五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・22 / 49頁

GT-300012・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

喜色猶然以出怒色怫然以侮欲色𭞺然以愉懼色薄然以下憂悲之色瞿然以靜誠智必有難盡之色誠仁必有可尊之色誠勇必有難懾之色誠忠必有可親之色誠潔必有難汙之色誠真必有可信之色其質色皓然固

句読本文校了

喜色猶然以出、怒色怫然以侮、欲色𭞺然以愉、懼色薄然以下、憂悲之色瞿然以靜。誠智、必有難盡之色。誠仁、必有可尊之色。誠勇、必有難懾之色。誠忠、必有可親之色。誠潔、必有難汙之色。誠真、必有可信之色。其質色皓然固

訓読校了

喜色は猶然として以て出で、怒色は怫然として以て侮り、欲色は𭞺然として以て愉しみ、懼色は薄然として以て下り、憂悲の色は瞿然として以て静かなり。誠に智あれば、必ず尽くし難きの色有り。誠に仁あれば、必ず尊ぶべきの色有り。誠に勇あれば、必ず懾れしめ難きの色有り。誠に忠あれば、必ず親しむべきの色有り。誠に潔なれば、必ず汚し難きの色有り。誠に真なれば、必ず信ずべきの色有り。其の質色は皓然として、固くして……

現代語訳校了

喜びの表情はゆったりと現れ、怒りの表情はむっとして人を見下し、欲望の表情は楽しげに喜び、恐れの表情は切迫して屈服し、憂い悲しむ表情は慌てたように静まる。真に智があれば究め尽くしがたい表情があり、真に仁があれば尊ぶべき表情があり、真に勇があればおびえさせがたい表情があり、真に忠があれば親しむべき表情があり、真に潔白であれば汚しがたい表情があり、真実であれば信ずべき表情がある。偽りのない表情は明らかで、確固として……。

GT-300013・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

以安偽色蔓然亂以煩夫喜色則黃怒色則赤憂色則青喪色則白哀色則黑此皆五常之色動于五藏而見于外隨其善惡盛衰之應也君子所觀故於此釋第二論配聲音子產曰章爲五聲蔡伯喈云通於耳者爲聲青作角聲白作商聲黑作羽聲赤作徵聲黃作宮聲

句読本文校了

以安。偽色蔓然、亂以煩。夫喜色則黃、怒色則赤、憂色則青、喪色則白、哀色則黑。此皆五常之色、動于五藏而見于外、隨其善惡盛衰之應也。君子所觀、故於此釋。第二、論配聲音。子產曰、章爲五聲。蔡伯喈云、通於耳者爲聲。青作角聲、白作商聲、黑作羽聲、赤作徵聲、黃作宮聲。

訓読校了

……以て安し。偽色は蔓然として乱れ、以て煩わし。夫れ喜色は則ち黄、怒色は則ち赤、憂色は則ち青、喪色は則ち白、哀色は則ち黒なり。此れ皆な五常の色、五蔵に動きて外に見われ、其の善悪盛衰の応に随うなり。君子の観る所なり。故に此に於いて釈す。第二、声音に配するを論ず。子産曰く、「章らかにして五声と為る」と。蔡伯喈云く、「耳に通ずる者を声と為す」と。青は角声を作し、白は商声を作し、黒は羽声を作し、赤は徴声を作し、黄は宮声を作す。

現代語訳校了

……それによって安定している。偽りの表情は蔓然として乱れ、煩わしい。喜びの表情は黄、怒りは赤、憂いは青、喪は白、悲哀は黒である。これらはすべて五常の色であり、五臓に動いて外に現れ、その善悪と盛衰に応じる。君子が観察するところであるため、ここでこれを解釈する。第二に、声音への配当を論じる。子産は「明らかに現れて五声となる」といい、蔡伯喈は「耳に通じるものを声という」と述べる。青は角声、白は商声、黒は羽声、赤は徴声、黄は宮声を生じる。

GT-300014・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

律歷志云角者觸也陽氣蠢動萬物觸地而生也徵者祉也萬物大盛蕃祉也宮者中也居中央暢四方唱始施生爲四聲之經商者章也物成章明也羽者宇也物藏聚萃宇覆之也樂緯云春氣和則角聲調夏氣和則徵聲調季夏氣和則宮聲調秋氣和則商聲調冬氣和則羽聲調

句読本文校了

律歷志云、角者觸也。陽氣蠢動、萬物觸地而生也。徵者祉也。萬物大盛、蕃祉也。宮者中也。居中央、暢四方、唱始施生、爲四聲之經。商者章也。物成章明也。羽者宇也。物藏聚萃、宇覆之也。樂緯云、春氣和、則角聲調。夏氣和、則徵聲調。季夏氣和、則宮聲調。秋氣和、則商聲調。冬氣和、則羽聲調。

