五行大義

五行大義

隋の蕭吉が五行思想の諸説を集成した『五行大義』全五巻について、土御門文書編纂所による原文翻刻・句読・訓読・現代語訳を公開します。

土御門文書編纂所による公開校訂版です。元禄十二年刊本の画像を底本とし、原文翻刻、独自句読、独自訓読、独自現代語訳を分離して公開します。

自家翻刻・訓読・現代語訳

公開版 gogyo-taigi-20260818-g4-v2・全964単位・20 / 49頁

GT-200177・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

於木則南宮極震於水則三川竭於火則宮室災於金則九鼎震於土則齊楚山崩木金水火俱沴土者地動分拆是也故五行氣衝而有六沴大概如斯

句読本文校了

於木則南宮極震、於水則三川竭、於火則宮室災、於金則九鼎震、於土則齊楚山崩。木金水火俱沴土者、地動分拆是也。故五行氣衝、而有六沴。大概如斯。

訓読校了

木においては南宮極めて震い、水においては三川竭き、火においては宮室災い、金においては九鼎震い、土においては斉楚の山崩る。木金水火ともに土を沴するは、地動き分かれ拆くる、これなり。故に五行の気衝きて、六沴あり。大概かくのごとし。

現代語訳校了

木に関わる汴は南宮の激しい震動、水では三川の枯渇、火では宮室の火災、金では九鼎の震動、土では斉・楚の山崩れとして現れる。木・金・水・火がともに土を汴する場合は、地震と地割れがそれである。このように五行の気が衝突するため、六種の汴が生じる。大概はこのとおりである。

GT-200178・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

第十一論刑夫刑者殺罰爲名自是刑於不義非故相刑也五行各在一方寒暑推移應時而動不失其節各不犯各無應獨受刑者但須用之不嚴而治不可弃而不用故皆還相刑

句読本文校了

第十一論刑。夫刑者、殺罰爲名。自是刑於不義、非故相刑也。五行各在一方、寒暑推移、應時而動、不失其節、各不犯、各無應獨受刑者。但須用之、不嚴而治、不可弃而不用、故皆還相刑。

訓読校了

第十一、刑を論ず。夫れ刑とは、殺罰を名とす。自らこれ不義を刑するものにして、故なく相い刑するにあらず。五行は各おの一方に在り、寒暑推移し、時に応じて動き、その節を失わず、各おの犯さざれば、独り刑を受くるべきものなし。ただ須らくこれを用い、厳ならずして治むべし。棄てて用いざるべからず、故にみな還りて相い刑す。

現代語訳校了

第十一は刑罰を論じる。刑とは殺戮や処罰を名とするが、それは不義な行いを罰するものであり、理由もなく互いに刑するものではない。五行はそれぞれ一つの方位にあり、寒暑が移り変わるのに応じて時にかなって動き、その節度を失わない。それぞれが互いを侵さなければ、どれか一行だけが刑を受けるべき理由はない。ただし、刑は用いる必要があるものの、厳しすぎないように治めるべきであり、捨てて用いないわけにはいかない。そのため、五行はみな巡って互いに刑するのである。

GT-200179・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

如以金治金則成其器以人治人則成國政呂氏春秋云刑罰不可偃於國笞怒不可廢於家故五刑之屬三千莫不本乎五行周書曰因五行相剋而作五刑墨劓剕宮大辟是也火能變金色故墨以變其肉金能剋木故剕以去其骨節木能剋土故劓以去其鼻

句読本文校了

如以金治金、則成其器。以人治人、則成國政。呂氏春秋云、刑罰不可偃於國、笞怒不可廢於家。故五刑之屬三千、莫不本乎五行。周書曰、因五行相剋、而作五刑。墨、劓、剕、宮、大辟是也。火能變金色、故墨以變其肉。金能剋木、故剕以去其骨節。木能剋土、故劓以去其鼻。

訓読校了

金をもって金を治むれば、その器を成すがごとし。人をもって人を治むれば、国政を成す。『呂氏春秋』に云う、刑罰は国に偃すべからず、笞怒は家に廃すべからず。故に五刑の属三千、五行に本づかざるなし。『周書』に曰く、五行相剋に因りて五刑を作る。墨・劓・剕・宮・大辟これなり。火よく金色を変ず、故に墨はその肉を変ず。金よく木に剋つ、故に剕はその骨節を去る。木よく土に剋つ、故に劓はその鼻を去る。

