五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・25 / 49頁

GT-300072・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

道家以肺應口者肺金也金能斷割口有牙齒亦能決斷是金象也管子之意恐亦然也甲乙以舌應心道家以舌應脾管子以心應下竅甲乙以舌應心者凡資身養命莫過五味辨了識知莫過乎心五味之入猶舌知之萬事是非猶心鑒之心欲有所陳舌必言之故心應以舌

句読本文校了

道家以肺應口者,肺金也。金能斷割,口有牙齒,亦能決斷,是金象也。『管子』之意,恐亦然也。『甲乙』以舌應心,道家以舌應脾,『管子』以心應下竅。『甲乙』以舌應心者,凡資身養命,莫過五味;辨了識知,莫過乎心。五味之入,猶舌知之;萬事是非,猶心鑒之。心欲有所陳,舌必言之,故心應以舌。

訓読校了

道家の肺を以て口に応ずるは、肺は金なればなり。金は能く断割し、口には牙歯有りて、また能く決断す。是れ金の象なり。『管子』の意も、恐らくまた然らん。『甲乙経』は舌を以て心に応じ、道家は舌を以て脾に応じ、『管子』は心を以て下竅に応ず。『甲乙経』の舌を以て心に応ずるは、凡そ身を資け命を養うは、五味に過ぐるは莫く、弁了し識知するは、心に過ぐるは莫ければなり。五味の入るは、猶お舌のこれを知るがごとく、万事の是非は、猶お心のこれを鑑るがごとし。心、陳ぶる所有らんと欲すれば、舌必ずこれを言う、故に心は舌を以て応ず。

現代語訳校了

道家が口を肺に配するのは、肺が金だからである。金は物を断ち切ることができ、口にも歯があって物を噛み切れるので、口は金の象である。『管子』の意図も、おそらく同じである。これに対して、『甲乙経』は舌を心に、道家は舌を脾に配し、『管子』は心を下の孔に配する。『甲乙経』が舌を心に配するのは、身体を支えて生命を養うものとして五味以上のものはなく、物事を明らかに弁別して知る働きとして心以上のものはないからである。五味が入ると舌がそれを知るように、万事の是非は心がそれを見定める。心が何かを述べようとすれば、舌が必ずそれを言葉にするため、心は舌に応じる。

GT-300073・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

道家以舌應脾者脾者陰也老子經云地飴人以五味從口入藏於胃舌之所納則有津實地體既是質實品味皆地所產故舌與地通也管子心應下竅者以心能分别善惡故通下竅除滓穢也五藏候在五官口舌二官共在一處餘不共者口是脾候脾土也

句読本文校了

道家以舌應脾者,脾者陰也。『老子經』云:『地飴人以五味,從口入,藏於胃。』舌之所納,則有津實;地體既是質實,品味皆地所產,故舌與地通也。『管子』心應下竅者,以心能分别善惡,故通下竅,除滓穢也。五藏候在五官。口舌二官共在一處,餘不共者,口是脾候,脾土也。

訓読校了

道家の舌を以て脾に應ずるは、脾は陰なればなり。『老子經』に云ふ、『地は人を飴ふに五味を以てし、口より入り、胃に藏す』と。舌の納るる所は、則ち津有りて實なり。地の體は既に是れ質實にして、品味は皆、地の產する所なり。故に舌は地と通ずるなり。『管子』の心の下竅に應ずるは、心は能く善惡を分别するを以て、故に下竅に通じ、滓穢を除くなり。五藏の候は五官に在り。口・舌の二官は共に一處に在り、餘の共ならざるは、口は是れ脾の候、脾は土なり。

現代語訳校了

道家が舌を脾に対応させるのは、脾が陰だからである。『老子経』は、大地が五味によって人を養い、五味は口から入って胃に収められるという。舌が受け入れるものには津液と実質があり、大地の本体も質実で、さまざまな味はすべて大地が産出するため、舌は地に通じる。『管子』が心を下の孔に対応させるのは、心が善悪を分別できることになぞらえ、下の孔が滓や汚物を除くからである。五臓の徴候は五官に現れる。口と舌の二官は同じ場所にあるが、その他は同じ場所にない。このうち口は脾の徴候であり、脾は土に属する。この同居の理由は、次の区分の舌・心・火の説明へ続く。

GT-300074・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

舌是心候心火也共處者土寄治於火鄕也舌在口內者火於五行不常見也須之則有不用則隱如舌在口內開口卽見閉口則藏又心爲身之主貴故在內也土王四季故曰四合也甲乙素問是診候之書故從行實而辨道經管子各以一家之趣六府者河圖云肺合大腸大腸爲傳道之

句読本文校了

舌是心候,心火也。共處者,土寄治於火鄕也。舌在口內者,火於五行不常見也;須之則有,不用則隱。如舌在口內,開口卽見,閉口則藏。又心爲身之主,貴,故在內也。土王四季,故曰四合也。『甲乙』『素問』是診候之書,故從行實而辨;『道經』『管子』各以一家之趣。六府者,『河圖』云:「肺合大腸,大腸爲傳道之