訓読校了

『律暦志』に云く、「角は触なり。陽気蠢動し、万物地に触れて生ずるなり。徴は祉なり。万物大いに盛んにして、蕃祉するなり。宮は中なり。中央に居り、四方に暢び、始めを唱えて生を施し、四声の経と為る。商は章なり。物成りて章明なるなり。羽は宇なり。物蔵まり聚萃し、宇もて之を覆うなり」と。『楽緯』に云く、「春気和すれば、則ち角声調い、夏気和すれば、則ち徴声調い、季夏の気和すれば、則ち宮声調い、秋気和すれば、則ち商声調い、冬気和すれば、則ち羽声調う」と。

現代語訳校了

『律暦志』はいう。「角とは触の意味である。陽気がうごめき、万物が地に触れて生じるからである。徴とは祉の意味である。万物が大いに盛んになり、繁栄するからである。宮とは中の意味である。中央にあって四方へ伸び、始まりを唱えて生成を施し、他の四声の基準となる。商とは章の意味である。物が完成して明らかに現れるからである。羽とは宇の意味である。物が蔵され集まり、宇がこれを覆うからである」と。『楽緯』には「春の気が調和すれば角声が整い、夏の気が調和すれば徴声が整い、季夏の気が調和すれば宮声が整い、秋の気が調和すれば商声が整い、冬の気が調和すれば羽声が整う」とある。

GT-300015・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

樂記曰宮爲君故宮亂則荒其君驕商爲臣商亂則陂其臣壞徵爲事徵亂則哀其事勤羽爲物羽亂則危其財匱角爲民角亂則憂其民怨五者不亂則天下和平無弊敗之音素問云木音角在聲爲呼火音徴在聲爲笑土音宮在聲爲歌金音商在聲爲哭水音羽在聲爲呻

句読本文校了

樂記曰、宮爲君。故宮亂則荒、其君驕。商爲臣。商亂則陂、其臣壞。徵爲事。徵亂則哀、其事勤。羽爲物。羽亂則危、其財匱。角爲民。角亂則憂、其民怨。五者不亂、則天下和平、無弊敗之音。素問云、木音角、在聲爲呼。火音徴、在聲爲笑。土音宮、在聲爲歌。金音商、在聲爲哭。水音羽、在聲爲呻。

訓読校了

『楽記』に曰く、「宮は君と為す。故に宮乱るれば則ち荒れ、其の君驕る。商は臣と為す。商乱るれば則ち陂き、其の臣壊る。徴は事と為す。徴乱るれば則ち哀しみ、其の事勤し。羽は物と為す。羽乱るれば則ち危うく、其の財匱し。角は民と為す。角乱るれば則ち憂い、其の民怨む。五者乱れざれば、則ち天下和平にして、弊敗の音無し」と。『素問』に云く、「木の音は角、声に在りては呼と為す。火の音は徴、声に在りては笑と為す。土の音は宮、声に在りては歌と為す。金の音は商、声に在りては哭と為す。水の音は羽、声に在りては呻と為す」と。

現代語訳校了

『楽記』には「宮は君主を表す。宮音が乱れると荒れ、その君主は驕っている。商は臣下を表す。商音が乱れると傾き、その臣下は壊れている。徴は政事を表す。徴音が乱れると悲しく、その政事は苦しい。羽は物資を表す。羽音が乱れると危うく、その財は乏しい。角は人民を表す。角音が乱れると憂わしく、その人民は怨んでいる。この五音が乱れなければ、天下は平和で調和し、衰敗の音はない」とある。『素問』には「木の音は角で、声では呼ぶ声となる。火の音は徴で、笑う声となる。土の音は宮で、歌う声となる。金の音は商で、泣く声となる。水の音は羽で、うめく声となる」とある。

GT-300016・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

樂記曰樂者音之所由生其本在人心之感於物是故哀心感者其聲噍以殺樂心感者其聲嘽以緩喜心感者其聲發以散

句読本文校了

樂記曰、樂者、音之所由生。其本在人心之感於物。是故、哀心感者、其聲噍以殺。樂心感者、其聲嘽以緩。喜心感者、其聲發以散。

訓読校了

『楽記』に曰く、「楽は、音の由りて生ずる所なり。其の本は人心の物に感ずるに在り。是の故に、哀心に感じたる者は其の声噍にして以て殺ぎ、楽心に感じたる者は其の声嘽にして以て緩く、喜心に感じたる者は其の声発して以て散ず」と。

現代語訳校了

『楽記』には「楽とは音がそこから生じるものであり、その根本は人の心が物に感じることにある。したがって、悲哀の心に動かされた声は細く鋭くて衰え、安楽の心に動かされた声はゆったりとして緩やかであり、喜びの心に動かされた声は外へ発して広がる」とある。

GT-300017・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

怒心感者其聲粗以厲貞心感者其聲直以廉愛心感者其聲和以婉六者非性也感於物而後動審聲以知音審音以知樂審樂以知政而治道備矣故詩序曰聲成文謂之音治世之音安以樂其政和亂世之音怨以怒其政乖亡國之音哀以思其民困