現代語訳校了

金で金を加工すれば器物ができるように、人が人を治めれば国政が成り立つ。『呂氏春秋』は、刑罰を国から廃してはならず、笞ち叱ることを家から廃してはならないという。五刑の類が三千に及ぶものも、すべて五行を根拠とする。『周書』は、五行相剋に基づいて墨・劓・剕・宮・大辟の五刑を作ったという。火は金の色を変えるため、墨刑は肉の色を変える。金は木に剋つため、剕刑は骨節を断つ。木は土に剋つため、劓刑は鼻を除く。

GT-200180・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

土能塞水故宮以斷其淫泆水能滅火故大辟以絕其生命至于漢文去其肉刑代之以鞭笞其後梟斬流絞之徒竝不越其五數

句読本文校了

土能塞水、故宮以斷其淫泆。水能滅火、故大辟以絕其生命。至于漢文、去其肉刑、代之以鞭笞。其後梟斬流絞之徒、竝不越其五數。

訓読校了

土よく水を塞ぐ、故に宮はその淫泆を断つ。水よく火を滅す、故に大辟はその生命を絶つ。漢文に至り、その肉刑を去り、これに代うるに鞭笞をもってす。その後、梟・斬・流・絞の徒も、並びにその五の数を越えず。

現代語訳校了

土は水を塞ぎ止めるため、宮刑は淫逸を断つことに対応する。水は火を消すため、大辟は人の生命を絶つことに対応する。漢の文帝に至って肉刑を廃し、それに代えて鞭打ちを用いた。その後の梟首・斬首・流刑・絞首といった刑罰も、いずれも五という数の枠を越えなかったとする。

GT-200181・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

尚書云流宥五刑又五流相去各五百里鞭笞之數起自於十積而至百亦依十干之數尚書刑德攷云大辟象天刑罰贖之數三千應天地人

句読本文校了

尚書云、流宥五刑。又五流相去、各五百里。鞭笞之數、起自於十、積而至百、亦依十干之數。尚書刑德攷云、大辟象天刑、罰贖之數三千、應天地人。

訓読校了

『尚書』に云う、流もて五刑を宥む。また五流相い去ること、各おの五百里なり。鞭笞の数は十より起こり、積みて百に至る。また十干の数に依る。『尚書刑徳攷』に云う、大辟は天刑に象り、罰贖の数三千は天地人に応ず。

現代語訳校了

『尚書』には、流刑によって五刑を寛免するとある。また五等の流刑は、互いに各五百里ずつ隔たる。鞭打ちの回数は十から始まり、積み重ねて百に至り、これも十干の数による。『尚書刑徳攷』には、大辟は天の刑罰を象り、罰・贖の数三千は天・地・人に応ずるとある。

GT-200182・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

日辰支干之刑亦有三種故天地人之刑其揆一也三種者一支自相刑二支刑在干三干刑在支支自相刑者子刑在卯卯刑在子丑刑在戌戌刑在未未刑在丑

句読本文校了

日辰支干之刑、亦有三種。故天地人之刑、其揆一也。三種者、一、支自相刑。二、支刑在干。三、干刑在支。支自相刑者、子刑在卯、卯刑在子、丑刑在戌、戌刑在未、未刑在丑。

訓読校了

日辰支干の刑にも、また三種あり。故に天地人の刑、その揆は一なり。三種とは、一に支自ら相い刑し、二に支の刑は干に在り、三に干の刑は支に在る。支自ら相い刑するは、子の刑は卯に在り、卯の刑は子に在り、丑は戌、戌は未、未は丑に在る。