訓読校了

舌は是れ心の候、心は火なり。共に処るは、土は火郷に寄治すればなり。舌の口内に在るは、火は五行に於いて常には見えざればなり。これを須むれば則ち有り、用いざれば則ち隠る。舌の口内に在り、口を開けば即ち見え、口を閉ずれば則ち蔵るが如し。また心は身の主となり、貴し、故に内に在るなり。土は四季に王す、故に四合と曰うなり。『甲乙経』『素問』は是れ診候の書、故に行実に従いて弁ず。『道経』『管子』は各々一家の趣を以てす。六府は、『河図』に云う、「肺は大腸に合し、大腸は伝道の」とあり、次文の「府」に続く。

現代語訳校了

舌は心の徴候であり、心は火に属する。口と舌が同じ場所にあるのは、土が火の領域に身を寄せて働くためである。舌が口の内側にあるのは、火が五行の中で常には見えないからである。必要とすると現れ、用いなければ隠れるのは、舌が口内にあって口を開けばすぐ見え、口を閉じれば隠れることに似る。また、心は身体の主で尊いので、内側にある。土は四季それぞれで旺盛になるため「四合」という。『甲乙経』と『素問』は診断と病候を扱う書なので、実際の作用に従って弁別するが、『道経』と『管子』はそれぞれ一学派の趣旨に従っている。六腑について『河図』は、「肺は大腸と合し、大腸は伝道の――」といい、末尾の句は次のレコードの「腑である」へ続く。

GT-300075・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

府心合小腸小腸爲受盛之府肝合膽膽爲中精之府脾合胃胃爲五穀之府腎合膀胱膀胱爲津液之府三焦孤立爲中瀆之府甲乙素問說同大腸爲傳道之府者肺通於鼻鼻出入氣大腸傳道五穀氣之道故爲其府小腸爲受盛之府者心通於舌舌進五味小腸納之故爲受盛之府也

句読本文校了

府;心合小腸,小腸爲受盛之府;肝合膽,膽爲中精之府;脾合胃,胃爲五穀之府;腎合膀胱,膀胱爲津液之府;三焦孤立,爲中瀆之府。」『甲乙』『素問』說同。大腸爲傳道之府者,肺通於鼻,鼻出入氣,大腸傳道五穀氣之道,故爲其府。小腸爲受盛之府者,心通於舌,舌進五味,小腸納之,故爲受盛之府也。

訓読校了

府となる。心は小腸に合し、小腸は受盛の府となる。肝は胆に合し、胆は中精の府となる。脾は胃に合し、胃は五穀の府となる。腎は膀胱に合し、膀胱は津液の府となる。三焦は孤立し、中瀆の府となる」と。『甲乙経』『素問』の説も同じ。大腸を伝道の府となすは、肺は鼻に通じ、鼻は気を出入し、大腸は五穀の気の道を伝道す、故にその府となす。小腸を受盛の府となすは、心は舌に通じ、舌は五味を進め、小腸これを納る、故に受盛の府となすなり。

現代語訳校了

前のレコードから続いて、大腸は「伝道の腑」である。心は小腸と合し、小腸は受盛の腑である。肝は胆と合し、胆は中精の腑である。脾は胃と合し、胃は五穀の腑である。腎は膀胱と合し、膀胱は津液の腑である。三焦は単独で立ち、中瀆の腑である。『甲乙経』と『素問』の説も同じである。大腸を伝道の腑とするのは、肺が鼻に通じ、鼻が気を出入りさせ、大腸が五穀の気を伝え運ぶ道となるため、肺に対応する腑とするのである。小腸を受盛の腑とするのは、心が舌に通じ、舌が五味を取り入れ、小腸がそれを受け入れて納めるためである。

GT-300076・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

膽爲中精府者肝通於目目是精明之物又精神之主故曰爲中精府也胃爲五穀府者脾通於口口入五穀而胃受之故爲其府膀胱爲津液之府者腎是水藏膀胱空虚受水水清氣則爲津液濁氣則爲涕唾故以爲其府

句読本文校了

膽爲中精府者,肝通於目,目是精明之物,又精神之主,故曰爲中精府也。胃爲五穀府者,脾通於口,口入五穀而胃受之,故爲其府。膀胱爲津液之府者,腎是水藏,膀胱空虚受水,水清氣則爲津液,濁氣則爲涕唾,故以爲其府。

訓読校了

胆を中精の府となすは、肝は目に通じ、目は是れ精明の物、また精神の主なり、故に中精の府となすと曰うなり。胃を五穀の府となすは、脾は口に通じ、口より五穀入りて胃これを受く、故にその府となす。膀胱を津液の府となすは、腎は是れ水蔵、膀胱は空虚にして水を受け、水の清気は則ち津液となり、濁気は則ち涕唾となる、故に以てその府となす。