句読本文校了

怒心感者、其聲粗以厲。貞心感者、其聲直以廉。愛心感者、其聲和以婉。六者非性也、感於物而後動。審聲以知音、審音以知樂、審樂以知政、而治道備矣。故詩序曰、聲成文、謂之音。治世之音、安以樂、其政和。亂世之音、怨以怒、其政乖。亡國之音、哀以思、其民困。

訓読校了

怒心に感じたる者は、其の声粗にして以て厲しく、貞心に感じたる者は、其の声直にして以て廉く、愛心に感じたる者は、其の声和して以て婉なり。六者は性に非ざるなり。物に感じて後に動く。声を審らかにして以て音を知り、音を審らかにして以て楽を知り、楽を審らかにして以て政を知れば、治道備わる。故に『詩序』に曰く、「声、文を成す、之を音と謂う。治世の音は安らかにして以て楽しむ。其の政和すればなり。乱世の音は怨みて以て怒る。其の政乖けばなり。亡国の音は哀しみて以て思う。其の民困しめばなり」と。

現代語訳校了

怒りの心に動かされた声は荒く激しく、貞正な心に動かされた声はまっすぐで節度があり、愛する心に動かされた声は調和して穏やかである。これら六種は生まれつきの性質ではなく、物に感じた後に動くものである。声を詳しく調べて音を知り、音を詳しく調べて音楽を知り、音楽を詳しく調べて政治を知れば、統治の道が備わる。そこで『詩序』は「声が文様を成したものを音という。治世の音は安らかで楽しい。その政治が調和しているからである。乱世の音は怨み怒る。その政治が道に背いているからである。亡国の音は悲しみ思う。その人民が苦しんでいるからである」と述べる。

GT-300018・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

大戴禮觀人篇云誠在其中必見諸外以其見占其隱以其細占其大聲象其實氣初生物物生有聲聲有剛柔清濁好惡咸發于聲故心氣嘩誕者其聲流散心氣順信者其聲順節心氣鄙戾者其聲腥醜心氣寬柔者其聲溫和故聖人聽其聲觀其色知其善惡

句読本文校了

大戴禮觀人篇云、誠在其中、必見諸外。以其見、占其隱。以其細、占其大。聲象其實。氣初生物、物生有聲。聲有剛柔清濁好惡、咸發于聲。故心氣嘩誕者、其聲流散。心氣順信者、其聲順節。心氣鄙戾者、其聲腥醜。心氣寬柔者、其聲溫和。故聖人聽其聲、觀其色、知其善惡。

訓読校了

『大戴礼』観人篇に云く、「誠、中に在れば、必ず諸れを外に見わす。其の見わるるを以て、其の隠れたるを占い、其の細なるを以て、其の大なるを占う。声は其の実に象る。気初めて物を生じ、物生ずれば声有り。声には剛柔・清濁・好悪有りて、咸な声に発す。故に心気嘩誕なる者は其の声流散し、心気順信なる者は其の声順節し、心気鄙戾なる者は其の声腥醜にして、心気寛柔なる者は其の声温和なり。故に聖人は其の声を聴き、其の色を観て、其の善悪を知る」と。

現代語訳校了

『大戴礼』観人篇にはこうある。「真実が心中にあれば、必ず外に現れる。その現れたものによって隠れたものを判断し、その小さなものによって大きなものを判断する。声はその人の実質を映す。気が初めて物を生み、物が生じれば声がある。声には剛と柔、清と濁、好と悪があり、すべて声に現れる。だから心の気が騒がしく偽りに満ちる者の声は流れ散り、素直で誠実な者の声は節度に従い、卑しく道に背く者の声は生臭く醜く、寛大で柔和な者の声は温和である。聖人はその声を聴き、その色を観て、その善悪を知る」と。

GT-300019・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

夫獨發者謂之聲合和者謂之音毛詩序云聲成文謂之音故因五聲而有八音樂緯云物以三成以五立三與五如八故音以八八音金石絲竹土木匏革以發宮商角徵羽也金爲鍾石爲磬絲爲絃竹爲管土爲塤木爲柷圄匏爲笙革爲鼓

句読本文校了

夫獨發者、謂之聲。合和者、謂之音。毛詩序云、聲成文、謂之音。故因五聲而有八音。樂緯云、物以三成、以五立。三與五如八、故音以八。八音、金、石、絲、竹、土、木、匏、革、以發宮、商、角、徵、羽也。金爲鍾、石爲磬、絲爲絃、竹爲管、土爲塤、木爲柷圄、匏爲笙、革爲鼓。

訓読校了

夫れ独り発する者、之を声と謂い、合和する者、之を音と謂う。『毛詩序』に云く、「声、文を成す、之を音と謂う」と。故に五声に因りて八音有り。『楽緯』に云く、「物は三を以て成り、五を以て立つ。三と五とは八の如し。故に音は八を以てす」と。八音は金・石・糸・竹・土・木・匏・革にして、以て宮・商・角・徴・羽を発するなり。金は鍾と為し、石は磬と為し、糸は絃と為し、竹は管と為し、土は塤と為し、木は柷圄と為し、匏は笙と為し、革は鼓と為す。

