の周は遍く行き渡る意で万物が完成する一方、「不周」は閉じて通じないことを表し、純陰で陽がなく閉塞した時節をいう。

GT-400193・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

淮南子曰東北方曰蒼門生條風東方曰開明門生明庶風東南方曰陽門生清明風南方曰暑門生景風西南方曰白門生涼風西方曰閶闔門生閶闔風西北方曰幽都門生不周風北方曰寒門生廣莫風

句読本文校了

淮南子曰、東北方曰蒼門、生條風。東方曰開明門、生明庶風。東南方曰陽門、生清明風。南方曰暑門、生景風。西南方曰白門、生涼風。西方曰閶闔門、生閶闔風。西北方曰幽都門、生不周風。北方曰寒門、生廣莫風。

訓読校了

『淮南子』に曰はく、「東北方を蒼門と曰ひ、條風を生ず。東方を開明門と曰ひ、明庶風を生ず。東南方を陽門と曰ひ、清明風を生ず。南方を暑門と曰ひ、景風を生ず。西南方を白門と曰ひ、涼風を生ず。西方を閶闔門と曰ひ、閶闔風を生ず。西北方を幽都門と曰ひ、不周風を生ず。北方を寒門と曰ひ、廣莫風を生ず」と。

現代語訳校了

『淮南子』は、東北の蒼門から条風、東の開明門から明庶風、東南の陽門から清明風、南の暑門から景風、西南の白門から涼風、西の閶闔門から閶闔風、西北の幽都門から不周風、北の寒門から広莫風が生じるとする。

GT-400194・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

蒼門者東北木將用事春之始故曰蒼門開明門者明陽也日之所出故曰開明門

句読本文校了

蒼門者、東北木將用事、春之始、故曰蒼門。開明門者、明陽也、日之所出、故曰開明門。

訓読校了

蒼門とは、東北に木將に事を用ゐんとし、春の始めなり。故に蒼門と曰ふ。開明門とは、明は陽なり。日は之の出づる所なれば、故に開明門と曰ふ。

現代語訳校了

蒼門は東北で木気がまさに働き始める春の初めなので蒼門という。開明門の「明」は陽を意味し、太陽が出る所なので開明門という。

GT-400195・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

陽門者月建在巳純陽用事故曰陽門暑門者盛衰之時故曰暑門白門者月建在申金氣之始故曰白門閶闔門者八月建在酉萬物將收閶大闔閉收閉之時故曰閶闔門幽都門者幽暗也玄冥將始用事陰聚故幽也故曰幽都門

句読本文校了

陽門者、月建在巳、純陽用事、故曰陽門。暑門者、盛衰之時、故曰暑門。白門者、月建在申、金氣之始、故曰白門。閶闔門者、八月建在酉、萬物將收。閶、大。闔、閉。收閉之時、故曰閶闔門。幽都門者、幽暗也。玄冥將始用事、陰聚故幽也。故曰幽都門。

訓読校了

陽門は月建巳に在り、純陽事を用ゐる故に陽門と曰ふ。暑門は盛衰の時なる故に暑門と曰ふ。白門は月建申に在り、金氣の始めなる故に白門と曰ふ。閶闔門は八月建酉に在り、萬物將に收まらんとし、閶は大、闔は閉、收閉の時なる故に閶闔門と曰ふ。幽都門は幽暗なり。玄冥將に事を用ゐ始め、陰聚りて幽なる故に幽都門と曰ふ。

現代語訳校了

陽門は月建が巳にあり純陽が働くので陽門、暑門は盛衰の時なので暑門、白門は月建が申にあり金気の始まりなので白門という。閶闔門は八月の月建が酉で万物を収める時に当たり、閶は大、闔は閉を意味するので閶闔門という。幽都門は幽暗であり、玄冥が働き始め陰が集まるため幽都門という。

GT-400196・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

寒門者積寒所在故曰寒門此八極之方是八風之所起也呂氏春秋云東方滔風東南動風南方巨風西南淒風西方飄風西北厲風北方寒風東北炎風此意亦同於前太公兵書云坎名大剛風乾名折風兌名小剛風艮名凶風坤名謀風巽名小弱風

句読本文校了

寒門者、積寒所在、故曰寒門。此八極之方、是八風之所起也。呂氏春秋云、東方滔風、東南動風、南方巨風、西南淒風、西方飄風、西北厲風、北方寒風、東北炎風。此意亦同於前。太公兵書云、坎名大剛風、乾名折風、兌名小剛風、艮名凶風、坤名謀風、巽名小弱風。