現代語訳校了

胆を中精の腑とするのは、肝が目に通じ、目が精妙で明らかな器官であり、また精神をつかさどるものなので、中精の腑というからである。胃を五穀の腑とするのは、脾が口に通じ、五穀が口から入ると胃がそれを受け入れるため、脾に対応する腑とするのである。膀胱を津液の腑とするのは、腎が水の臓であり、膀胱は中が空虚で水を受け、水の清い気は津液となり、濁った気は鼻水や唾となるため、腎に対応する腑とするのである。

GT-300077・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

三焦爲中瀆府者五藏各合一府三焦獨無所合故曰孤立處五藏之中通上下行氣故爲中瀆府也五藏而有六府亦如六氣因五行生也又如五性生六情也素問云皮應大腸其榮毛主心脈應小腸其榮色主腎筋應膽其榮爪主肺肉應胃其榮唇主肝腠理毫毛應三焦膀胱其榮髪主脾

句読本文校了

三焦爲中瀆府者,五藏各合一府,三焦獨無所合,故曰孤立。處五藏之中,通上下,行氣,故爲中瀆府也。五藏而有六府,亦如六氣因五行生也,又如五性生六情也。『素問』云:「皮應大腸,其榮毛,主心;脈應小腸,其榮色,主腎;筋應膽,其榮爪,主肺;肉應胃,其榮唇,主肝;腠理毫毛應三焦膀胱,其榮髪,主脾。」

訓読校了

三焦を中瀆の府となすは、五蔵は各々一府に合するも、三焦は独り合する所無し、故に孤立と曰う。五蔵の中に処り、上下に通じ、気を行らす、故に中瀆の府となすなり。五蔵にして六府有るは、また六気の五行に因りて生ずるが如く、また五性の六情を生ずるが如し。『素問』に云う、「皮は大腸に応じ、その栄は毛にあり、心主る。脈は小腸に応じ、その栄は色にあり、腎主る。筋は胆に応じ、その栄は爪にあり、肺主る。肉は胃に応じ、その栄は唇にあり、肝主る。腠理・毫毛は三焦・膀胱に応じ、その栄は髪にあり、脾主る」と。

現代語訳校了

三焦を中瀆の腑とするのは、五臓がそれぞれ一つの腑と合するのに、三焦だけは合する臓がないため「孤立」というからである。三焦は五臓の中に位置し、上と下を通じさせ、気を巡らせるので、中瀆の腑とする。五臓に対して六腑があることは、五行から六気が生じること、また五性から六情が生じることに似る。『素問』は、皮膚は大腸に応じ、その栄えは毛に現れ、心がつかさどる、脈は小腸に応じ、その栄えは顔色に現れ、腎がつかさどる、筋は胆に応じ、その栄えは爪に現れ、肺がつかさどる、肉は胃に応じ、その栄えは唇に現れ、肝がつかさどる、腠理と細毛は三焦・膀胱に応じ、その栄えは髪に現れ、脾がつかさどる、と説く。

GT-300078・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

皮應大腸其榮毛主心者心是身之君皮是身之城郭毛是身之羽衞大腸是氣之道路也故竝相通心是火藏大腸是金府故以配焉丙辛之所主也脈應小腸其榮色主腎者腎水也脈是血之溝渠通流水氣色是人之光采

句読本文校了

皮應大腸,其榮毛,主心者,心是身之君,皮是身之城郭,毛是身之羽衞,大腸是氣之道路也,故竝相通。心是火藏,大腸是金府,故以配焉,丙辛之所主也。脈應小腸,其榮色,主腎者,腎水也。脈是血之溝渠,通流水。氣色是人之光采。

訓読校了

皮は大腸に応じ、その栄は毛にあり、心主るとは、心は是れ身の君、皮は是れ身の城郭、毛は是れ身の羽衛、大腸は是れ気の道路なり、故に並びに相通ず。心は是れ火蔵、大腸は是れ金府、故に以てこれを配す。丙辛の主る所なり。脈は小腸に応じ、その栄は色にあり、腎主るとは、腎は水なり。脈は是れ血の溝渠にして、水を通流す。気色は是れ人の光采なり。

現代語訳校了

皮膚が大腸に応じ、その栄えが毛に現れ、心がつかさどるというのは、心が身体の君主、皮膚が身体の城郭、毛が身体を翼のように守るもの、大腸が気の通る道であり、これらがすべて互いに通じるからである。心は火の臓、大腸は金の腑なので両者を配する。これは丙と辛がつかさどる配当である。脈が小腸に応じ、その栄えが顔色に現れ、腎がつかさどるというのは、腎が水に属するためである。脈は血の水路であって水の気を通し流し、気色は人の光彩である。この血気と顔色の説明は次のレコードへ続く。