現代語訳校了

単独で発するものを「声」といい、合わさり調和するものを「音」という。『毛詩序』には「声が文様を成したものを音という」とある。そこで五声に基づいて八音がある。『楽緯』は「物は三によって成り、五によって立つ。三と五で八となるため、音には八種がある」と説く。八音とは金・石・糸・竹・土・木・匏・革で、これらによって宮・商・角・徴・羽を発する。金は鍾、石は磬、糸は絃、竹は管、土は塤、木は柷圄、匏は笙、革は鼓となる。

GT-300020・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

鼓主震笙主巽柷圄主乾塤主艮管主坎絃主離磬主坤鍾主兌樂緯汁圖徵篇云坎主冬至宮者君之象人有君然後萬物成氣有黃鍾之宫然後萬物調所以始正天下也能與天地同儀神明合德者則七始八終各得其宜而天子穆穆四方取始故樂用管艮主立春陽氣始出

句読本文校了

鼓主震、笙主巽、柷圄主乾、塤主艮、管主坎、絃主離、磬主坤、鍾主兌。樂緯汁圖徵篇云、坎主冬至。宮者君之象。人有君、然後萬物成。氣有黃鍾之宫、然後萬物調。所以始正天下也。能與天地同儀、神明合德者、則七始八終、各得其宜。而天子穆穆、四方取始。故樂用管。艮主立春、陽氣始出。

訓読校了

鼓は震を主り、笙は巽を主り、柷圄は乾を主り、塤は艮を主り、管は坎を主り、絃は離を主り、磬は坤を主り、鍾は兌を主る。『楽緯』汁図徴篇に云く、「坎は冬至を主る。宮は君の象なり。人に君有りて、然る後に万物成る。気に黄鍾の宮有りて、然る後に万物調う。始めて天下を正す所以なり。能く天地と儀を同じくし、神明と徳を合する者は、則ち七始八終、各々其の宜しきを得。而して天子穆穆として、四方始めを取る。故に楽には管を用う。艮は立春を主り、陽気始めて出づ」と。

現代語訳校了

鼓は震、笙は巽、柷圄は乾、塤は艮、管は坎、絃は離、磬は坤、鍾は兌をそれぞれ主る。『楽緯』汁図徴篇はいう。「坎は冬至を主る。宮音は君主の象である。人には君主があって、その後に万物が成る。気には黄鍾の宮音があって、その後に万物が調う。これが初めに天下を正す理由である。天地と法則を同じくし、神明と徳を合わせることのできる者のもとでは、七始と八終がそれぞれ適切な状態を得る。そして天子はうるわしく、四方は始まりを取る。ゆえに音楽には管を用いる。艮は立春を主り、陽気が初めて出る」と。

GT-300021・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

言雷動百里聖人授民田亦不過百畝此天地之分黃鍾之度九而調八音故聖人以九頃成八家上農夫食九口中者七口下者五口是爲富者不足以奢貧者無飢餒之憂三年餘一年之蓄九年餘三年之蓄此黃鍾之所成以消息之和故樂用塤

句読本文校了

言雷動百里。聖人授民田、亦不過百畝。此天地之分。黃鍾之度九、而調八音。故聖人以九頃成八家。上農夫食九口、中者七口、下者五口。是爲富者不足以奢、貧者無飢餒之憂。三年餘一年之蓄、九年餘三年之蓄。此黃鍾之所成、以消息之和。故樂用塤。

訓読校了

雷の動くこと百里なるを言う。聖人の民に田を授くるも、亦た百畝を過ぎず。此れ天地の分なり。黄鍾の度は九にして、八音を調う。故に聖人は九頃を以て八家を成す。上農夫は九口を食わし、中なる者は七口、下なる者は五口を食わす。是れ富める者も以て奢るに足らず、貧しき者も飢餒の憂い無からしむ。三年には一年の蓄えを余し、九年には三年の蓄えを余す。此れ黄鍾の成す所にして、消息の和を以てす。故に楽には塤を用う。

現代語訳校了

雷が動くこと百里に及ぶという。聖人が人民に田を授ける場合も、百畝を超えない。これが天地の区分である。黄鍾の度数は九であり、八音を調える。そのため聖人は九頃によって八家を成り立たせる。上等の農夫は九人、中等の者は七人、下等の者は五人を養う。これにより富者は贅沢するほどには足りず、貧者には飢えの心配がない。三年で一年分の蓄えを余し、九年で三年分の蓄えを余す。これは黄鍾が、気の消長の調和によって成すところである。ゆえに音楽には塤を用いる。

GT-300022・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

震主春分天地陰陽分均故聖王法承天以立五均五均者六律調五聲之均也音至眾也聲不過五物至蕃也均不過五爲富者慮貧強者不侵弱智者不詐愚市無二價萬物同均四時當得公家有餘恩及天下與天地同徳故樂用鼓

句読本文校了

震主春分。天地陰陽分均、故聖王法承天、以立五均。五均者、六律調五聲之均也。音至眾也、聲不過五。物至蕃也、均不過五。爲富者慮貧、強者不侵弱、智者不詐愚、市無二價、萬物同均。四時當得、公家有餘、恩及天下、與天地同徳。故樂用鼓。