現代語訳校了

日辰の干支における刑も、地支同士、地支から天干、天干から地支という三種類に分かれ、三才の刑と同じ原理に従う。まず子卯の相刑と、丑・戌・未の循環する相刑を挙げる。

GT-200183・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

寅刑在巳巳刑在申申刑在寅辰午酉亥各自刑漢書翼奉奏事云木落歸本故亥卯未木之位刑在北方亥自刑卯刑在子未刑在丑

句読本文校了

寅刑在巳、巳刑在申、申刑在寅。辰午酉亥、各自刑。漢書翼奉奏事云、木落歸本、故亥卯未、木之位、刑在北方。亥自刑、卯刑在子、未刑在丑。

訓読校了

寅の刑は巳に在り、巳は申、申は寅に在る。辰・午・酉・亥は各おの自ら刑す。『漢書』翼奉奏事に云う、木落ちて本に帰る、故に亥卯未の木の位は、刑、北方に在り。亥は自刑し、卯は子に刑し、未は丑に刑す。

現代語訳校了

寅・巳・申は循環して刑し、辰・午・酉・亥は同じ支同士で刑する。翼奉の説では、木が根へ帰る性質から木局の亥卯未は北方に刑を持ち、亥は自刑、卯は子、未は丑を刑する。

GT-200184・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

水流向末故申子辰水之位刑在東方申刑在寅子刑在卯辰自刑金剛火強各還其郷故巳酉丑金之位刑在西方巳刑在申酉自刑丑刑在戌

句読本文校了

水流向末、故申子辰、水之位、刑在東方。申刑在寅、子刑在卯、辰自刑。金剛火強、各還其郷。故巳酉丑、金之位、刑在西方。巳刑在申、酉自刑、丑刑在戌。

訓読校了

水流れて末に向かう、故に申子辰の水の位は、刑、東方に在り。申は寅、子は卯に刑し、辰は自刑す。金は剛、火は強く、各おのその郷に還る。故に巳酉丑の金の位は、刑、西方に在り。巳は申に刑し、酉は自刑し、丑は戌に刑す。

現代語訳校了

水局の申子辰は流れの末である東方に刑を置き、申→寅、子→卯、辰→辰となる。金と火は強固なので各自の方位へ戻り、金局の巳酉丑は西方に刑を置いて巳→申、酉→酉、丑→戌となる。

GT-200185・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

寅午戌火之位刑在南方寅刑在巳午自刑戌刑在未干刑支者寅刑在庚卯刑在辛辰刑在甲巳刑在癸午刑在壬未刑在乙申刑在丙酉刑在丁戌刑在甲亥刑在己子刑在戊丑刑在乙

句読本文校了

寅午戌、火之位、刑在南方。寅刑在巳、午自刑、戌刑在未。干刑支者、寅刑在庚、卯刑在辛、辰刑在甲、巳刑在癸、午刑在壬、未刑在乙、申刑在丙、酉刑在丁、戌刑在甲、亥刑在己、子刑在戊、丑刑在乙。

訓読校了

寅午戌の火の位は、刑、南方に在り。寅は巳に刑し、午は自刑し、戌は未に刑す。干の支を刑するは、寅の刑は庚、卯は辛、辰は甲、巳は癸、午は壬、未は乙、申は丙、酉は丁、戌は甲、亥は己、子は戊、丑は乙に在る。

現代語訳校了

寅・午・戌という火の位では、刑は南方にある。寅は巳を刑し、午は自らを刑し、戌は未を刑する。天干が地支を刑する配当では、寅の刑は庚、卯は辛、辰は甲、巳は癸、午は壬、未は乙、申は丙、酉は丁、戌は甲、亥は己、子は戊、丑は乙にある。