GT-300079・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

血氣若盛則容色壯悅血氣若衰則容顏枯悴腎爲水藏小腸既受盛容著水氣又是火府故以配之丁壬所主也筋應膽其榮爪主肺者筋是皮內之剛強也爪是皮外之剛利也肺是金藏膽有剛精之性又是木府故以相配乙庚所主也

句読本文校了

血氣若盛,則容色壯悅;血氣若衰,則容顏枯悴。腎爲水藏,小腸既受盛,容著水氣,又是火府,故以配之,丁壬所主也。筋應膽,其榮爪,主肺者,筋是皮內之剛強也,爪是皮外之剛利也。肺是金藏,膽有剛精之性,又是木府,故以相配,乙庚所主也。

訓読校了

血気もし盛んなれば、則ち容色壮悦し、血気もし衰うれば、則ち容顔枯悴す。腎は水蔵となり、小腸は既に受盛して、水気を容著し、また是れ火府なり、故に以てこれを配す。丁壬の主る所なり。筋は胆に応じ、その栄は爪にあり、肺主るとは、筋は是れ皮内の剛強、爪は是れ皮外の剛利なればなり。肺は是れ金蔵、胆は剛精の性有り、また是れ木府なり、故に以て相配す。乙庚の主る所なり。

現代語訳校了

血気が盛んであれば顔色は力強く晴れやかになり、血気が衰えれば顔貌は枯れてやつれる。腎は水の臓であり、小腸は受盛の働きによって水の気を受け入れて置く一方、火の腑でもあるため、腎と小腸を配する。これは丁と壬がつかさどる配当である。筋が胆に応じ、その栄えが爪に現れ、肺がつかさどるというのは、筋が皮膚の内側にある強く固いもの、爪が皮膚の外側にある硬く鋭いものだからである。肺は金の臓であり、胆には強く精鋭な性質があり、また胆は木の腑でもあるため、肺と胆を配する。これは乙と庚がつかさどる配当である。

GT-300080・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

肉應胃其榮唇主肝者胃能消化五穀精氣爲肉五穀從口而入故榮潤在唇肝是木之藏仁而能生胃是土府故以相配甲己所主也

句読本文校了

肉應胃,其榮唇,主肝者,胃能消化五穀,精氣爲肉。五穀從口而入,故榮潤在唇。肝是木之藏,仁而能生;胃是土府,故以相配,甲己所主也。

訓読校了

肉は胃に応じ、その栄は唇にあり、肝主るとは、胃は能く五穀を消化し、精気は肉となる。五穀は口より入り、故に栄潤は唇に在り。肝は是れ木の蔵、仁にして能く生ず。胃は是れ土府、故に以て相配す。甲己の主る所なり。

現代語訳校了

肉が胃に応じ、その栄えが唇に現れ、肝がつかさどるというのは、胃が五穀を消化し、その精気が肉となるからである。五穀は口から入るため、栄養による潤いは唇に現れる。肝は木の臓であり、仁の性質を備えて物を生じさせることができる。胃は土の腑であるため、肝と胃を配する。これは甲と己がつかさどる配当である。

GT-300081・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

腠理毫毛應三焦膀胱其榮髪主脾者毫毛因藉津潤腠理本自開通脾受資味之所因資味而得津潤開通因津潤開通而生毛髮書云髮是血之餘脾是土之藏三焦膀胱竝爲水之府故以相配戊癸所主也

句読本文校了

腠理毫毛應三焦膀胱,其榮髪,主脾者,毫毛因藉津潤,腠理本自開通。脾受資味之所,因資味而得津潤開通,因津潤開通而生毛髮。書云:「髮是血之餘。」脾是土之藏,三焦膀胱竝爲水之府,故以相配,戊癸所主也。

訓読校了

腠理・毫毛は三焦・膀胱に応じ、その栄は髪にあり、脾主るとは、毫毛は津潤を藉るに因り、腠理は本より自ら開通すればなり。脾は資味を受くる所、資味に因りて津潤・開通を得、津潤・開通に因りて毛髪を生ず。書に云う、「髪は是れ血の余なり」と。脾は是れ土の蔵、三焦・膀胱は並びに水の府となる、故に以て相配す。戊癸の主る所なり。

現代語訳校了

腠理と細毛が三焦・膀胱に応じ、その栄えが髪に現れ、脾がつかさどるというのは、細毛が津液の潤いを頼りとし、腠理がもともと開いて通じているからである。脾は食物の味から養分を受ける所であり、その養分によって潤いと開通を得て、その潤いと開通によって毛髪が生じる。書には「髪は血の余りである」とある。脾は土の臓で、三焦と膀胱はともに水の腑なので、これらを互いに配する。これは戊と癸がつかさどる配当である。

