後陽成天皇 都状 (三年塞方犯祈願 )
天皇 周仁(御宸翰)
慶長六年正月晦日 辛丑 紀二二六一年
謹で啓す。天冑地府十二冥官五方五龍王 (青龍王、赤龍王、黄龍王、白龍王、黒龍王、東西南北中央 四神簇に祀神)土公将軍 五土府諸神、天社泰山府君十二冥道官閻羅天子 五道大神、泰山府君(天帝の孫、嶽霊の長、天地総摂壽命福縁の神) 天官 地官司命司禄本命神開路将軍 土地霊祇 家親文人 冥道諸神等 夫泰山は天帝の孫と為す。山霊長東岱に在り、 威験施す者也。抑も今度大将軍の方に(三年塞方) 事に犯る (大将軍三年塞り神本年この方を犯すに依り)其の大将軍は 太伯星西兌の方伯神 (西の金星神) 是也。其祟太軽からず因て茲に佛神加護の助けを為すに如かず(この神力を受 けることが最善の方法である) 其物恠殃厄災右諸神に奉じ天地陰陽五行 (水火木金土) 廿八宿星日月諸星祈神者は日本國王周仁(御宸翰) 恙無く軍命長久子孫繁栄殊者、押天文神道儒門兎札吉日良辰を撰び一七日之祭場を設け精誠抽じて十二座を備へ清銀銭白絹を供へ礼典を致し献ほ以て祈所者知ず魂魄飛颶身着ず(遊魂状態、心の安静も出来ず) 其精神三魂七魄五蔵六腑又本還(もとに帰らず五蔵六腑の人体) 變魄子帰来令無元に帰らしむことなく) 三十六衰七十二厄(災禍) 宇邪気死霊の祟厭魅 (モノノケ) 呪咀徴悉く以て遙に之を避け遠く以て之を退け年を延等 (壽命を數え延べる) 益々運命長久恙無凶を転じて吉と為し怨霊(死霊) 消滅悪魔降伏物恠祟成らず心中の諸願は 悉く成就圓満は神明の災鏡如し祈り奉る謹んで啓す。
慶長六年正月晦日