GT-200186・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

支刑干者甲刑在申乙刑在酉丙刑在子丁刑在亥戊刑在寅己刑在卯庚刑在午辛刑在巳壬刑在辰癸刑在丑未此竝以所勝爲刑也

句読本文校了

支刑干者、甲刑在申、乙刑在酉、丙刑在子、丁刑在亥、戊刑在寅、己刑在卯、庚刑在午、辛刑在巳、壬刑在辰、癸刑在丑未。此竝以所勝爲刑也。

訓読校了

支の干を刑するは、甲の刑は申、乙は酉、丙は子、丁は亥、戊は寅、己は卯、庚は午、辛は巳、壬は辰、癸は丑未に在る。これ並びに勝つ所をもって刑とするなり。

現代語訳校了

逆に、各天干を刑する地支は、甲に申、乙に酉、丙に子、丁に亥、戊に寅、己に卯、庚に午、辛に巳、壬に辰、癸に丑・未を配する。いずれも相剋で勝つ側を刑とする。

GT-200187・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

凡卜筮所用遇刑非善然所求之事非刑不獲史蘇龜經云當成不成視兆相刑又問云六合是吉而巳申相剋者何

句読本文校了

凡卜筮所用、遇刑非善。然所求之事、非刑不獲。史蘇龜經云、當成不成、視兆相刑。又問云、六合是吉、而巳申相剋者何。

訓読校了

凡そ卜筮の用うる所、刑に遇うは善にあらず。然れども求むる所の事、刑にあらざれば獲ざることあり。史蘇の『亀経』に云う、まさに成るべくして成らざれば、兆の相刑するを視よ。また問うて云う、六合はこれ吉なるに、巳申相い剋するは何ぞ。

現代語訳校了

一般に卜筮で刑に遭うのは吉ではない。しかし、求める事柄の中には、刑でなければ得られないものもある。史蘇の『亀経』は「成るはずなのに成らないときは、兆が相刑しているかを見よ」という。さらに「六合は吉であるのに、巳と申が互いに剋するのはなぜか」と問う。

GT-200188・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

答曰金帶水生火中火爲金鬼水爲火鬼金共水生火中則是鬼母子身申是金位兼復懷水巳是火位復有生金還相讎故以爲刑也

句読本文校了

答曰、金帶水生火中、火爲金鬼、水爲火鬼。金共水生火中、則是鬼母子身。申是金位、兼復懷水。巳是火位、復有生金。還相讎、故以爲刑也。

訓読校了

答えて曰く、金は水を帯びて火中に生じ、火は金の鬼と為り、水は火の鬼と為る。金、水と共に火中に生ずれば、すなわちこれ鬼母子の身なり。申はこれ金位にして、兼ねてまた水を懐く。巳はこれ火位にして、また金を生ずることあり。還って相い讎する、故に刑とするなり。

現代語訳校了

答えはいう。金は水を帯びて火の中に生じる。火は金にとっての「鬼」であり、水は火にとっての「鬼」である。金が水とともに火の中に生じれば、鬼・母・子の関係が一身に重なる。申は金の位で、さらに水を内に含み、巳は火の位で、また金を生じる。このため互いに仇敵となり、刑とされる。

GT-200189・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

然刑有上下寅刑在巳者巳爲刑上寅爲刑下餘例悉爾故兵書云刑上風來坐者急起行者急住卽此謂也云三刑者如寅刑在巳巳刑在申寅日申時巳上起風或巳上見妖謂之三刑也

句読本文校了

然刑有上下。寅刑在巳者、巳爲刑上、寅爲刑下。餘例悉爾。故兵書云、刑上風來、坐者急起、行者急住、卽此謂也。云三刑者、如寅刑在巳、巳刑在申、寅日申時、巳上起風、或巳上見妖、謂之三刑也。

訓読校了

然れども刑に上下あり。寅の刑、巳に在るは、巳を刑上とし、寅を刑下とす。余例ことごとく然り。故に兵書に云う、刑上より風来れば、坐する者は急に起ち、行く者は急に住まれとは、すなわちこれをいうなり。三刑というは、寅の刑は巳に在り、巳の刑は申に在るがごとし。寅の日、申の時に巳上より風起こり、あるいは巳上に妖を見れば、これを三刑という。

現代語訳校了

しかし刑には上と下がある。寅の刑が巳にある場合、巳を「刑上」、寅を「刑下」とし、ほかもすべて同様である。そのため兵書は、刑上の方角から風が来たなら、座っている者は急いで立ち、歩いている者は急いで止まれ、と述べる。これはこのことをいう。「三刑」とは、寅の刑が巳にあり、巳の刑が申にある場合のように、寅の日・申の時に巳の方角から風が起こるか、巳の方角に怪異が現れることをいう。