GT-300082・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

脾配二府餘四藏各配一府者脾是土藏土爲君道君卽陽也陽數一故藏不二也三焦膀胱竝是水府水爲臣道臣卽陰也陰數偶故府有二也

句読本文校了

脾配二府,餘四藏各配一府者,脾是土藏,土爲君道,君卽陽也。陽數一,故藏不二也。三焦膀胱竝是水府,水爲臣道,臣卽陰也。陰數偶,故府有二也。

訓読校了

脾に二府を配し、余の四蔵には各々一府を配するは、脾は是れ土蔵、土は君道となり、君は即ち陽なればなり。陽数は一、故に蔵は二ならず。三焦・膀胱は並びに是れ水府、水は臣道となり、臣は即ち陰なり。陰数は偶、故に府に二有り。

現代語訳校了

脾に二つの腑を配し、残る四臓にそれぞれ一つの腑を配するのは、脾が土の臓であり、土が君主の道に当たり、君主が陽だからである。陽の数は一なので、臓は二つにならない。三焦と膀胱はともに水の腑であり、水は臣下の道に当たり、臣下は陰である。陰の数は偶数なので、水の腑は三焦と膀胱の二つある。

GT-300083・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

管子曰脾生骨腎生筋肺生革心生肉肝生爪髮元命苞云肝生筋脾生骨者脾土也土能生木骨是身之本如木立於地上能成屋室故脾生之腎生筋者筋是骨之經絡脈以流注筋以相連節竝通血氣腎水故生之肺生革者肺金也金能裁斷革亦限斷故肺生之心生肉者心火也肉是身之土地故心生之

句読本文校了

『管子』曰:『脾生骨,腎生筋,肺生革,心生肉,肝生爪髮。』『元命苞』云:『肝生筋。』脾生骨者,脾土也。土能生木,骨是身之本,如木立於地上,能成屋室,故脾生之。腎生筋者,筋是骨之經絡。脈以流注,筋以相連節,竝通血氣。腎水,故生之。肺生革者,肺金也。金能裁斷,革亦限斷,故肺生之。心生肉者,心火也。肉是身之土地,故心生之。

訓読校了

『管子』に曰く、『脾は骨を生じ、腎は筋を生じ、肺は革を生じ、心は肉を生じ、肝は爪髮を生ず』と。『元命苞』に云ふ、『肝は筋を生ず』と。脾の骨を生ずるは、脾は土なればなり。土は能く木を生じ、骨は是れ身の本にして、木の地上に立ち、能く屋室を成すが如し。故に脾、之を生ず。腎の筋を生ずるは、筋は是れ骨の經絡なればなり。脈は以て流注し、筋は以て節を相連ね、竝びに血氣を通ず。腎は水なり、故に之を生ず。肺の革を生ずるは、肺は金なればなり。金は能く裁斷し、革も亦た限斷す。故に肺、之を生ず。心の肉を生ずるは、心は火なればなり。肉は是れ身の土地、故に心、之を生ず。

現代語訳校了

『管子』は、脾は骨を生じ、腎は筋を生じ、肺は皮を生じ、心は肉を生じ、肝は爪と髪を生じるという。『元命苞』は、肝は筋を生じるという。脾が骨を生じるのは、脾が土だからである。土は木を生じ、骨は身体の根本であって、木が地上に立って家屋を形づくることに似るため、脾が骨を生じる。腎が筋を生じるのは、筋が骨を結ぶ経絡だからである。脈は血気を流し注ぎ、筋は関節をつなぎ、両者とも血気を通わせる。腎は水に属するので筋を生じる。肺が皮を生じるのは、肺が金だからである。金は物を裁ち断ち、皮も身体の境界を区切るため、肺が皮を生じる。心が肉を生じるのは、心が火だからである。肉は身体の土地に当たるため、心が肉を生じる。引用中の肝が爪と髪を生じる理由は、次の区分へ続く。

GT-300084・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

肝生爪髮者肝木也爪是骨之餘髮是血之餘皆水木之氣故肝生之元命苞云以肝生筋亦木氣之義筋有枝條象於木也河圖云仁慈惠施者肝之精悲哀過度則傷肝肝傷則令目視芒芒禮操列真心之精喜怒激切傷心心傷則疾衂吐逆

句読本文校了

肝生爪髮者,肝木也。爪是骨之餘,髮是血之餘,皆水木之氣,故肝生之。『元命苞』云,以肝生筋,亦木氣之義。筋有枝條,象於木也。『河圖』云,仁慈惠施者,肝之精;悲哀過度,則傷肝;肝傷,則令目視芒芒。禮操列真,心之精;喜怒激切,傷心;心傷,則疾衂吐逆。

訓読校了

肝の爪髮を生ずるは、肝は木なればなり。爪は是れ骨の餘、髮は是れ血の餘にして、皆水木の氣なり。故に肝これを生ず。『元命苞』に云ふ、肝を以て筋を生ずるも、亦た木氣の義なり。筋に枝條有りて、木に象るなり。『河圖』に云ふ、仁慈にして惠施するは肝の精なり。悲哀度を過ぐれば、則ち肝を傷る。肝傷るれば、則ち目をして視ること芒芒たらしむ。禮を操り真を列するは、心の精なり。喜怒激切すれば、心を傷る。心傷るれば、則ち衂・吐逆を疾む。