訓読校了

寒門は積寒の在る所、故に寒門と曰ふ。此の八極の方は八風の起る所なり。呂氏春秋に云はく、東方は滔風、東南は動風、南方は巨風、西南は淒風、西方は飄風、西北は厲風、北方は寒風、東北は炎風と。此の意も亦前に同じ。太公兵書に云はく、坎を大剛風、乾を折風、兌を小剛風、艮を凶風、坤を謀風、巽を小弱風と名づく。

現代語訳校了

寒門は寒さが積もる所なので寒門という。この八方の極は八風が起こる所である。『呂氏春秋』は、東を滔風、東南を動風、南を巨風、西南を淒風、西を飄風、西北を厲風、北を寒風、東北を炎風とし、前説と同じ意味である。『太公兵書』は、坎を大剛風、乾を折風、兌を小剛風、艮を凶風、坤を謀風、巽を小弱風と名づける。

GT-400197・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

震名嬰兒風離名大弱風大剛風者大陰之氣好殺故剛折風者金強能摧折物也小剛風者亦金殺故也凶風者艮在鬼門凶害之所也謀風者坤爲地大陰之本多陰謀也小弱風者巽爲長女故稱弱也嬰兒風者震爲長男愛之故曰兒大弱風者離爲中女

句読本文校了

震名嬰兒風、離名大弱風。大剛風者、大陰之氣好殺、故剛。折風者、金強、能摧折物也。小剛風者、亦金殺故也。凶風者、艮在鬼門、凶害之所也。謀風者、坤爲地、大陰之本、多陰謀也。小弱風者、巽爲長女、故稱弱也。嬰兒風者、震爲長男、愛之、故曰兒。大弱風者、離爲中女。

訓読校了

震を嬰兒風、離を大弱風と名づく。大剛風は大陰の氣、殺を好む故に剛なり。折風は金強くして能く物を摧折す。小剛風も亦金の殺なる故なり。凶風は艮が鬼門に在り、凶害の所なる故なり。謀風は坤が地と爲り、大陰の本にして陰謀多き故なり。小弱風は巽が長女なる故に弱と稱す。嬰兒風は震が長男にして之を愛する故に兒と曰ふ。大弱風は離が中女たり。

現代語訳校了

さらに震を嬰児風、離を大弱風とする。大剛風は大陰の気が殺を好むため剛といい、折風は金の強さが物を砕くためにいう。小剛風も金の殺気による。凶風は艮が鬼門という凶害の場所にあるため、謀風は坤が地で大陰の根本となり陰謀が多いため、小弱風は巽が長女であるため、嬰児風は震が長男として愛されるための名である。大弱風は離が中女であることによる。

GT-400198・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

又弱於長女也大剛小剛客勝大弱小弱主人勝凶有凶害之事謀有謀逆之人折爲將死嬰兒風主人強此竝兵家觀客主盛衰候風所從來也楊泉云春氣臑其風溫以和喜風也夏氣盛其風陽以貞樂風也秋氣勁其風熛以清怒風也冬氣冷其風凝以厲

句読本文校了

又弱於長女也。大剛小剛客勝大弱小弱主人勝凶有凶害之事謀有謀逆之人折爲將死嬰兒風主人強此竝兵家觀客主盛衰候風所從來也。楊泉云、春氣臑其風溫以和喜風也。夏氣盛其風陽以貞樂風也。秋氣勁其風熛以清怒風也。冬氣冷其風凝以厲。

訓読校了

又長女より弱し。大剛・小剛は客勝ち、大弱・小弱は主人勝つ。凶には凶害の事有り、謀には謀逆の人有り、折は將死せんと爲し、嬰兒風は主人強し。此れ竝びに兵家が客主の盛衰を觀、風の從り來る所を候ふものなり。楊泉云はく、春氣は臑にして其の風溫かく以て和し、喜風なり。夏氣は盛んにして其の風陽にして以て貞、樂風なり。秋氣は勁くして其の風熛にして以て清く、怒風なり。冬氣は冷たくして其の風凝りて以て厲し。