GT-200190・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

他亦效此別有從氣爲刑與德相對者已從前解故不重釋

句読本文校了

他亦效此。別有從氣爲刑、與德相對者、已從前解、故不重釋。

訓読校了

他もまたこれに効う。別に気に従いて刑と為り、徳と相対するものあるも、すでに前解に従う、故に重ねて釈せず。

現代語訳校了

他の三刑も同じ方法で判断する。気の運行に従う刑や徳と対になる刑は前に説明したので、ここでは繰り返さない。

GT-200191・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

第十二論害相害者逆行相逢於十二辰兩兩相害名爲六害戌與酉亥與申子與未丑與午寅與巳卯與辰是六害也是殺傷之義

句読本文校了

第十二論害。相害者、逆行相逢於十二辰、兩兩相害、名爲六害。戌與酉、亥與申、子與未、丑與午、寅與巳、卯與辰、是六害也。是殺傷之義。

訓読校了

第十二、害を論ず。相害とは、逆行して十二辰に相い逢い、両両相い害するを、名づけて六害とす。戌と酉、亥と申、子と未、丑と午、寅と巳、卯と辰、これ六害なり。これ殺傷の義なり。

現代語訳校了

第十二は害を論じる。相害とは、十二支の上を逆行して出会うものが二つずつ互いに害し合う関係で、「六害」と名づける。戌と酉、亥と申、子と未、丑と午、寅と巳、卯と辰の六組である。害とは殺傷するという意味である。

GT-200192・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

今此六害或是君臣父子或是夫妻理不應害孝經云不愛其親而愛他人者謂之悖德既違其慈愛之性故有怒戮之理五行所惡其在破衝今之相害以與破衝合故父失其慈子違其孝妻不敬順夫弃和同竝合讎忿理成相害至如命待熊蹯飢探雀𪆪重耳外奔申生賜盡河內則夫婦相殘塞外則君臣殺奪此豈非害乎

句読本文校了

今此六害、或是君臣父子、或是夫妻、理不應害。孝經云、不愛其親而愛他人者、謂之悖德。既違其慈愛之性、故有怒戮之理。五行所惡、其在破衝。今之相害、以與破衝合、故父失其慈、子違其孝、妻不敬順、夫弃和同、竝合讎忿、理成相害。至如命待熊蹯、飢探雀𪆪、重耳外奔、申生賜盡、河內則夫婦相殘、塞外則君臣殺奪、此豈非害乎。

訓読校了

今この六害は、あるいは君臣父子、あるいは夫妻にして、理として害すべからず。『孝経』に云う、その親を愛せずして他人を愛する者、これを悖徳という。すでにその慈愛の性に違う、故に怒戮の理あり。五行の悪む所は破衝に在り。今の相害は破衝と合するをもって、父はその慈を失い、子はその孝に違い、妻は敬順せず、夫は和同を棄つ。並びに讎忿を合わせ、理として相害を成す。熊蹯を待ちて命つき、飢えて雀𪆪を探り、重耳は外奔し、申生は死を賜い、河内には則ち夫婦相ひ殘ひ、塞外には則ち君臣殺奪す。これ豈に害にあらずや。

現代語訳校了

この六害は君臣・父子または夫婦の関係であり、本来は互いに害すべきではない。『孝経』は、自分の親を愛さず他人を愛することを悖徳という。慈愛の本性に背けば、怒り殺す道理が生じる。五行が嫌うのは破と衝であり、この相害は破衝と結びつくため、父は慈愛を失い、子は孝に背き、妻は敬い従わず、夫は和合を捨て、憎しみと怒りが重なって害し合う。熊の掌を待って命を落とし、飢えて雀𪆪を探り、重耳は国外へ逃れ、申生は死を賜り、河内では夫婦が殺し合い、塞外では君臣が殺し奪うに至った。これが害でなくて何であろうか。

GT-200193・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

辰卯爲害者卯與戌合戌破於辰辰土爲卯木妻戌辰爲讎卯與戌合便是棄辰與酉合酉衝破卯辰爲卯妻酉爲卯讎辰與酉合酉能剋卯婦姧外夫殺本夫之象也

句読本文校了

辰卯爲害者、卯與戌合、戌破於辰。辰土爲卯木妻、戌辰爲讎。卯與戌合、便是棄辰。與酉合、酉衝破卯。辰爲卯妻、酉爲卯讎。辰與酉合、酉能剋卯。婦姧外夫、殺本夫之象也。

訓読校了

辰卯を害とするは、卯と戌と合し、戌は辰を破ればなり。辰土は卯木の妻と為り、戌辰は讎と為る。卯、戌と合するは、すなわち辰を棄つるなり。辰、酉と合すれば、酉は卯を衝破す。辰は卯の妻、酉は卯の讎なり。辰、酉と合し、酉よく卯に剋つ。婦、外夫に姧し、本夫を殺すの象なり。