現代語訳校了

肝が爪と髪を生じるのは、肝が木に属するからである。爪は骨の余り、髪は血の余りで、いずれも水と木の気に属するため、肝がこれらを生じる。『元命苞』が肝によって筋が生じるというのも、木の気による説明である。筋には枝分かれがあり、木に似ている。『河図』によれば、慈しんで恵みを施すことは肝の精である。悲哀が度を越すと肝を傷つけ、肝が傷つくと視界がぼんやりする。礼を行い真を明らかにすることは心の精である。喜怒が激しく切迫すると心を傷つけ、心が傷つくと鼻血や嘔吐を患う。

GT-300085・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

和厚篤信者脾之精縱逸貪嗜則傷脾脾傷則畜積不化致否結之疾義惠剛斷肺之精患憂憤勃則傷肺肺傷則致欬逆失音智辨謀略腎之精勞欲憤滿則傷腎腎傷則喪精損命此豈直違五常而損年命亦破六情以亡國家也

句読本文校了

和厚篤信者,脾之精。縱逸貪嗜,則傷脾;脾傷,則畜積不化,致否結之疾。義惠剛斷,肺之精。患憂憤勃,則傷肺;肺傷,則致欬逆失音。智辨謀略,腎之精。勞欲憤滿,則傷腎;腎傷,則喪精損命。此豈直違五常而損年命,亦破六情以亡國家也。

訓読校了

和厚にして篤信なるは、脾の精なり。縱逸して貪嗜すれば、則ち脾を傷る。脾傷るれば、則ち畜積して化せず、否結の疾を致す。義惠にして剛斷なるは、肺の精なり。患憂して憤勃すれば、則ち肺を傷る。肺傷るれば、則ち欬逆・失音を致す。智辨・謀略は、腎の精なり。勞欲し憤滿すれば、則ち腎を傷る。腎傷るれば、則ち精を喪ひ命を損ず。此れ豈に直だ五常に違ひて年命を損ずるのみならんや、亦た六情を破りて國家を亡ぼすなり。

現代語訳校了

温和で厚く、篤く信を守ることは脾の精である。放縦になって欲するものを貪ると脾を傷つけ、脾が傷つくと飲食物がたまって消化されず、閉塞する病を招く。義と恵みを備えて剛毅に決断することは肺の精である。思い患い憂えて憤激すると肺を傷つけ、肺が傷つくと咳き込みや失声を招く。知恵による弁別と計略は腎の精である。欲のために疲労し憤りが満ちると腎を傷つけ、腎が傷つくと精を失って命を損なう。これは五常に背いて寿命を損なうだけでなく、六情を乱して国家を滅ぼすことにもなる。

GT-300086・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

至如桀紂兩帝竝貪縱而喪厥邦梁竇二臣亦皆奢逸而傾其家雖彭子以色延命齊王因怒袪病如此異轍皆有調節之宜節之則四大獲安縱之則五藏成患素問云肝者爲將軍之官謀慮出焉心者爲君主之官神明出焉脾者倉廩之官五味出焉肺者相傳之官治節出焉腎者作強之官伎巧出焉

句読本文校了

至如桀紂兩帝,竝貪縱而喪厥邦;梁竇二臣,亦皆奢逸而傾其家。雖彭子以色延命,齊王因怒袪病,如此異轍,皆有調節之宜。節之,則四大獲安;縱之,則五藏成患。『素問』云,肝者,爲將軍之官,謀慮出焉;心者,爲君主之官,神明出焉;脾者,倉廩之官,五味出焉;肺者,相傳之官,治節出焉;腎者,作強之官,伎巧出焉。

訓読校了

桀紂の兩帝の如きに至りては、竝びに貪縱にして厥の邦を喪ひ、梁竇の二臣も、亦た皆奢逸にして其の家を傾けたり。彭子は色を以て命を延べ、齊王は怒りに因りて病を袪ふと雖も、此くの如き異轍、皆調節の宜有り。之を節すれば、則ち四大安きを獲、之を縱にすれば、則ち五藏患を成す。『素問』に云ふ、肝は將軍の官と爲り、謀慮焉より出づ。心は君主の官と爲り、神明焉より出づ。脾は倉廩の官にして、五味焉より出づ。肺は相傳の官にして、治節焉より出づ。腎は作強の官にして、伎巧焉より出づ。

現代語訳校了

桀と紂の二帝は、ともに貪欲と放縦によって国を失い、梁氏と竇氏の二臣も、いずれも奢侈と逸楽によって家を傾けた。彭子は色によって寿命を延ばし、斉王は怒りによって病を除いたというように道筋の異なる例はあるが、いずれにも適切な調節がある。節制すれば地・水・火・風の四大は安定し、放縦にすれば五臓に病が生じる。『素問』によれば、肝は将軍の官で謀慮がそこから出、心は君主の官で神明がそこから出、脾は倉廩の官で五味がそこから出、肺は相伝の官で統治の節度がそこから出、腎は作強の官で技芸と巧みさがそこから出る。