現代語訳校了

中女である離は長女の巽よりさらに弱い。大剛・小剛の風なら客軍が勝ち、大弱・小弱なら主人側が勝つ。凶風は凶害、謀風は謀反者、折風は将の死を示し、嬰児風では主人側が強い。これは兵家が客と主の盛衰を観て風の来る方角を占う法である。楊泉は、春気は柔らかく風は温和なので喜風、夏気は盛んで風は陽気かつ堅固なので楽風、秋気は強く風は激しく清らかなので怒風、冬気は冷たく風は凝って厳しいと述べる。

GT-400199・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

哀風也又四維之風隨生成之氣方土異宜各隨所感而風者天之號令治政之象若君有德令則風不搖條清和調暢若政令失則氣怒凶暴飛沙折木此天地報應之理也此皆五行之氣故竝釋焉

句読本文校了

哀風也。又四維之風隨生成之氣方土異宜各隨所感而風者天之號令治政之象若君有德令則風不搖條清和調暢若政令失則氣怒凶暴飛沙折木此天地報應之理也。此皆五行之氣故竝釋焉。

訓読校了

哀風なり。又四維の風は生成の氣に隨ひ、方土の宜しきを異にして各々感ずる所に隨ふ。而して風は天の號令、治政の象なり。若し君に德令有れば、風は條を搖かさず、清和調暢なり。若し政令失すれば、氣怒り凶暴にして、沙を飛ばし木を折る。此れ天地報應の理なり。此れ皆五行の氣なる故に竝びに釋す。

現代語訳校了

その冬の風を哀風という。また四隅の風は生成の気に従い、土地ごとの事情に応じて異なる。風は天の命令であり政治の象徴である。君主に徳ある命令があれば風は枝を揺らさず清らかに調い、政令を誤れば気が怒って荒れ、砂を飛ばし木を折る。これは天地の報応の理であり、いずれも五行の気なので併せて解説した。

GT-400200・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

第十八論情性左傳子產云則天之明天有三光故曰明也因地之性性生也

句読本文校了

第十八論情性。『左傳』子產云:「則天之明。」天有三光、故曰「明」也。「因地之性。」性、生也。

訓読校了

第十八、情性を論ず。『左傳』に子產云はく、「天の明に則る」と。天に三光有る、故に「明」と曰ふなり。「地の性に因る」と。「性」は「生」なり。

現代語訳校了

第十八は情性を論じる。『左伝』で子産は「天の明に則る」と述べる。天には日・月・星の三光があるため「明」という。続く「地の性に因る」も子産の言葉であり、「性」は「生」、すなわち生むことをいう。

GT-400201・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

生萬物故因其所生而用之生其六氣用其五行五行者爲五性也六氣者通六情也翼奉云五行在人爲性六律在人爲情性者仁義禮智信也情者喜怒哀樂好惡也五性處內御陽喻收五藏六情處外御陰喻收六體故情勝性則亂

句読本文校了

生萬物、故因其所生而用之。「生其六氣、用其五行。」五行者、爲五性也。六氣者、通六情也。翼奉云:「五行、在人爲性。六律、在人爲情。性者、仁・義・禮・智・信也。情者、喜・怒・哀・樂・好・惡也。」五性處內、御陽、喻收五藏。六情處外、御陰、喻收六體。故情勝性、則亂。

訓読校了

萬物を生ず。故に其の生ずる所に因りて之を用る。「其の六氣を生じ、其の五行を用る」と。五行は五性と爲る。六氣は六情に通ず。翼奉云はく、「五行、人に在りて性と爲り、六律、人に在りて情と爲る。性は仁・義・禮・智・信なり。情は喜・怒・哀・樂・好・惡なり」と。五性は內に處り陽を御し、五藏を收むるに喻ふ。六情は外に處り陰を御し、六體を收むるに喻ふ。故に情、性に勝てば亂る。

現代語訳校了

地は万物を生むので、その生み出すものに従ってこれを用いる。子産の言葉はさらに「その六気を生じ、その五行を用いる」と続く。五行は人の五性となり、六気は六情に通じる。翼奉は、五行は人では性、六律は人では情となるという。五性は仁・義・礼・智・信、六情は喜・怒・哀・楽・好・悪である。五性は内にあって陽を制御し五臓を統べ、六情は外にあって陰を制御し六体を統べる。したがって情が性に勝つと乱れる。

GT-400202・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

性勝情則治性自內出情從外來情性之交閒不容系說文曰情人之陰氣有欲嗜也性人之陽氣善者也孝經援神契云性者人之質人所稟受產情者陰之數內傳著流通於五藏故性爲本情爲末性主安靜恬然守常情則主動觸境而變動靜相交