訓読校了

震は春分を主る。天地陰陽分かれて均し。故に聖王は天に法り承けて、以て五均を立つ。五均とは、六律、五声を調うるの均なり。音は至って衆きも、声は五を過ぎず。物は至って蕃きも、均は五を過ぎず。富める者をして貧しきを慮らしめ、強き者は弱きを侵さず、智なる者は愚なる者を詐らず、市に二価無く、万物同均なり。四時は当を得、公家に余り有り、恩は天下に及び、天地と徳を同じくす。故に楽には鼓を用う。

現代語訳校了

震は春分を主る。天地の陰陽が等しく分かれるので、聖王は天に法り、その働きを受けて五均を立てる。五均とは、六律が五声を調える均衡である。音が非常に多くても声は五つを超えず、物が非常に繁多でも均は五つを超えない。富者には貧者を思いやらせ、強者は弱者を侵さず、智者は愚者を欺かず、市場には二つの価格がなく、万物が同じく均衡する。四季は適切さを得、公家には余りがあり、恩恵は天下に及び、天地と徳を同じくする。ゆえに音楽には鼓を用いる。

GT-300023・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

巽主立夏自萬物長短各有差故聖王法承天以法授事焉尊卑各有等於士則義讓有禮君臣有差上下皆次治道行故樂用笙離主夏至陽始下陰又成物故聖王法承天以法授衣服制度所以明禮義顯貴賤明燭其徳率之以度則女功有差男行有禮故樂用絃

句読本文校了

巽主立夏。自萬物長短各有差、故聖王法承天、以法授事焉。尊卑各有等。於士、則義讓有禮。君臣有差、上下皆次、治道行。故樂用笙。離主夏至。陽始下、陰又成物。故聖王法承天、以法授衣服制度。所以明禮義、顯貴賤、明燭其徳。率之以度、則女功有差、男行有禮。故樂用絃。

訓読校了

巽は立夏を主る。万物の長短、各々差有るに自り、故に聖王は天に法り承けて、法を以て事を授く。尊卑各々等有り。士に於いては、則ち義譲に礼有り。君臣に差有り、上下皆な次いで、治道行わる。故に楽には笙を用う。離は夏至を主る。陽始めて下り、陰又た物を成す。故に聖王は天に法り承けて、法を以て衣服の制度を授く。礼義を明らかにし、貴賤を顕し、其の徳を明燭する所以なり。之を率いるに度を以てすれば、則ち女功に差有り、男行に礼有り。故に楽には絃を用う。

現代語訳校了

巽は立夏を主る。万物の長短にはそれぞれ差があるので、聖王は天に法り、その働きを受けて、法によって職事を授ける。尊卑にはそれぞれ等級がある。士においては義と譲に礼がある。君臣には差があり、上下がみな順序に従えば、統治の道が行われる。ゆえに音楽には笙を用いる。離は夏至を主る。陽気が初めて下り、陰気が再び物を成す。そこで聖王は天に法り、その働きを受けて、法によって衣服の制度を授ける。これは礼義を明らかにし、貴賤を示し、その徳を明らかに照らすためである。これを等級によって統率すれば、女性の仕事には差があり、男性の行いには礼がある。ゆえに音楽には絃を用いる。

GT-300024・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

坤主立秋陽氣方入陰氣用事昆蟲首穴欲蟄故聖王法之授宮室度量又章制有宜大小有法貴賤有差上下有順故樂用磬兌主秋分天地萬物人功皆以定故聖王法承天以定爵祿爵祿者不過其能宮爲君商爲臣商章也言臣章明君之功徳尊卑有位位有物物有宜功成者爵

句読本文校了

坤主立秋。陽氣方入、陰氣用事、昆蟲首穴欲蟄。故聖王法之、授宮室度量。又章制有宜、大小有法、貴賤有差、上下有順。故樂用磬。兌主秋分。天地萬物人功皆以定、故聖王法承天、以定爵祿。爵祿者、不過其能。宮爲君、商爲臣。商章也、言臣章明君之功徳。尊卑有位、位有物、物有宜。功成者爵

訓読校了

坤は立秋を主る。陽気方に入り、陰気事を用い、昆虫は穴に首して蟄せんと欲す。故に聖王は之に法り、宮室・度量を授く。又た章制に宜しき有り、大小に法有り、貴賤に差有り、上下に順有り。故に楽には磬を用う。兌は秋分を主る。天地万物、人功、皆な以て定まる。故に聖王は天に法り承けて、以て爵禄を定む。爵禄は、其の能を過ぎず。宮は君と為し、商は臣と為す。商は章なり。臣、君の功徳を章明するを言う。尊卑に位有り、位に物有り、物に宜しき有り。功成る者は爵……