GT-300087・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

肝者爲將軍之官謀慮出者木性仁仁者必能深思遠慮恒欲利安萬物將軍爲行兵之主必以謀慮爲先故兵書曰兵以仁舉則無不從得之以仁分則無不從悅又曰將無謀則士卒憂將無慮則士卒去故肝爲將軍出謀慮也心爲主守之官神明出者火南

句読本文校了

肝者,爲將軍之官,謀慮出者,木性仁,仁者必能深思遠慮,恒欲利安萬物。將軍爲行兵之主,必以謀慮爲先。故兵書曰,兵以仁舉,則無不從;得之以仁分,則無不從悅。又曰,將無謀,則士卒憂;將無慮,則士卒去。故肝爲將軍,出謀慮也。心爲主守之官,神明出者,火南,

訓読校了

肝は將軍の官と爲り、謀慮出づるは、木の性は仁にして、仁者は必ず能く深思遠慮し、恒に萬物を利安せんと欲すればなり。將軍は行兵の主と爲り、必ず謀慮を以て先と爲す。故に兵書に曰く、『兵を仁を以て舉ぐれば、則ち從はざる無く、之を得て仁を以て分かてば、則ち從ひ悅ばざる無し』と。又曰く、『將に謀無ければ、則ち士卒憂へ、將に慮無ければ、則ち士卒去る』と。故に肝を將軍と爲し、謀慮を出だすなり。心は主守の官と爲り、神明出づるは、火は南方にして――次文に續く。

現代語訳校了

肝を将軍の官とし、謀慮がそこから出るというのは、木の性質が仁であり、仁者は必ず深く考え遠くを慮って、常に万物を利し安んじようとするからである。将軍は軍を動かす主なので、必ず謀慮を第一とする。そのため兵書は、『仁によって兵を起こせば従わない者はなく、得たものを仁によって分配すれば従い喜ばない者はない』といい、また『将に謀がなければ士卒は憂え、将に思慮がなければ士卒は去る』という。だから肝を将軍とし、謀慮を出すとする。心を身体を主として守る官とし、神明がそこから出るのは、火が南方にあって――次のレコードへ続く。

GT-300088・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

方陽光輝人君之象神爲身之君如君南向以治易以離爲火居大陽之位人君之象人之運動情性之作莫不由心故爲主守之官神明所出也脾爲倉廩之官五味出者萬物生則出土死亦歸之五穀之入脾以受之故五味之出亦由於此也

句読本文校了

方,陽光輝,人君之象。神爲身之君,如君南向以治。『易』以離爲火,居大陽之位,人君之象。人之運動,情性之作,莫不由心,故爲主守之官,神明所出也。脾爲倉廩之官,五味出者,萬物生則出土,死亦歸之。五穀之入,脾以受之,故五味之出,亦由於此也。

訓読校了

方にして陽光輝くは、人君の象なり。神は身の君と爲り、君の南に向かひて以て治むるが如し。『易』は離を以て火と爲し、大陽の位に居らしむ。人君の象なり。人の運動、情性の作、心に由らざるは莫し。故に主守の官と爲り、神明の出づる所なり。脾を倉廩の官と爲し、五味出づるは、萬物は生ずれば則ち土より出で、死すれば亦た之に歸る。五穀の入るや、脾以て之を受く。故に五味の出づるも、亦た此に由るなり。

現代語訳校了

南方で陽の光が輝くことは君主の象である。神は身体の君主であり、君主が南を向いて統治する姿に似る。『易』では離を火として大陽の位置に置くが、これも君主の象である。人の身体の運動や情性の働きは、すべて心に由来する。そのため心を身体を主として守る官とし、神明がそこから出るとする。脾を倉廩の官とし、五味がそこから出るというのは、万物が生じるときには土から出て、死ねばまた土へ帰り、五穀が身体に入れば脾がこれを受けるので、五味が生じることもまた脾に由来するからである。

GT-300089・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

肺爲相傳之官治節出者金能裁斷相傳之任明於治道上下順教皆有禮節肺於五藏亦治節所生樂緯云商者章也臣章明君德以齊上下相傳賢所由也腎爲作強之官伎巧出者水性是智智必多能故有伎巧功則自強不息也

句読本文校了

肺爲相傳之官,治節出者,金能裁斷,相傳之任明於治道,上下順教,皆有禮節。肺於五藏,亦治節所生。『樂緯』云,商者章也,臣章明君德,以齊上下。相傳,賢所由也。腎爲作強之官,伎巧出者,水性是智,智必多能,故有伎巧;功則自強不息也。