現代語訳校了

辰と卯が害となるのは、卯が戌と合し、その戌が辰を破るからである。辰土は卯木の妻に当たり、戌と辰は仇敵なので、卯が戌と合うことは妻の辰を捨てることになる。反対に辰が酉と合うと、酉は卯を衝破する。辰は卯の妻、酉は卯の仇敵であり、辰が酉と合えば酉は卯に勝つ。これは、妻がよその男と密通し、その男が本来の夫を殺す象である。

GT-200194・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

巳與申合申衝於寅巳爲寅子申能剋寅巳與申合子有逆行丑午相害者丑與子合子衝破午午與未合未破於丑亦是父子相害義也

句読本文校了

巳與申合、申衝於寅。巳爲寅子、申能剋寅。巳與申合、子有逆行。丑午相害者、丑與子合、子衝破午。午與未合、未破於丑。亦是父子相害義也。

訓読校了

巳と申と合し、申は寅を衝く。巳は寅の子と為り、申よく寅に剋つ。巳、申と合するは、子に逆行あるなり。丑午相害とは、丑と子と合し、子は午を衝破す。午と未と合し、未は丑を破る。またこれ父子相害の義なり。

現代語訳校了

巳申の合では、子に当たる巳が父に当たる寅を剋す申と結ぶので逆行となる。丑午の害も、丑子の合が午を破り、午未の合が丑を破るため、父子が互いを害する関係とされる。

GT-200195・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

未子相害者未與午合午衝破子未土爲君子水爲臣午火爲子水之財君以財害臣之象也子與丑合丑破於未丑又是土子與丑合欲引外君共害其主此則臣有逃亡之象也

句読本文校了

未子相害者、未與午合、午衝破子。未土爲君、子水爲臣、午火爲子水之財、君以財害臣之象也。子與丑合、丑破於未。丑又是土、子與丑合、欲引外君、共害其主。此則臣有逃亡之象也。

訓読校了

未子相害とは、未と午と合し、午は子を衝破す。未土を君、子水を臣とし、午火は子水の財と為る。君、財をもって臣を害するの象なり。子と丑と合し、丑は未を破る。丑もまたこれ土なれば、子、丑と合し、外君を引きて共にその主を害せんと欲す。これは臣に逃亡あるの象なり。

現代語訳校了

未子の害では、君に見立てた未が財に当たる午を用いて臣の子を害する。一方、子は別の土である丑と結んで未を破るため、臣が外国の君主を引き入れて主君に背き、逃亡する象ともされる。

GT-200196・巻2
本文 校了
原文翻刻校了

申亥相害者亥與寅合寅衝於申申與巳合巳衝於亥亦是父子相害義也夫相生不必相生相害不必相害猶如火能燒物遂有炎洲之火而不能燒物水能潤長洪潦暴至亦使草樹芸黃

句読本文校了

申亥相害者、亥與寅合、寅衝於申。申與巳合、巳衝於亥。亦是父子相害義也。夫相生不必相生、相害不必相害。猶如火能燒物、遂有炎洲之火、而不能燒物。水能潤長、洪潦暴至、亦使草樹芸黃。

訓読校了

申亥相害とは、亥と寅と合し、寅は申を衝く。申と巳と合し、巳は亥を衝く。またこれ父子相害の義なり。夫れ相生も必ずしも相生せず、相害も必ずしも相害せず。火よく物を焼くも、炎洲の火ありて物を焼く能わざるがごとし。水よく潤し長ずるも、洪潦暴かに至れば、また草樹を芸黄ならしむ。

現代語訳校了

申と亥が害し合うのは、亥が寅と合し、その寅が申を衝き、申が巳と合し、その巳が亥を衝くためであり、これも父子が害し合う象である。しかし、相生する関係が必ず実際に生じ養うとは限らず、相害する関係が必ず実際に害するとも限らない。たとえば火は物を焼くが、炎州には物を焼かない火があり、水は潤して育てるが、洪水が急に来れば草木を枯れ黄ばませる。

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