現代語訳校了

坤は立秋を主る。陽気がまさに入り、陰気が働き、昆虫は穴に首を向けて冬ごもりしようとする。そこで聖王はこれに法り、宮室と度量を授ける。また章制には適切さがあり、大小には法があり、貴賤には差があり、上下には順序がある。ゆえに音楽には磬を用いる。兌は秋分を主る。天地万物と人の功はすべて定まるので、聖王は天に法り、その働きを受けて爵禄を定める。爵禄はその者の能力を超えない。宮は君主、商は臣下を表す。商は章の意味で、臣下が君主の功績と徳を明らかにすることをいう。尊卑には位があり、位には物があり、物には適切さがある。功を成した者には爵……。

GT-300025・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

賞功敗者刑罰故樂用鍾乾主立冬陰陽終而復始萬物死而復蘇故聖王法承天以制刑法誅一動千殺一感萬使死者不恨生者不怨故樂用柷梧國語曰瓦絲琴瑟尚宮鍾金尚羽石尚角匏竹尚徵革木尚商呂以和樂律以平聲金石以動之絲竹以行之歌以詠之匏以宣之瓦以贊之革木以節之

句読本文校了

賞。功敗者刑罰。故樂用鍾。乾主立冬。陰陽終而復始、萬物死而復蘇。故聖王法承天、以制刑法。誅一動千、殺一感萬。使死者不恨、生者不怨。故樂用柷梧。國語曰、瓦、絲、琴、瑟、尚宮。鍾、金、尚羽。石尚角。匏、竹、尚徵。革、木、尚商。呂以和樂、律以平聲。金石以動之、絲竹以行之、歌以詠之、匏以宣之、瓦以贊之、革木以節之。

訓読校了

……賞す。功敗るる者は刑罰す。故に楽には鍾を用う。乾は立冬を主る。陰陽終わりて復た始まり、万物死して復た蘇る。故に聖王は天に法り承けて、以て刑法を制す。一を誅して千を動かし、一を殺して万を感ぜしむ。死する者をして恨みず、生くる者をして怨みざらしむ。故に楽には柷梧を用う。『国語』に曰く、「瓦・糸・琴・瑟は宮を尚び、鍾・金は羽を尚び、石は角を尚び、匏・竹は徴を尚び、革・木は商を尚ぶ。呂を以て楽を和し、律を以て声を平らかにす。金石を以て之を動かし、糸竹を以て之を行い、歌を以て之を詠じ、匏を以て之を宣べ、瓦を以て之を賛け、革木を以て之を節す」と。

現代語訳校了

……賞を与える。功が敗れた者には刑罰を科す。ゆえに音楽には鍾を用いる。乾は立冬を主る。陰陽は終わって再び始まり、万物は死んで再びよみがえる。そこで聖王は天に法り、その働きを受けて刑法を制定する。一人を誅して千人を動かし、一人を殺して万人を感化し、死ぬ者にも恨ませず、生きる者にも怨ませない。ゆえに音楽には柷梧を用いる。『国語』には「瓦・糸・琴・瑟は宮音を重んじ、鍾・金は羽音を重んじ、石は角音を重んじ、匏・竹は徴音を重んじ、革・木は商音を重んじる。呂によって楽を調和させ、律によって声を整える。金石で音を起こし、糸竹でこれを進め、歌でこれを詠じ、匏でこれを広げ、瓦でこれを助け、革木でこれに節度をつける」とある。

GT-300026・巻3
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物得其常曰樂所奪曰擊相保曰和細大不踰曰平瓦絲皆大也故尚宮子母相應之道鍾金尚羽亦然石尚角者石金也與角爲牝牡相和之義匏土也竹木也尚徵亦子母相應也革木俱角尚商亦以牝牡相和也

句読本文校了

物得其常、曰樂。所奪、曰擊。相保、曰和。細大不踰、曰平。瓦絲皆大也、故尚宮、子母相應之道。鍾金尚羽、亦然。石尚角者、石金也、與角爲牝牡相和之義。匏土也、竹木也、尚徵、亦子母相應也。革木俱角、尚商、亦以牝牡相和也。

訓読校了

物、其の常を得るを楽と曰い、奪わるる所を撃と曰い、相い保つを和と曰い、細大踰えざるを平と曰う。瓦・糸は皆な大なり。故に宮を尚ぶ。子母相応の道なり。鍾・金の羽を尚ぶも亦た然り。石の角を尚ぶは、石は金なり、角と牝牡を為して相和するの義なり。匏は土なり、竹は木なり。徴を尚ぶも亦た子母相応するなり。革・木は俱に角なり。商を尚ぶも亦た牝牡相和するを以てなり。

現代語訳校了

物がその常を得ることを「楽」といい、その状態を奪われることを「撃」といい、互いに保つことを「和」といい、高い音と低い音がそれぞれ適正な限度を越えないことを「平」という。瓦と糸はいずれも「大」の音に属するため、宮音を重んじる。これは子と母が互いに応じる道である。鍾と金が羽音を重んじるのも同様である。石が角音を重んじるのは、石が金であり、角と牝牡を成して互いに調和するという意味による。匏は土、竹は木であり、徴音を重んじるのも子母が互いに応じるからである。革と木はいずれも角であり、商音を重んじるのも牝牡が互いに調和するからである。