訓読校了

肺を相傳の官と爲し、治節出づるは、金は能く裁斷し、相傳の任は治道に明らかにして、上下教へに順ひ、皆禮節有ればなり。肺は五藏に於ても、亦た治節の生ずる所なり。『樂緯』に云ふ、『商は章なり。臣は君德を章明にして、以て上下を齊ふ』と。相傳は、賢の由る所なり。腎を作強の官と爲し、伎巧出づるは、水の性は是れ智にして、智は必ず多能なり。故に伎巧有り、功なれば則ち自ら強めて息まざるなり。

現代語訳校了

肺を相伝の官とし、統治の節度がそこから出るというのは、金が物事を裁断でき、補佐の任にある者は統治の道に明るく、上下が教えに従って皆に礼節が備わるからである。肺は五臓の中でも治節の生じる所である。『楽緯』は、『商とは明らかにすることであり、臣下は君主の徳を明らかにして上下を整える』という。相伝の官は賢者が担う地位である。腎を作強の官とし、技芸と巧みさがそこから出るというのは、水の性質が智であり、智者は必ず多くの能力を備えるため技芸と巧みさが生じ、事を成し遂げるなら自ら励んで休まないからである。

GT-300090・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

八十一問曰藏各有一腎獨兩者何也左者腎右者命門命門者精神之所會也河圖云肝心出左脾肺出右腎與命門竝出尺部此脈候也問曰前解云腎陰故雙今言左腎右命門此豈不自乖張乎

句読本文校了

『八十一問』曰,藏各有一,腎獨兩者,何也。左者腎,右者命門。命門者,精神之所會也。『河圖』云,肝心出左,脾肺出右,腎與命門竝出尺部。此脈候也。問曰,前解云腎陰故雙,今言左腎右命門,此豈不自乖張乎。

訓読校了

『八十一問』に曰く、『藏は各々一有るに、腎獨り兩なるは何ぞや。左は腎、右は命門なり。命門は、精神の會する所なり』と。『河圖』に云ふ、『肝心は左に出で、脾肺は右に出で、腎と命門とは竝びに尺部に出づ』と。此れ脈候なり。問ひて曰く、『前解に腎は陰なる故に雙と云ひ、今は左を腎、右を命門と言ふ。此れ豈に自ら乖張せずや』と。

現代語訳校了

『八十一問』は、『臓はそれぞれ一つなのに、腎だけが二つあるのはなぜか。左は腎、右は命門であり、命門は精神が集まる所である』という。『河図』は、『肝と心の脈は左に現れ、脾と肺の脈は右に現れ、腎と命門の脈はともに尺部に現れる』という。これは脈を診る説明である。そこで、『前の説明では腎は陰であるため一対だといい、今は左を腎、右を命門という。これは自ら矛盾しているのではないか』と問う。

GT-300091・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

答曰命門與腎名異形同水藏則體質不殊故雙主陰數爲名則左右兩别故各有所主猶如三焦膀胱俱是水府不妨兩號老子經及素問云心藏神者神以神明照了爲義言心能明了萬事神是身之君象火已如前解腎藏精者精以精靈叡智爲稱亦是精智氣腎水智巧故精藏焉

句読本文校了

答曰,命門與腎,名異形同。水藏則體質不殊,故雙主陰數;爲名則左右兩别,故各有所主。猶如三焦膀胱,俱是水府,不妨兩號。『老子經』及『素問』云心藏神者,神以神明照了爲義,言心能明了萬事。神是身之君,象火,已如前解。腎藏精者,精以精靈叡智爲稱,亦是精智氣。腎水智巧,故精藏焉。

訓読校了

答へて曰く、命門と腎とは、名異なれども形同じ。水藏なれば則ち體質殊ならず、故に雙にして陰數を主る。名を爲せば則ち左右兩別、故に各々主る所有り。猶ほ三焦・膀胱は、俱に是れ水府なるも、兩號を妨げざるが如し。『老子經』及び『素問』に心は神を藏すと云ふは、神は神明照了を以て義と爲し、心は能く萬事を明了するを言ふ。神は是れ身の君にして、火に象ること、已に前解の如し。腎は精を藏すとは、精は精靈叡智を以て稱と爲し、亦た是れ精智の氣なり。腎は水にして智巧なり、故に精焉に藏す。

現代語訳校了

答えは次のとおりである。命門と腎は名が異なるが形は同じである。水の臓としては本体と性質に違いがないため、一対となって陰の数をつかさどる。しかし名称を立てれば左右が別なので、それぞれにつかさどる働きがある。三焦と膀胱がともに水の腑でありながら、二つの名称を持って差し支えないのと同じである。『老子経』と『素問』が心は神を蔵すると説くのは、神が霊妙に照らして明瞭に理解することを意味し、心が万事を明らかに理解できることをいう。神が身体の君主であり火に象ることは、すでに前に説明した。腎が精を蔵するという場合、精は精妙な霊性と明敏な知恵を名とし、精妙な知恵の気でもある。腎は水に属して知恵と巧みさを備えるため、精がそこに蔵される。

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