句読本文校了

性勝情則治性自內出情從外來情性之交閒不容系說文曰、情人之陰氣有欲嗜也。性人之陽氣善者也。孝經援神契云、性者人之質人所稟受產情者陰之數內傳著流通於五藏故性爲本情爲末性主安靜恬然守常情則主動觸境而變動靜相交。

訓読校了

性、情に勝てば治まる。性は內より出で、情は外より來る。情性の交はる閒、系を容れず。說文に曰はく、情は人の陰氣にして欲嗜有り。性は人の陽氣にして善なる者なり。孝經援神契に云はく、性は人の質、人の稟受する所より產ず。情は陰の數、內に傳はり著はれ流れて、五藏に通ず。故に性を本とし情を末とす。性は安靜を主り、恬然として常を守る。情は則ち動を主り、境に觸れて變ず。動靜相交はる。

現代語訳校了

性が情に勝てば治まる。性は内から出て情は外から来るため、両者が交わる間には糸一本も入らない。『説文』は、情を欲求・嗜好をもつ人の陰気、性を善なる人の陽気とする。『孝経援神契』は、性を人が受けた本質から生じるもの、情を陰の数が内に伝わって現れ五臓へ通じるものとする。ゆえに性が本、情が末である。性は静かに常を守り、情は動いて対象に触れると変化し、動と静が交わる。

GT-400203・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

故閒微密也河上公章句云五性之鬼曰魂爲雄六情之鬼曰魄爲雌此明性陽情陰也六情既通六氣今先依服注左傳云六氣者陰陽風雨晦明也陰作土陽與風作木雨作金晦作水明作火唯天陽不變陰爲土者土是陰義故陰凝爲土風作木者風動也

句読本文校了

故閒微密也。河上公章句云、五性之鬼曰、魂爲雄六情之鬼曰、魄爲雌此明性陽情陰也。六情既通六氣今先依服注左傳云、六氣者陰陽風雨晦明也。陰作土陽與風作木雨作金晦作水明作火唯天陽不變陰爲土者土是陰義故陰凝爲土風作木者風動也。

訓読校了

故に閒は微密なり。河上公章句に云はく、五性の鬼を魂と曰ひ雄と爲し、六情の鬼を魄と曰ひ雌と爲す。此れ性は陽、情は陰なるを明かす。六情既に六氣に通ず。今先づ服注の左傳に依れば、六氣は陰・陽・風・雨・晦・明なり。陰は土と作り、陽と風とは木と作り、雨は金と作り、晦は水と作り、明は火と作る。唯だ天の陽は變ぜず。陰を土と爲すは、土は是れ陰の義、故に陰凝りて土と爲る。風を木と作すは、風は動なり。

現代語訳校了

そのため両者の間は微細で緊密である。河上公章句では、五性の霊を魂と呼んで雄、六情の霊を魄と呼んで雌とし、性が陽で情が陰であることを示す。六情は六気に通じるので、まず服虔の『左伝』注に従うと、六気は陰・陽・風・雨・晦・明である。陰は土、陽と風は木、雨は金、晦は水、明は火となり、ただ天の陽だけは変わらない。陰を土とするのは土が陰の意味で、陰が凝結して土になるからである。風を木とするのは風が動くからである。

GT-400204・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

木亦動觸地而出箕星東方之宿主風又巽爲木爲風也雨作金者雨水也水性銷釋金性亦可銷釋畢星西方之宿也主雨故詩云月離于畢俾滂沲矣故雨作金也晦作水者晦闇也晦闇則水生闇黑爲水之色也明作火者明照於物故爲火也

句読本文校了

木亦動觸地而出箕星東方之宿主風又巽爲木爲風也。雨作金者雨水也。水性銷釋金性亦可銷釋畢星西方之宿也。主雨故詩云、月離于畢俾滂沲矣。故雨作金也。晦作水者晦闇也。晦闇則水生闇黑爲水之色也。明作火者明照於物故爲火也。

訓読校了

木も亦動き、地に觸れて出づ。箕星は東方の宿にして風を主り、又巽は木と爲り風と爲る。雨を金と作すは、雨は水なり。水の性は銷釋し、金の性も亦銷釋すべし。畢星は西方の宿にして雨を主る。故に詩に云はく、月、畢に離り、滂沲たらしむと。故に雨は金と作る。晦を水と作すは、晦は闇なり。晦闇ならば水生じ、闇黑は水の色なり。明を火と作すは、明は物を照らす故に火と爲す。

