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暦想雑記

鬼門と桃の木

最近「鬼門」についての質問をよく受けるようになりま した。この「鬼門」というのは、古代中国から伝わった陰陽道の五行説による俗信の言葉で、北東の丑寅(良)の方角のことをいいます。また、時刻でいえば、午前2時から4時のあいだを指しており、この時刻は中国では魑魅魍魎といい、邪鬼や悪魔が出没し、人間や農作物に害をあたえる恐ろしい時刻としんじられてきました。

 

だから、丑寅の時刻は良くない時刻であり、同時に丑寅 (良)の方角も良くない方角だと考えるようになったのです。 そこで、この方角を「表鬼門」「正鬼門」、反対の南西未申(申)の方角を「裏鬼門」 「女鬼門」とも呼ぶようになりました。

 

しかし、普通一般に「鬼門」と呼ばれているのは、北東の 「表鬼門」のことで、この方角は鬼が出入りする門だと、昔の人は信じて万事に忌み嫌ってきたのです。特に、この方角への移転や造作、玄関、浴室、炊事場、便所などの設置は絶対に避けるべきだといわれています。

 

この「鬼門」という言葉は、中国の「山海経」という書物の中に、「度朔山にたいへん大きな桃の木があり、その枝が三千里以上もうねるように張っていたが、ちょうど北東にあたる辺りで枝が切れ、それが門のような形になっていた。そして、その門から多くの鬼たちが出入りをしていたので、この場所を「鬼門」と呼ぶようになった。ところが、この鬼たちが、いろいろと悪いことをするようになった。 そこで天帝は、神茶・樹品というふたりの神僕に、この「鬼門」の監視をさせ、中に入ってくる鬼を捕らえては、虎の餌にした。こうした故事から、後に黄帝は自分の居城の北東にあたる門に、桃の枝木を立て悪鬼から災いを防いだ。」という意味の物語が書かれているのです。

 

鬼と桃の木のいわれは古く、節分の豆撒きも始めは、「追な式・鬼遣い」といわれ、宮中で貴族たちが桃の木の弓らで鬼を追う行事でした。。 昔ばなしの「桃太郎」の鬼退治も、これと同類のもので、 鬼門に桃の木を植えたり、桃の木で神礼を調製するのも、こうした故事に由来しているのです。

 

俗信であるという事を前提に、鬼門に関わる災厄の一端を紹介してみます。

 

☆門・玄関が鬼門にあれば、病人が多い。
☆神棚・仏壇が鬼門に向くと、 病人が多く、滅入ってくる。
☆鬼門の神棚は家運が衰微する。
☆便所・流し・浴室があれば要注意。
☆鬼門方向のほこらは厳禁。井戸は要注意。
☆床の間を鬼門に向けると、病弱者ができる。
☆鬼門方向に八畳の間があれば、女権所帯となる。
☆鬼門方向に下水を流すのは、家運が衰微する。
☆鬼門の天窓は凶相となる。
☆鬼門に竹を植えれば吉相となる。
☆鬼門に大樹あれば要注意。
☆鬼門方向の車庫は要注意。
☆鬼門に隠居部屋のあるのは、親子不和合となる。
☆鬼門の台所は姑・嫁の不和が生じる。
☆鬼門の門は要注意。