五声と五臓・宮声の軍候

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GT-300027・巻3
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宮聲和以舒其和博以柔動脾商聲散以明其和溫以虛動肺角聲防以約其和靜以清動肝徵聲敗以疾其和平以均動心羽聲疾以虛其和短以散動腎黃帝兵決云兩敵相當使人去敵營一百二十步以管注耳聽之聞隆隆如車如雷如鼓聲者宮也其將寬和有信

句読本文校了

宮聲和以舒、其和博以柔、動脾。商聲散以明、其和溫以虛、動肺。角聲防以約、其和靜以清、動肝。徵聲敗以疾、其和平以均、動心。羽聲疾以虛、其和短以散、動腎。黃帝兵決云、兩敵相當、使人去敵營一百二十步、以管注耳聽之。聞隆隆、如車、如雷、如鼓聲者、宮也。其將寬和有信。

訓読校了

宮声は和して以て舒び、其の和は博くして以て柔らかく、脾を動かす。商声は散じて以て明らかに、其の和は温にして以て虚しく、肺を動かす。角声は防ぎて以て約し、其の和は静かにして以て清く、肝を動かす。徴声は敗れて以て疾く、其の和は平らかにして以て均しく、心を動かす。羽声は疾くして以て虚しく、其の和は短くして以て散じ、腎を動かす。『黄帝兵決』に云く、「両敵相い当たるとき、人をして敵営を去ること百二十歩にして、管を以て耳に注ぎて之を聴かしむ。隆隆として車の如く、雷の如く、鼓声の如きを聞く者は宮なり。其の将は寛和にして信有り」と。

現代語訳校了

宮声は調和して伸びやかで、その調和した声は広く柔らかく、脾を動かす。商声は散って明らかで、その調和した声は温かく虚ろで、肺を動かす。角声は防いで引き締まり、その調和した声は静かで清く、肝を動かす。徴声は敗れるようで速く、その調和した声は平らかで均しく、心を動かす。羽声は速く虚ろで、その調和した声は短く散り、腎を動かす。『黄帝兵決』にはこうある。「両軍が対峙したとき、人を敵営から百二十歩離れさせ、管を耳に当てて聴かせる。隆隆として車・雷・鼓の音のように聞こえるものは宮声である。その将は寛大で穏やかであり、信義がある」と。

GT-300028・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

聞金石相和轟轟擊攻如鍾磬霹靂聲者商也其將威怒好殺宜數忿之聞如奔馬炎炮掣裂聲者徵也其將猛烈勇敢難與爭鋒聞肅肅習習如動樹木如人呼愁愁聲者角也其將仁恕不可欺聞滔滔如流水揚波激氣相笑聲者羽也其將貪冒多

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聞金石相和、轟轟擊攻、如鍾磬霹靂聲者、商也。其將威怒好殺、宜數忿之。聞如奔馬炎炮掣裂聲者、徵也。其將猛烈勇敢、難與爭鋒。聞肅肅習習、如動樹木、如人呼愁愁聲者、角也。其將仁恕、不可欺。聞滔滔、如流水揚波激氣、相笑聲者、羽也。其將貪冒多

訓読校了

金石相い和して轟轟と撃攻し、鍾磬・霹靂の声の如きを聞く者は商なり。其の将は威怒して殺すを好む。宜しく数々之を忿らすべし。奔馬・炎炮の掣裂する声の如きを聞く者は徴なり。其の将は猛烈勇敢にして、与に鋒を争い難し。粛粛習習として、樹木を動かすが如く、人の呼ぶ愁愁の声の如きを聞く者は角なり。其の将は仁恕にして、欺くべからず。滔滔として、流水の波を揚げ気を激するが如く、相い笑う声を聞く者は羽なり。其の将は貪冒にして、多く……

現代語訳校了

金石が響き合い、轟々と打ち合う鍾・磬や落雷のように聞こえるものは商声である。その将は威圧的で怒りやすく、殺すことを好むので、たびたびこれを怒らせるのがよい。奔馬や、燃えはぜる火が裂けるように聞こえるものは徴声である。その将は激烈で勇敢なので、正面から鋒を争うのは難しい。風がさわさわと樹木を動かすように、また人が悲しげに呼ぶように聞こえるものは角声である。その将は仁愛と寛恕を備えており、欺くことはできない。滔滔として、流水が波を上げて気を激しくするように、人が笑い合う声として聞こえるものは羽声である。その将は貪欲で向こう見ずで、多くの……。

GT-300029・巻3
本文 校了
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姧謀審此五音以知敵性候風之聲亦皆如之此竝論音聲之狀故以備釋第三論配氣味子產云氣爲五味鄭玄云通口者爲五味通鼻者爲五臭禮記月令云春之日其味酸其臭羶木之臭味也

句読本文校了

姧謀。審此五音、以知敵性。候風之聲、亦皆如之。此竝論音聲之狀、故以備釋。第三、論配氣味。子產云、氣爲五味。鄭玄云、通口者爲五味、通鼻者爲五臭。禮記月令云、春之日、其味酸、其臭羶、木之臭味也。