現代語訳校了

木も動いて地を突き破って出る。箕星は東方の宿で風をつかさどり、巽も木であり風である。雨を金に配するのは、雨が水であり、水は物を溶かし、金もまた溶けうるものだからである。西方の宿の畢星が雨をつかさどり、『詩経』にも月が畢にかかって大雨を降らせるとあるので雨を金とする。晦は暗闇で、暗ければ水が生じ、黒は水の色なので水とする。明は物を照らすので火とする。

GT-400205・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

皆從其類以之鄭玄注禮記云木爲雨金爲陽火爲燠土爲風水爲寒震主春分春分穀雨得天兌則萬物畢生兌西方之卦是時日在昴昴西方之宿也以日在西方故謂天兌貌順木得則天兌爲和故木爲雨詩云習習谷風以陰以雨也金爲陽者

句読本文校了

皆從其類以之鄭玄注禮記云、木爲雨金爲陽火爲燠土爲風水爲寒震主春分春分穀雨得天兌則萬物畢生兌西方之卦是時日在昴昴西方之宿也。以日在西方故謂天兌貌順木得則天兌爲和故木爲雨詩云、習習谷風以陰以雨也。金爲陽者。

訓読校了

皆其の類に從ひて之を以てす。鄭玄の禮記注に云はく、木を雨、金を陽、火を燠、土を風、水を寒と爲す。震は春分を主り、春分・穀雨は天の兌を得て、則ち萬物畢く生ず。兌は西方の卦、是の時、日は昴に在り、昴は西方の宿なり。日が西方に在るを以て故に天兌と謂ふ。貌順ひ木得れば、則ち天兌和を爲す。故に木を雨と爲す。詩に云はく、習習たる谷風、以て陰り以て雨ふと。金を陽と爲すは、

現代語訳校了

これらはすべて類似する性質に従う。鄭玄の『礼記』注は、木を雨、金を陽、火を暖気、土を風、水を寒さに配する。震は春分をつかさどり、春分・穀雨に天の兌を得ると万物が生えそろう。兌は西方の卦で、その時の太陽は西方の宿である昴にあるため天兌と呼ぶ。容貌が順い木の徳が得られると天兌が調和するため木を雨とする。『詩経』の「そよそよ吹く東風が曇りと雨をもたらす」という句も引く。次に金を陽とする理由を説く。

GT-400206・巻4
本文 校了
原文翻刻校了

秋時日行東方房星之宿得天震之氣言順金得則天震爲和震爲陽也秋時物成所以𤍜物是其和也逆金氣則爲旱罰故金爲陽也土爲風者傳云思心有失厥罰常風言風者土之氣也莊子曰大塊噫氣其名曰風土者爲君君立教令故爲風土立四季

句読本文校了

秋時日行東方房星之宿得天震之氣言順金得則天震爲和震爲陽也。秋時物成所以𤍜物是其和也。逆金氣則爲旱罰故金爲陽也。土爲風者傳云、思心有失厥罰常風言風者土之氣也。莊子曰、大塊噫氣其名曰、風土者爲君君立教令故爲風土立四季。

訓読校了

秋時、日東方の房星の宿を行き、天震の氣を得。金に順ひ得れば天震和と爲ると言ひ、震は陽なり。秋時物成り、物を𤍜く所以、是れ其の和なり。金氣に逆らへば旱罰と爲る故に金を陽と爲す。土を風と爲すは、傳に云はく、思心失有れば、厥の罰常風と。風は土の氣なりと言ふ。莊子に曰はく、大塊氣を噫し、其の名を風と曰ふ。土は君と爲り、君は教令を立つる故に風と爲す。土は四季に立つ。

現代語訳校了

秋には太陽が東方の房星の宿を進み、天の震の気を得る。金に順えば天震が調和し、震は陽である。秋に物が成熟し物を乾かすのはその調和であり、金気に逆らえば旱魃の罰となるので金を陽とする。土を風に配するのは、伝に「思慮を誤れば罰として常風が起こる」とあり、風が土の気だからである。『荘子』にも大地が気を吐き、それを風と呼ぶとある。土は君主に当たり、君主が命令を立てるので風とし、土は四季すべてに立つ。

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