大田命訓伝―天照・止由気
原文翻刻
上代本紀曰 天照坐皇大神則大日靈貴故彌日天子以虚 空為正躰焉故曰天照大神亦止由氣皇神則 月天子也故曰金剛神亦名天御中主神以水 徳利万品故亦名曰御饌都神惟諸神福田生 化壽命也汝等受天地之靈氣而種神明之先 胤誰撓其神心誰干慮耶
句読本文
上代本紀曰、天照坐皇大神、則大日靈貴。故彌日天子、以虚空為正躰焉。故曰天照大神。亦止由氣皇神、則月天子也。故曰金剛神、亦名天御中主神。以水徳利万品、故亦名曰御饌都神。惟諸神福田、生化壽命也。汝等受天地之靈氣、而種神明之先胤。誰撓其神心、誰干慮耶。
訓読
『上代本紀』に曰く、天照坐皇大神は、すなわち大日靈貴なり。故に彌[「號」の意か]、日天子と曰い、虚空をもって正体となす。故に天照大神と曰う。また止由氣皇神は、すなわち月天子なり。故に金剛神と曰い、また天御中主神と名づく。水徳をもって万品を利するが故に、また御饌都神と名づく。これ諸神の福田にして、生化・寿命なり。汝等は天地の霊気を受けて、神明の先胤を種す[訓未決]。誰かその神心を撓め、誰かその慮りを干さんや、と。
現代語訳
『上代本紀』は次のように説く。天照坐皇大神は大日靈貴である。続いて底本は「故彌日天子」と記す。「彌」は「號」に相当し、日天子と称する意とも考えられるが、確定しない。虚空を本体とするので天照大神という。また止由氣皇神は月天子であり、金剛神、天御中主神とも呼ばれる。水の徳によって万物を潤すため御饌都神とも称され、諸神にとって福を生む田であり、万物の生成と生命をもたらす存在である。人々は天地の霊気を受け、「神明の先胤を種す」とされる。この句は人々を神明の後裔とみる意とも考えられるが、「種」の構文は確定しない。誰がその神心を乱し、その思いを損なってよいだろうか、という。