土御門文書編纂所
分野説
天の星々の動きから、地上の国々の吉凶を察し、そこに現れる神々のお働きを知る。そのために、天の神々と地上の国々との結びつきを定めたものが、分野でございます。
日本の国土と分野
陰陽道には、日本の国々を十干と十二支に配した分野の説がございます。十干と十二支は、天地の神々のお働きを表し、年月日だけでなく、方位にも用いられます。ここでは、その配当を通して、日本の国土と天地との結びつきをご紹介いたします。
天地と国土
天を円く動くもの、地を方形で静まるものと観る「天円地方」の考え方がございます。前方後円墳の円と方の組合せにも、この天地の姿を読み取る説があります。[2]
また、日本の国土は游龍にも見立てられております。
東北を頭、西南を尾として、大海に身を置く游龍。その姿に日本の地勢を重ね、国土を天と地の理のうちに観るのでございます。
京都御所を基準として
下記の表は京都御所を基準に国々を配したものでございます。
たとえば十二支の子には若狭(わかさ)・越前(えちぜん)、午には河内(かわち)・和泉(いずみ)・大和(やまと)・紀伊(きい)が配されます。
日本の十干・十二支配当
日本の国々を十干と十二支に配すると、次のようになります。
十干の分野
| 干支 | 国 |
|---|---|
| 甲 | 近江・尾張・上野・下野・甲斐・信濃・常陸・陸奥 |
| 乙 | 上総・三河・遠江・駿河・伊豆・安房・武蔵・相模 |
| 丙 | 伊賀・大和・紀伊 |
| 丁 | 河内・和泉・淡路・阿波・讃岐・伊予・土佐 |
| 戊 | 但馬・因幡・伯耆・出雲・隠岐 |
| 己 | 伊勢・志摩 |
| 庚 | 摂津・播磨・備前・備中・備後・日向・大隅・薩摩・肥後・美作 |
| 辛 | 安藝・周防・長門・石見・筑前・筑後・豊前・豊後・肥前・壱岐・対馬 |
| 壬 | 丹波・丹後・若狭・越前・加賀・能登 |
| 癸 | 越中・飛騨・美濃・越後・佐渡・出羽 |
十二支の分野
| 干支 | 国 |
|---|---|
| 子 | 若狭・越前 |
| 丑 | 飛騨・加賀・能登・越中・越後・佐渡 |
| 寅 | 上野・下野・出羽・陸奥 |
| 卯 | 美濃・信濃・甲斐・相模・武蔵・常陸・上総・下総・安房・近江 |
| 辰 | 尾張・三河・遠江・駿河・伊豆 |
| 巳 | 伊賀・伊勢・志摩 |
| 午 | 河内・和泉・大和・紀伊 |
| 未 | 摂津・淡路・阿波・土佐 |
| 申 | 讃岐・伊予・肥後・日向・大隅・薩摩・筑後・肥前・豊前・豊後 |
| 酉 | 播磨・美作・備前・備中・備後・安藝・周防・長門・筑前 |
| 戌 | 伯耆・出雲・石見・隠岐・壱岐・対馬 |
| 亥 | 丹後・丹波・但馬・因幡 |
出雲の御神田
この分野の考え方に触れると、出雲大社の御神田にまつわる話が思い起こされます。
出雲にはかつて、大小さまざまな形をした御神田があり、それぞれを大和、山城、若狭などの国に見立てていたと伝えられております。田の広さは、その国の広さを表していたと申します。
同じ流れの水を引き、稲を育てましても、田ごとの実りは年によって異なります。その豊凶を観て、田に結びつけられた国の作柄を占ったのでございます。出雲大社『いづも暦』に掲載された「出雲大社と二十八宿」にも、この話が伝えられております。[1]
天の巡りを仰ぎ、田の稲の育ちを見守る。私どもは、日々の実りを神々の御恵みとしていただき、その御はたらきに感謝する心を大切にしております。
用語・出典
- 分野(ぶんや)
- 天の星の領域と、それに対応する地上の国・地域。
- 十干(じっかん)
- 甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十の符号。年月日や方位などを表します。
- 十二支(じゅうにし)
- 子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の十二の符号。年月日や時刻、方位などを表します。
- 天円地方(てんえんちほう)
- 天を円、地を方形として捉える考え方。
- 游龍(ゆうりゅう)
- 泳ぎ遊ぶ龍。このページでは、東北を頭、西南を尾とする日本の地勢の見立て。
- 二十八宿(にじゅうはっしゅく)
- 日月や惑星の位置を知る目印となる、二十八の星の区分。
- 御神田(ごしんでん)
- 神にお供えする稲などを育てる田。
出典
- 「出雲大社と二十八宿」。天社土御門神道本庁造暦部の旧記事。出雲大社『いづも暦』所収。出雲の御神田について、古老の伝承を記す。
- 劉振東『中日古代墳丘墓の比較研究』、立命館大学博士論文、2014年、184–185頁。前方後円墳の起源をめぐる諸説を参照。