訓読校了

姧謀……。此の五音を審らかにして、以て敵の性を知る。風の声を候うも、亦た皆な之の如し。此れ並びに音声の状を論ず。故に以て釈を備う。第三、気味に配するを論ず。子産云く、「気は五味を為す」と。鄭玄云く、「口に通ずる者を五味と為し、鼻に通ずる者を五臭と為す」と。『礼記』月令に云く、「春の日、其の味は酸、其の臭は羶、木の臭味なり」と。

現代語訳校了

奸計……。この五音を詳しく調べて敵の性質を知る。風の音をうかがう場合も、すべて同様である。以上はいずれも声音の状態を論じたものであるため、ここに説明を備える。第三に、気味への配当を論じる。子産は「気は五味となる」といい、鄭玄は「口に通じるものを五味とし、鼻に通じるものを五臭とする」と述べる。『礼記』月令には「春の日、その味は酸、その臭いは羶で、木の臭味である」とある。

GT-300030・巻3
本文 校了
原文翻刻校了

說文云羶者羊臭春物氣與羊相類木所以酸者象東方萬物之生酸者鑽也言萬物鑽地而出生五味得酸乃達也元命苞云酸之言端也氣始生專心自端也禮記云夏之日其味苦其臭焦火所以苦者南方主長養也苦者所以長養之五味須苦乃以養之

句読本文校了

說文云、羶者羊臭。春物氣、與羊相類。木所以酸者、象東方萬物之生。酸者鑽也。言萬物鑽地而出生。五味得酸、乃達也。元命苞云、酸之言端也。氣始生、專心自端也。禮記云、夏之日、其味苦、其臭焦。火所以苦者、南方主長養也。苦者所以長養之。五味須苦、乃以養之。

訓読校了

『説文』に云く、「羶は羊の臭なり。春の物気、羊と相い類す」と。木の酸なる所以は、東方万物の生を象るなり。酸は鑽なり。万物、地を鑽ちて出で生ずるを言う。五味、酸を得て乃ち達す。『元命苞』に云く、「酸の言は端なり。気始めて生じ、心を専らにして自ら端す」と。『礼記』に云く、「夏の日、其の味は苦、其の臭は焦」と。火の苦なる所以は、南方、長養を主ればなり。苦は之を長養する所以なり。五味、苦を須ちて、乃ち以て之を養う。

現代語訳校了

『説文』は「羶は羊の臭いである。春の物の気は羊に似る」と述べる。木が酸であるのは、東方における万物の発生を象徴するからである。酸とは鑽の意味である。万物が地をうがって出て生じることをいう。五味は酸を得て初めて通じる。『元命苞』は「酸という語は端の意味である。気が生じ始め、心を専一にして自ら端となる」と述べる。『礼記』には「夏の日、その味は苦、その臭いは焦である」とある。火が苦であるのは、南方が成長と養育を主るからである。苦はこれを成長させ養うものである。五味は苦を必要とし、初めてこれを養う。

GT-300031・巻3
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元命苞云苦者勤苦乃能養也方言苦快也臭焦者陽氣蒸動燎火之氣也許慎云焦者火燒物有焦燃之氣夏氣同也禮記云季夏之日其味甘其臭香土味所以甘者中央中和也甘美也元命苞云甘者食常言安其味也甘味爲五味之主猶土之和成於四行也

句読本文校了

元命苞云、苦者勤苦、乃能養也。方言、苦快也。臭焦者、陽氣蒸動、燎火之氣也。許慎云、焦者、火燒物、有焦燃之氣。夏氣同也。禮記云、季夏之日、其味甘、其臭香。土味所以甘者、中央中和也。甘美也。元命苞云、甘者食常、言安其味也。甘味爲五味之主、猶土之和成於四行也。

訓読校了

『元命苞』に云く、「苦は勤苦して、乃ち能く養う」と。『方言』に、苦は快なり。臭の焦なるは、陽気蒸動し、燎火の気なり。許慎云く、「焦は、火、物を焼きて、焦燃の気有るなり。夏の気も同じ」と。『礼記』に云く、「季夏の日、其の味は甘、其の臭は香」と。土の味の甘なる所以は、中央中和なればなり。甘は美なり。『元命苞』に云く、「甘は食の常なり。其の味の安きを言うなり」と。甘味は五味の主為り。猶お土の和、四行に成るがごときなり。

現代語訳校了

『元命苞』は「苦とは勤め苦しんで初めて養うことができるという意味である」と述べる。『方言』では、苦は快である。臭いが焦であるのは、陽気が蒸し動く、燃え上がる火の気だからである。許慎は「焦とは、火が物を焼いて焦げ燃える気があることで、夏の気も同じである」と述べる。『礼記』には「季夏の日、その味は甘、その臭いは香である」とある。土の味が甘であるのは、中央が中和するからである。甘は美の意味である。『元命苞』は「甘とは食の常であり、その味が安らかであることをいう」と述べる。甘味は五味の主であり、ちょうど土の調和が四行によって成るようなものである。

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